208 忍
才蔵が突然物凄い勢いで水を吐き出した!
まだ水は全身に纏わりついている中、消防の放水のように体内の水を吐き出す!
このままでは体外の水も全て戻されてしまう!
「氷遁の術!」
ダンゾウが冷気を放つ!
才蔵は凍りつく足元を抵抗して髪の毛を伸ばして壊しにかかるが、それを勝るスピードで才蔵は凍りついてゆく!
腰も胴も頭部も凍りつき、口が最後となった時、才蔵が呟いた!
「雷遁の術!」
才蔵が自分に雷を落とす!
氷を破壊するためとはいえ、ダメージもかなりある!
「がはっ!ごはっ!」
才蔵の氷は外だけではなく、喉、口や鼻の中、そして目も氷ついていた!
そこへ自らの雷遁!
無謀な脱出だが生きるには仕方ない選択であった!
恐らく目を雷遁でやられて何も見えていないと、ダンゾウが死角から刀を才蔵に振り下ろす!
才蔵が反応して刀を合わせて防ぐ!
「なに!」
さらに正確に、ダンゾウを火遁で襲う!
ダンゾウは至近距離だったが何とか間合いを開けて躱した!
「見えるのか……」
「ククク……毒にも慣れ、熱さにも慣れ、ならば雷にも慣れる。それが忍だろう……」
才蔵がニヤリと口の端を吊り上げる。
ダンゾウは戦慄く!
いくら忍者でもそれはない……
確かに某も毒なら耐性はあるが、雷だ……
しかも目など鍛えようがない……
見えているはずがない!……
そう思いながらも煙幕弾を床に放つ!
炸裂音が耳に残るうちに才蔵の首に糸を巻きつかせる!
さらに手首足首も瞬時に縛る!
「千条縛!」
「甘いわダンゾウ!まだ、髪が残っておるわ!」
才蔵の髪が無数の針の如くダンゾウを襲う!
ダンゾウが印を結ぶ!
「火遁の術!」
襲いかかる髪を火炎が燃やしていく!
火炎が瞬く間に頭部に達する!
「ぬぅがあっ!」
俄に全身に燃え広がる!
火炎は業火となり才蔵を燃やしつくしていく!
その間もダンゾウは油断なく刀を構え、才蔵を凝視している!
空蝉で逃れた気配はない。
灰と化した才蔵が床に伏して煙を出している。
ダンゾウが不意に刀を後ろへ向けた!
勿論そこには誰もいない。
下か!上か!
「ダンゾウ!もう大丈夫じゃ!おまんの勝ちじゃき!」
以蔵に言われてダンゾウも漸く緊張を解く。
「相手がもう死んどるのに、あれほど本当に死んどるのか信じられんとはのお……」
「それが……忍なんだ……」




