030 丸
マルスとテレスが回復したことを聞き、十兵衛は久しぶりに城へ訪れた。。
ザロス王から事情を聞いていたマルスは早速宝物庫から三池典太を取りに行き、十兵衛に渡した。
「では、元々十兵衛様の所有の刀だったのですか!」マルスは不思議なこともあるものだ、と驚いた。
今日はマルスとテレスから、十兵衛が目指している至高についてご教授いただきたいと、授業形式になった。
「拙者自身、まだその域ではないが、こうではないかと思うことはある。至高とは【丸】でござる」
「丸、とは?」
「全てに当てはまることでござるが、人が上を目指すのに指標となるものがある。心技体でござる」
「心技体……」
「心が一番やっかいなので最後にするが、まず技というのは人が必死に考え、無駄を削って無くしていきたどり着くもの。なぜそう動くのか、その理を真に理解し研鑽する事で丸にすることができる」
続けて、「次に体。理想の動きをするために健康でなければならない。病気にならない身体作り、多少の攻撃をももろともしない肉体作り。敵を粉砕する筋肉作り、攻撃を躱す俊敏さ。目の良さ。気配を察知する嗅覚。それらを研鑽する事で丸にすることができる」
続けて、「最後に心だが、人には煩悩がある。これを無くすのは容易ではない。全て無くせる者はもはや人ではない。しかし、邪悪な心では、歪となる。正しい心を持つものだけが至高を目指せるのでござる」
続けて、「正しい心を持つには、優しい心、敬う心、助け合う心、赦す心、万物を愛する心、など沢山ある。これらをより多く持ち、実行する事で丸にすることができる」
続けて、「そして、心技体を三角の頂点に置く。心が体を動かし、体が技を作り、技が心を清める。これを全て研鑽、実行する事で三角が六角形となり、更なる多角形となり大きな丸となるのでござる」
続けて、「ただし、先ほども言ったが、人には無理なのだ。だが際限なく近づくことは出来る。お二人はそんな至高を目指すでござるのか?」
マルスとテレスは考えこんでいたが答えは出ない。十兵衛は、ニタリとして「歪はそんなに悪いことではないでござる。それが人だからだ。そして、それが個性となる。他人とは違う自分だけの丸にたどり着くのがよろしかろう。今日はこれまでといたす」




