244 蟷螂拳
仰向けに倒されたミケーレの顔面目掛けて黄忠の大きい足が踏みつける!
ミケーレが間一髪躱す!
「近接も強いな……なあ、今のはなんだ。体術みたいなもんか」
黄忠は右足を前に中腰になり、両腕を前に揺らしながら答える。
「蟷螂拳……カマキリですよ。ふふふ、貴方に虫が殺せますかな」
「やってやろうじゃねえか……」
ミケーレは片手剣しかない!
黄忠の腕が届かないギリギリのラインがミケーレの戦場になる!
しかし、いざその間合いに来ると、軽く曲げていた黄忠の腕が伸びる!
剣を掴まれ、黄忠の蹴りが腹に入る!
やはり一筋縄ではいかない!
蟷螂拳の腕は軽く曲げられた上に揺れている!
これが実際の間合いの感覚を狂わせている!
さらに黄忠自身の身体も大きく腕も長い!
そのカマキリに掴まれば、もはや逃げることは出来ない!
間合いが掴めねえ……
さらに離れて戦うとなると剣が届かない……
むしろ懐に踏み込むか……
厄介なカマキリだぜ……
「来ないなら私が行きましょう!」
黄忠が動いた!
ミケーレはまだ準備が出来ていない!
咄嗟に片手剣で応戦するが、軽く黄忠の篭手に弾かれる!
空いた胸板に黄忠の拳が撃ち抜く!
ミケーレは一直線に弾き飛ばされた!
黄忠が追い討ちを掛けて迫ってくる!
ミケーレはこれ以上ダメージを負うと危ない!
隠しておきたかった奥の手を出す!
黄忠が目の前に迫る!
ミケーレが片手剣を突きだし、飛刀を飛ばした!
黄忠はまさかの飛び道具に反応出来ず、胸板に飛刀を喰らってしまった!
ミケーレが黄忠に片手剣を向ける!
「こいつはまだ見せたくなかったんだが、仕方ねえ。俺の飛刀は仕留めるまで飛び続ける!」
片手剣から十本の飛刀が生まれる!
一本一本が自我を持つかのように黄忠に襲い掛かる!
黄忠は一転、防戦となり飛刀を受け流していく!
だが、飛刀はそのまま飛び続けて黄忠の身体を狙う!
黄忠は蟷螂拳の円の動きで飛刀を払うが、気づけば大腿部にまた一本突き刺さっている!
全て刺さるまでこの飛刀が襲って来るという恐怖に黄忠も遂に額から冷や汗を流す!




