289 アラクニダ
マルワンテレス国の東部に造られた港町は急発展で成長していた。船による輸入輸出が活発化、取引量の増加、それに伴う品目の多様化で大陸一の港町になった。
人も当然増えていき、人口密度も随一となっている。
いつものように巫女の衣装を着た雷狐がその中を歩く。
「この辺りも人だらけになってきたのお」通りはお祭りの時のように過密状態。これでは移動も難しいので雷狐は浮き上がる。
「手配書の者か」と声がする。
雷狐は素早く声の主を探したが見当たらない。
「ここだ」と、斜め上を見てみると糸で宙吊りに逆さまのスーツ姿の男がいた。
雷狐が警戒する。
「何者じゃ」
「オレはキメラノイドのアラクニダ。指名手配の強いやつを探している」
「そうか。我は雷狐じゃ。ならば見せてやるわ!超雷‥‥」雷狐が躊躇した!
二人とも浮いた状態だが、少し下は人でいっぱいだ!ここで雷を放てば仮に躱されると無関係な人に落ちてしまう!
雷狐は取り敢えず人気のない場所へ移動しようとその場を逃れる!
だが、逃れた先に見えない障害があり、向こうへ行けない!
ならばと方向転換しようとするも、先ほどの障害の粘着力のせいで動けなくなっている!
ぬかった‥‥
不利な状況で戦闘に入ってしまうとは‥‥
また土蛇に怒られてしまうのお‥‥
「蜘蛛の巣を張っておったのか‥‥」
「そうだ。意外と見えにくいものだろう。さて、捕まえてしまえば容易い。一思いにこれを突いてやろう」
アラクニダの腕が鋭利になる!
「雷光!」
アラクニダの目の前が光で見えなくなる!
「雷電!」
どこかに雷が落ちる!
アラクニダには落ちていない!
眩しさで視界が見えないながらも雷狐を探す!
「ちいっ!どこへ行った!」
やがて目が慣れて周りが見えてくる。
蜘蛛の巣が破損していて、そこには雷狐は居なかった。
「雷電を自分に当てたってことか‥‥」
アラクニダは、上から狙えばまた誰かに会うだろう、とその場を離れて行った。




