254 空腹分け
ルイは十字固めを手解きその場に倒れた。
折らせなかった典韋も右腕を擦りすぐには動けない。
典韋が右腕をブンブン振り回す。
ルイが上体を起こして立ち上がる。
「待っていたのか。余裕だな」ルイが言う。
「某にもダメージはある。余裕はそれほどない」
「ならばいくぞ!」
ルイがフェイントを混ぜながらジャブにストレートを放つ。
典韋は躱し、いなす。
ルイが左のローキックを入れる!
典韋が足でブロックした刹那!
ルイがゆびを出してストレートを打つ!
目潰し狙いだ!
典韋が咄嗟に目を閉じる!
目を開けるとルイの右足が天高く上がっている!
典韋の脳天に踵を振り下ろす!
激震の踵落としが極る!
「ごふっ!」
ルイが典韋の背後に回り両手を広げる!
両手を典韋の腰でクラッチする!
ルイが両足を地面に踏み込む!
典韋の巨体が浮き上がる!
ルイが後方へ倒れ、弧を描く!
典韋が脳天から地面に墜落する!
爆撃のジャーマンスープレックスが極る!
強烈な連続攻撃!
典韋は立ち上がる!
「しぶといな‥‥」
ルイが苦笑いする。典韋は頭を押さえながら溜め息を吐く。
「お主が言うな。聞くのを忘れていたが、大陸十一虎将に何か用か」
「言ってなかったか‥‥しかし今ごろ聞くのか‥‥俺たちはブリッタ十騎。ブリッタ国で十本の指に入る強者というわけだ。大陸十一虎将というものがいるなら戦いたい。しかも賞金首なら稼ぎたい。というわけだ」
「それで。まだやれるのか」
「いや、腹が減った。後日またやらないか」
「ふん。いいだろう。どうせなら今日のように偶然出会ったら勝負の続きにするのはどうだ」
「わかった」
典韋とルイはお互いに自分の武器を拾い、別々の道を戻っていく。
見えなくなって典韋が深く息を吐く。
正直きつい相手だった‥‥
右肩、右腕、頭部にかなりダメージを受けた‥‥
あれ以上続けたら‥‥
勿論やつもダメージがあるはずだが‥‥
面白い相手だったな‥‥
ルイも深く息を吐く。
いるのだな、化け物が‥‥
ウエスタンラリアット‥‥
ブレーンバスター‥‥
パワーボム‥‥
戦場格闘とは違う技だった‥‥
俺も咄嗟に投げ技をしたがつかえそうだな‥‥
面白い‥‥
二人ともそう思いながら、もう逢いたくないとも思っているのであった。




