153 典韋 対 ポール 1
蓄えられた顎髭が目立つ。
太い上腕、分厚い胸板。
暗黒騎士デュランの産み出した強敵ダークナイトを単独で二体葬った豪傑、典韋も大会に参加していた。
誰も持ち上げられなかった牙門の旗を片手で持ち上げた怪力!
数十の傷を受けても敵に向かっていく豪胆さ!
その典韋と出会ってしまった者がいる。
「某は典韋。覚悟はよろしいか」
「オレはポールだ。見た目通り強そうだな」
ポールと名乗る男はブロンドのアフロヘア。キザな普段着をしている。
格闘家というより、ケンカ自慢の不良といった雰囲気だ。
「オレだって一人倒して生き残ってんだ。ひょっとするかもよ」
ポールが半身に立ち、軽くステップを始めた。
「いいだろう!」
典韋が動く!
間合いが一気に詰まる!
巨漢の典韋のダッシュ!まるで相撲の立ち会い直後の瞬発力に酷似する!
典韋のもつ圧力!
ポールの身体がビリっと伝わる!
圧力の中から豪腕が現れる!
喰らえば地獄必死のデスストレートを撃つ!
ポールは身軽に跳躍、典韋のストレートに左手を添え、右の壁を蹴る勢いで反転!
典韋に延髄斬りを見舞う!
延髄斬り……
代表的な使い手はアントニオ猪木である。
あの異種格闘技戦、モハメド・アリ戦で使用しようと考案された技だという。
公開スパーリングで猪木がこの技を練習しているのを見たモハメド・アリがルール変更を強要し、延髄斬りを禁じることになった。
「ぬぅ!」
典韋が後頭部を押さえ、前につんのめる。
ポールが助走をつけ、壁を蹴り、典韋の上に浮き上がる!
後頭部!首!腕!と上空から踏みつける!
豪傑と言えど、上からの攻撃は防ぐ事が出来ない!
「おらおらおらおらおらおらあっ!」
踏みつける程に典韋の身体が沈みゆく!
「おらおらおらおらおらおらおらおらおらおらあ!」
典韋が、遂にうつ伏せに倒れこむ!
それでも止めずに踏みつける、踏みつける!
典韋が強引に横に転がって逃れる!
典韋は片膝をつき、立ち上がろうとしている。
ポールが詰める!
典韋の膝に足を乗せる!
もう片方の膝で典韋の顎を撃つ!
アッパーシャイニングウィザード!
あの典韋が一方的にやられている!
空中戦が主体のポール!
だが、典韋の目はまだ死んでいない!




