222 共存を目指す
城の中の同じ魔族でも、しかも悪魔の中にも戦いたくない者たちがいるようだ。
「とはいえ、魔族と人間の間には二千年以上の昔から争ってきた歴史がある。お互い信用するのは難しいだろうが、我々が目指すのは人間との共存である」とフルフ-ル伯爵が言った。
「共存!?……厳しいでござるな……」十兵衛が呟く。
「確かに。我々がこの地に城を建てたのも、魔王との住み分けをしたいがためなのだが、魔王軍からの圧力もあり、人間からも襲われるので歪な城となっている次第だ」
「三階以下の魔族とは何かしら契約があるのでござるのか」
「契約はないが、結界がある。ゆくゆくは三階、さらに二階、一階と我々の世界を広げてゆき、城全体を非戦闘の魔族の世界にしてゆきたい」と、フルフ-ルが言うと、十兵衛が「ならば、早急に結界を広げるべきだ。今しがた我がパーティは一階から三階まで魔族を殲滅してここまで来た。だが、他の冒険者パーティもいるため、その退出もしなければならない」と言った。
「なるほど!では、済まないが十兵衛でしたな。手伝ってもらえるだろうか」
「承知した。皆は大丈夫でござるか」
十兵衛が聞いたが、まずは張りに行こうという事になった。
十兵衛パーティとフルフ-ル伯爵は街の中の冷たい視線を浴びる。
フルフ-ル伯爵が街の魔族たちの前に出る。
「仔細は後程説明するが、これより可能ならば一階まで結界を広げることとなった!この者たちは既に三階までの魔物を殲滅しているが、人間の他のパーティへの退出のため協力してもらう同志だ!決してこの者たちに反抗、反発はせぬように皆も協力してもらいたい!」
フルフ-ルはそう言うと、結界部隊を引き連れ、三階へ走り出した!
街の人々は半信半疑の目で見ている。
本来ならじっくり話し合い、双方納得した上で事を進めるべきなのだが、人間への理解も早く進めていきたい。
三階には冒険者はいないようだ。
フルフ-ルの指揮で、結界部隊に魔物が入れない結界を張るように指示を出す。
十兵衛は念のため二階に繋がる階段に土蛇を見張らせると、残りの者は二階へ走り出した。
冒険者がちらほらいるようだ。魔物はいない。
十兵衛が先行して一階へ向かう。
弁慶とランスロットが二階にいる冒険者たちに結界を張るために城から出るように説明する。
フルフ-ルはここにも部隊を配置して、冒険者の退出次第で開始するように指示をする。
冒険者たちは城から全て退出され、結界も無事に張ることが出来た。




