202 義経の行方
ランスロットのアロンダイトが自分の首に掛かろうとしている!
弁慶が容赦なくのし掛かる!
ランスロットの上半身は微動も動かず粘っているが、足は逃れようと必死にジタバタを繰り返す!
「ランスロット、死が目の前に来ておる。降参しても良いのだぞ」
弁慶が挑発する。
「き、貴様!……」
その時、ランスロットの暴れていた足が弁慶の脛を強打した!
「ぐむっ!……」
あまりの痛さに薙刀の重みが緩む!
ランスロットが、その僅かな隙に逃れることが出来た!
だが、すぐに立てないほどの疲労で立ち上がれない!
さらに、握力も限界に近くアロンダイトを持てなくなってしまった!
さすがにランスロットの前に十兵衛が出る。
「弁慶殿、拙者が代わってお相手いたす。よろしいか」
ランスロットは納得しなかったが、ジャネットがランスロットの手を持ち、「見な!こんなに手が震えてちゃ無理だよ!あとは十兵衛に任せな」
と言われて悔しい表情を見せて任せる事にした。
「弁慶殿、疲れが取れたら始めたいと思う」
と十兵衛が提案した。
弁慶は、ふむ、と胡座をかいて休みだした。
「お言葉に甘えよう。お主は対等の勝負が望みなのだな。ここは悪魔の城だというのに真面目な御仁だ」
「少し話したい事もあったのでな。そなたの愛用の薙刀はそれではあるまい」
「何故それを」
「岩融は縁あって拙者が所有しておる」
「なに!」
十兵衛が土蛇を招いた。
「お前は、蛇ではないか!」
「弁慶様お久しぶりでございます」
土蛇が懐かしむように弁慶の元に歩みより、その大きな身体に抱きついた。
「ああ……奥州平泉以来でございます……」
「わしは義経様を逃がす事だけに必死であった。そして、無数の矢をこの身に受けているうちにわしは死んでしまった」
「はい……」
「義経様は無事、逃げられたのだろうか……それが気がかりなのだ」
土蛇が弁慶から離れて正座をして話す。
「正直あの後、義経様の行方を見ておりませんのですが、後世には義経様にまつわるものが発見されております」
「なに!是非教えてくれ」
「あの後、義経様は陸奥の東にあります宮古に移動した跡がございます。寺や神社を中心に北上され、岩泉、田野畑、普代村など従者と渡っております」
土蛇が続ける。
「さらに久慈、八戸と北上され、さらには蝦夷地に足を延ばされ、遂には西の大陸に渡ったという伝説がございます」
弁慶は腕を組みながら、深い溜め息をついた。
「土蛇。報告、大義である」
と土蛇の頭を優しく撫でるのであった。




