148 十兵衛、部屋で待つ
この場に聞こえるくらいの10カウントが流れる。
サントスはピクリとも動かない。ダンゾウは先ほどの廊下を見る。誰もいない……
あの豪傑は強い!……
強者を落とす方法は三時間対戦を避ける事だ……
まあ、そう上手くはいかないだろうが……
10カウントが入った!
ダンゾウは三時間以内に対戦する条件をクリアした。このあとは、時間がリセットされる。改めて三時間以内に対戦しないと失格となる。
残り時間はどういう仕掛けか、壁に表示されており、残り人数も同じく示されている。
ダンゾウは先ほどの豪傑と会わないようにルートを進む。
柳生十兵衛は運良く部屋に転送されていた。
いきなり部屋という事もあるのでござるか……
ならば、誰かの侵入を待つのが普通だろうが、廊下と違い、誰が来るかが全く読めない……
ドアは部屋の角に一つだけ、だが……
さらに、部屋での勝者は食事が与えられるわけだが、その分、強者が狙ってくる可能性もある……
また、それを恐れて部屋の戦闘を避けられ三時間経ってしまう事も……
迷宮の規模はわからぬが、85人が少し歩けば対戦出来るほどの大きさ……
部屋もいくつかあるという……
十兵衛は急に楽観的になり、そのうち誰か来るだろう、と気長に待つことにした。
足音が近づく。
十兵衛もそれに気づき、聞き耳をたてる。
ズシンズシンと響いている!
こちらに向かっている!
十兵衛はこのままこの者と戦うのは無事では済まないと予想する!
ドアが開く!
男が中に入り、周囲を見渡すが誰もいない。
ドアが閉まる!男が振り返るがやはり誰もいなかった!
「ふむ。気配がしたと思ったが……」
男はダンゾウが見た豪傑だった!
十兵衛は男が入る直前に、部屋の角を利用してドアの上にへばりついた。
男が部屋の中に入っていくのと入れ違いに音を消して着地。素早く廊下の曲がり角へ身を隠した!
十兵衛は戦慄を覚えた!
あれは呂智深、典韋クラスの豪傑だ!……
三池典太があればわからぬが、体術勝負はどう転ぶのか……
出来るなら最後まで当たりたくないものでござるな……
珍しく弱気な十兵衛の残り時間は二時間を切る。
現在の生き残りは78名。




