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130 以蔵の怒り

 宿を決めると、ライカに一室、ダンゾウ、以蔵、ジュリーが一室で一週間泊まる事にした。

 ライカは風呂へ、ダンゾウとジュリーが酒を嗜む。以蔵は一人、街を散歩に出た。

 既に夜も遅い。街を流れる川に沿いながら歩いていると、ある民家から子供の激しく泣く声が聞こえた。

 以蔵は何事かと窓から様子を伺う。

 ヒュームの家族らしい。小さい弟たちを庇うように少し上らしい女の子が親から暴力を受けている!

 

 以蔵は怒りに任せて踏み込んだ!

 「いきなりで御免ぜよ!じゃが、こげな幼い子供を殴る蹴るとはどういうわけぜよ!」

 父親が以蔵に振り返り、睨む。「躾に決まってるだろう。子供が悪いことをしたら親が躾をするだろ」

 上の女の子に殴られた痣がある。よく見ると、下の男の子たちも痣があった。

 「おまん、こりゃあ躾じゃないぜよ。一目見て、おまんが外道じゃとわかる!おまん、子供が可愛くないんか!」

 「関係ねえだろ!他人の家族のことに入ってくんじゃねえ!」と以蔵を突飛ばした!

 

 「もう許さんぜよ!」以蔵が男を殴り飛ばした!

 男は呆気なく気絶した。

 「痛かったじゃろ、もう大丈夫ぜよ」以蔵が女の子に言うが女の子は以蔵のことも怖がっている。

 「こういう時、どうすりゃええんかのお。わしは以蔵じゃ、岡田以蔵じゃ。父ちゃんを殴ったのはすまんき。じゃが、これは父ちゃんが悪い。子供を愛しちょったら絶対殴ったりせんぜよ」

 以蔵が、何とかわかってもらおうと考える。

 「弟たちも父ちゃんが叩いたんか」女の子が頷いた。「毎日叩くんか」女の子は頷き、泣き出した。

 

 以蔵は困ったが、こんな時どうしたら、と必死に考える。

 気がつけば以蔵は女の子を優しく抱き締めていた。「大丈夫じゃ、わしが守ってやるぜよ」

 女の子が泣き止み、少し落ち着いてきた。

 「どうする、こんな父ちゃんでも一緒にまだ暮らしたいか。それとも逃げたいか」以蔵が笑顔を作りながら優しく言った。

 「逃げたい……」女の子が小さく呟く。

 女の子が父親が起き出すのに気づく!

 以蔵は察知して女の子を離した。「逃げたいんじゃな!もう一度、逃げたいってでっかい声で言うがじゃ!」

 「逃げたい……逃げたい!」震える声を振り絞って言った。

 「わかったぜよ!」以蔵が男に馬乗りになり、殴る!「この子たちにした痛みがおまんにわかるか!小さな子ぉは、揺らしただけでも死ぬことがあるんぜよ!少し放ったらかしても死ぬんぜよ!」以蔵の目に涙が溢れる!「躾のつもりで殴るようなやつは親失格じゃあ!」

 父親が再び気絶したのを見て、二人の弟たちを懐に抱き、女の子とともに民家を出た。







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