177 そのあと
洞窟を抜け、雷狐が再び天狐となり、五人を乗せて空中を駆ける。
三ヶ国を飛び越え、ザロス王国が見えてきた。
「天狐、あの辺りに降りよう」
王国近くの平原に降りる。
「街まで行かんのか」
華雄が聞いた。
「我を聖獣と知らぬものも多いのじゃ。魔物と思われて襲われかねん」
と言い、雷狐に戻った。
王国城下町に入り、典韋と華雄に屋敷へと誘ったが、基本好敵手であるためだと断ってきた。
「一緒に住めば情がわいてしまうからな」
二人はそのまま宿を探しに行ってしまった。
後日。
典韋はザロス城へ赴き、改めて表彰を受けた。大陸十一虎将の一人となり、銅像も建立予定となった。
屋敷に久しぶりに戻った十兵衛たちはそれぞれの日常に戻ることとなった。
十兵衛は城へ報告、並びに王子二人に指南し終えると釣りに出かけてウナギを持って帰り、屋敷の皆に蒲焼きを振る舞った。
ジュリーは見た目のせいか子供たちの遊び相手にされていた。
ダンゾウは遊び道具に積み木を作ったり、携帯食料を作って保存したりしていた。
また、山菜や動物などの図鑑を買ったり絵本も大量に揃え、教育素材も充実してきた。
ある日、マイがみんなに渡したいと一人一人に手紙を手渡した。
文章は短いものの、覚えたての文字を一生懸命書いたと伝わるものだった。
特に以蔵は泣きながら喜んでいる。
「わたしたちをつれてきてくれて、ありがとう。いちばんだいすき……これをマイが書いた……マイが……」
「マイちゃん、みんな喜んでいるみたいね。頑張って良かったわね」ライカが言う。
「うん!」とマイも満足して喜ぶ。
「ジュリー!ダンゾウ!見てくれ!わしを一番大好きと書いちゅうぜよ!」
以蔵が手紙を見せながら泣いている。
「十兵衛、ライカ!クレイアも見てくれ!ほれ、ここに!マイがわしのために一生懸命書いたんぜよ」
以蔵はさらに見せてまわる。
「ランスロット!アステル!見てくれ!あのマイがわしのために……くっ!」
以蔵はその日から手紙を宝物として、肌身離さず持ち歩くようになった。




