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002 スローライフ

 「そうか。ならば、なまくらだが日本刀を持っていくといい」

 「ありがたい。それと別に木刀を作りたい。斧やノミなどを借りたい」

 「ああ、もちろん、色々使って構わない。オレはこれから武器を納品するために町へ行く。戻るのは夕方になるだろう」

 「承知した。拙者は戌の刻頃に戻るつもり…」

 だが、アステルは戌の刻がわからない。十兵衛はそれを察し、「まあ、アステル殿が戻られて、しばらくしたら戻るでござる」と、言って出掛けてしまった。

 アステルは武器をリヤカーに載せながら、転生してこの世界に来たばかりなのに、十兵衛さんはどこへ行く気なのだろう、と思ったが、彼の事だから意外と大丈夫なのではないか、とも思ったのだった。


 


 黄昏時、アステルが町から工房に戻ると、どうやら十兵衛は先に帰っていたようだ。

 「やあ、アステル殿、厨房を拝借してござる。今宵は拙者が馳走いたすぞ!」

 十兵衛は工房を出ると、川を見つけ、木を選別。慣れた感じで竿を作った。糸は針とともに懐に入れており、これを器用に釣り針に作り替えた。餌のミミズはそこらじゅうにいそうなので現地調達である。

 獲物が掛かるまでは別に調達した木材で木刀を作っていたそうだ。

 魚を入れるためのビク篭は運良く川近くに落ちていた。

 朝、アステルから食事を戴いて、望み通りの調味料があることも十兵衛は見抜いていた。

 「そこで釣り上げたのが、うなぎでござる」

 アステルはうなぎの存在は知っていたが、見た目が蛇のようで気持ち悪い、と、この世界では誰も川へ戻してしまうらしい。

 「それは勿体無い勿体無い」

 うなぎを焼く場所も、工房の素材で作ったようだ。

 うなぎに串を通し、十兵衛秘伝のタレをかけ焼き始めると、なんとも香ばしい匂いが。

 これにはアステルも、「なるほど、うまそうな匂いだ」と、酒を用意しだした。

 「さあさあ出来たぞ。柳生流蒲焼きでござる」

 早速アステルは、一口大に分けられた蒲焼きを口へ運んだ。

 「なんだこれは!」

 衝撃だった。自分でも料理好きで沢山作ってきたのだが、生涯食べてきたもので一番なのは間違いない。

 表面はザクッとした噛みごたえで、中は柔らか。肉厚な上にタレがまた素晴らしい。

 「これは酒がすすむなあ」

 十兵衛は、そうだろうそうだろうと思いながら、「こちらではこの味を誰も知らぬのか?」と聞いた。

 アステルが食べながら頷くと、十兵衛はニタリとして、「蒲焼き屋でもやるでござるか」と酒を呑んだ。

 「いけるかもしれんな。そうだ。これから町にも行くことがあるだろうし、冒険者ギルドに登録するといい。しないと、町に入るのに通行料もかかるしな。あと、ホントに蒲焼き屋をやるなら、商業ギルドにも登録だなあ」

 「承知した。明日早速行くとしよう」

 

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