012 十兵衛、強盗に遭う
「恐らく拙者に用があるのでござろう。アステル殿は工房に戻られよ」
「わかった」
十兵衛はゲリラ蒲焼きの時に国中を散策しており、人気の多い場所、人気のない場所を把握していた。
十兵衛は少し広いが普段から人気のない空き地に誘導して振り向くと、4人の怪しい獣人族が現れた。
虎人族らしい。力が強く、冒険者でも重宝される種族だが、この者達はどうやら違うらしい。
「お前、蒲焼き屋だろう。調べはついている」
「いかにも。拙者は蒲焼き屋だ。お前達も食べたかったのか?」
「ふざけるな!騎士団の調べでは、蒲焼き一人前に金貨1枚とぼったくりをした、という被害届けが来ている!」
「食べた客達は皆、満足して金貨を出していたでござる。それに高ければ食べなければよいはずだ」
「うるさい!大人しく不当に得た金貨を差し出せ!」
「なるほど。いちゃもん強盗でござったか。これがその金貨でござる」
と、巾着袋を懐から出して見せた。
虎人族のリーダーらしき男が「それをこちらに投げろ」と指示した。
十兵衛は言う通りに袋を相手近くに投げた。と、同時に両端の二人の目を狙って石つぶてを投げ、全力ダッシュ!
袋を取ろうと前屈みになった男の後頭部を正面から掴み、その顔面に跳び膝蹴り一閃!
十兵衛は再び袋を懐に戻し、リーダーらしき男に詰めよった。
と、そこへ!
「ちょっと待ったあ!」と、新たな男が走ってきた!
その隙に虎人族のリーダーは逃げてしまった。
他の三人はダメージが深刻なのか、その場でうずくまっている。
十兵衛は後からきた男に「おぬしは何者でござる」
騎士の鎧を着ている。「私は正義の騎士、ロビンです。お怪我はないようですね。というか、一方的に撃退していましたね!」と、笑いだした。
そして、駆けつけた仲間の騎士団に三人の虎人族を連行するように命令した。
ロビンはヒューム族で、20代後半くらいだろうか。栗毛で尖った髪型。
「お察しの通り、私は騎士団に所属している。巡回隊長をしておりまして、先ほどのような輩を捕まえたり、何か異常がないか、怪しい者がいないか確認しているのです」
「一つ伺いたい。先ほど連行された虎人族が、騎士団の調べで、拙者に言いがかりをしてきたのだが、関係はないのでござるな?」
ロビンはそれを聞いて、少し困った表情を見せた。




