011 サエの思い
ある日、クレイアとサエは工房近くの森に入り、山菜採りに出掛けた。
アステルと十兵衛は、ザロス王国の城下町へ防具を卸しに行っているという。
クレイアとサエは、歳が近そうに見える。クレイアは127歳だが、13歳くらいの見た目なので5歳のサエにとっては話しかけやすい存在になっていた。
「クレイアお姉ちゃん、冒険者って怖い?」
「怖いこともあるわよ、自分たちより強そうな魔物といきなり戦うこともあるからね。でも、どうして?」
「サエもね、おっきくなったら冒険者になれるかな、って思ったの」
クレイアは思わず過剰に反応して、「駄目だよ!」と強く言ってしまった。
サエはびっくりして、「だめ、かあ……」と、黙り込んでしまった。
クレイアは頭ごなしに言ったことに少し反省して「いや、その、おっきくなったら、だもんね。……今すぐやるもんだと思って、……つい大声出しちゃって、その、ごめんなさい」
「うん、おっきくなったら、なの。今はね、ちっちゃくて弱いのはわかってるの」サエは話しながら声を大きくなっていく。「だからね、冒険者になれるようにね、強くなりたいしね、そのためのお勉強もね、やりたいの」
それでも不安なクレイアは「他のお仕事じゃだめなの?」と聞いてみた。
サエは、「サエはね、お父さんとお母さんを目の前で殺されちゃったのね。サエはね、アステルおじさんや十兵衛お兄ちゃんやクレイアお姉ちゃんのおかげで寂しくは無くなったのね」クレイアの目を見ながら続けて「この先、サエみたいな子供が一人ぼっちになる子が出てきたら悲しいと思うのね。サエはね、そうならないようにお手伝いしたいの」
クレイアはサエをもう一度見直した。
こんなに幼いのに、自分が今後どう生きたいのかをよく考えている。
そして、自分が受けた不幸を周りに広げてはいけないこともわかっている。
「サエは強い子だね。その気持ち、大切にしようね」と言ってサエを抱きしめるのだった。
一方、十兵衛達は不穏な気配に気づいた。
「アステル殿、どうやらつけられているようでござる」
「えっ、ホントか?しかし、なぜ……」




