019 十兵衛の指南
テレスも交え、食事を終えると十兵衛が「せっかくお会いしたのだ。テレス殿下、少し腕を見てみたい」と、テレスを庭に誘った。
サエは十兵衛に抱き抱えられ、テレスがそのあとを歩く。さらにザロス王も指南する様子を是非見たいとついてきている。
「得意な得物を持って、拙者に全力で来てくだされ!」
サエは少し離れてザロス王と一緒に見ることにした。
テレスは片手剣を手にした。敬礼し、「お願いします!」と、十兵衛に立ち向かった!
綺麗な三連擊!だが、十兵衛は木刀で軽く捌いて掌底でテレスを弾いた!
テレスは胸を押さえながらも突いてきた!
十兵衛は左にいなしたが、突きは軌道を変え、十兵衛の喉を狙う!
これを木刀で払いながら、刀を回して小手返しが決まった!
テレスは激痛で剣を持てない!「参りました!」
と、降参してしまったのだった。
「テレス殿下、色々と課題が必須とみえる。まず、体力が無いですな。戦はこんなに短くはない。敵は何千何万といるのでござる。いくら戦っても戦える体力を持ちなされ」
さらに、「技が教科書通りにござる。大切なことではありますが、戦は変化するものでござる。片手剣を扱うのであれば、片手剣の動きをもっと知らねばなりませぬ」
さらに、「根性も無いですな。一度やられたくらいで降参するものではない。王族ならばしぶとさを持ちなされ。他の者なら替えはききますが、王はやられたら終わりなのです。必死に生き残ろうとしなされ。卑怯ではあっても死んだふりも手でござる」
さらに、「心が弱いですな。常に誰かを守る気持ちを持たれよ。自分一人なら負けて済むことも、誰か大切な人の命を思えば、人は立ち上がれるのでござる」
まだ言い足らないようであったが、十兵衛はテレスに宿題として毎日暇があれば走り込むように命じた。
「まずは体力をつけていただく。ただ走るだけではない。走りながら片手剣の可能性を考えよ。そして、大切なものは何かを深く考えよ」
十兵衛は、また十日後に参る。と告げ、サエとともに王城を後にした。




