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辺境領エイラート =Sランクの両親と双子の子供達=  作者: 花屋敷
【辺境領のギルドマスター】
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第8話 いつもの風景


「お父さんおかえり」


「お父さん、おかえりー」


 グレイが家に戻るといつもの様にレインとミスティが玄関まで走ってきた。しゃがみこんだグレイの背中にレインが飛び乗り、そうしてミスティを抱っこしてリビングに入ると食事の用意をしていたリズがおかえりなさいと言う。いつもの風景だ。


 4人で夕食を済ませるとグレイは二人の子供と風呂に入る。それから子供達と遊んでから2階の寝室で子供達を寝かしつけると下に降りてリビングのソファに座る。そうして家事を終えて風呂から上がって隣に座ったリズに今日の話をする。これがいつものスタイルだ。今日はテーブルの上に温かい飲み物が2つ置かれていた。


 グレイはギルドに出ている時は毎日その日にあったことをリズに話をしていた。

 黙ってグレイの話を聞いていたリズ、


「夏になるといろんな人達がやってくるものね」


「いい奴ばかりだといいんだけどさ。そうとも言えないだろう」


 二人が冒険者の時も夏の間に他の都市からこのエイラートにやってきた冒険者が地元の冒険者ともめたり、酔って酒場で暴れたりすることがあった。


 グレイの酒場ではそう言う事はなかったがハメを外す奴は必ずいる。迷惑を被るのはたいていエイラートの住民だ。


「冒険者同士ならギルドでなんとかなるけどな。それ以外のタチの悪い奴らが紛れ込んでくる可能性もあるからな」


 グレイがここの裏社会の顔役連中とツーカーなのはリズも知っている。いやリズのみならず領主のエニスやマリア、そしてケリーとヤコブソンも知っていた。


 そしてグレイがその関係を自分の利益の為に使わないということも皆知っている。


「グレイのやることに間違いは無いって知ってるもの。グレイの好きにしたらいいわよ。私はいつも応援してるから」


「これから夏になると今言った事情で帰りが遅くなったり場合によったらギルドに泊まり込みになることもある。そうなった時はレインとミスティの世話をリズ1人に任せちゃうことになるんだよな」


「大丈夫だって、子供達のことは私に任せて」


「いつも悪いな」


「ううん、平気だよ」


 そう言って隣に座っているグレイに寄りかかってくるリズ。リズにとっては子供達が寝たあとのこの2人の時間が好きだった。グレイも寄りかかってきたリズと雑談をするこの時間が一番ゆったりして仕事の疲れを取る最高のリラックスタイムになっていた。


「そう言えばエニスに酒を飲みたくなったら店を開けるからなって言ったら喜んでたぞ」


 グレイが話題を変えて言った。


「お店を閉めちゃったからエニスも息抜きできなくなってるのかな。そうならたまには息抜きさせてあげないとね」


 グレイに寄りかかったままでリズが言う。


「そうそう。あいつもマリアも息抜きしたくなったら来たらいいんだよ」


「お酒もいいけどまたみんなでダンジョンにも行きたいな」


 それはグレイも思っていた。とは言え子供もいるしグレイはギルドマスターだ。今まで程自由な時間はなかなか作れない。


「うちの子供なら1日くらいなら教会に預けても大丈夫なんだろうけどあっちはな」


「そうだよね。なんと言っても領主様だからね」


 グレイもリズも過保護ではない。子供達が言葉を話す様になった頃からリズは昼間に教会に子供達を連れていっていた。教会には孤児院を兼ねた託児所もあり同年代の子供もいる。幸いにレインもミスティもすぐに孤児院や託児所の友達と仲良くなってリズが教会で掃除や祈りをしている間も面倒を見る必要がなくなっていた。


「レインもミスティも教会に行くのを楽しみにしているのよ。友達と一緒に遊べるからだろうけどいつもウキウキしてるわ」


「そりゃよかった。学校に入るまではそうやって教会の施設とかで友達を増やすのは良いことだよ」


「だから私たちがダンジョンに行くのは何も問題がないってこと」


 アル・アインでは6歳になると皆学校に入学する。そこを卒業すると更に上の学校に行く子供と卒業して働き始める子供に別れる。卒業をしてそこから働きにでる子供も多い。家の仕事を継いだり、どこかに弟子入りして専門職を目指したりする。


 進学する子供は剣術学院や魔法学院に進む者が殆どだが、一部はエイラートの街を出て王都にある王立学院に進学することもある。


 グレイもリズも2人の子供にはやりたい事をさせるつもりでいて、職業や進学で子供達に親から何かを強要することはしないでおこうと決めていた。


「最近レインもミスティも以前よりもずっと魔法に興味を持ってるのよ。グレイや私の鍛錬を見たり、時々教えてあげてるのが影響してるのかしら。きちんと魔法を覚えたいって2人から言われてるの」


「当人がやりたいって言うのなら俺は全然構わないけどな。一度俺が本人達に聞いてみみようか?」


「そうね。興味があるならグレイと2人で本格的に基礎からしっかりと教えて、魔法が使える様になったら一度家族で森に飛んでもいいかもね」


「そりゃいいアイデアだ」


 リズの強化魔法はランクAクラスの魔獣を攻撃を全く受け付けないほどに強い。強化魔法の中から自分の目で魔獣を見たり魔法を撃ったりするのはいい経験になるだろう。


「俺とリズの子供だから2人とも結構魔力があるかもな」


「私もそう思うの」


「ダンジョンの件はエニスが飲みに来た時にでも聞いてみよう。子供達については一度俺からも話してみるよ。魔法に興味があるのなら2人で教えればいいしな」


「うん、お願い。本当にやる気があるのなら基礎からしっかりと教えないとね」


「その通りだ」



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