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辺境領エイラート =Sランクの両親と双子の子供達=  作者: 花屋敷
【辺境領のギルドマスター】
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第4話 就任


 エニスの領主の館を出た4人は貴族区を出ると市内を歩きながらケリーの家に向かう。ケリーは勤めている魔法学院の同僚と結婚をしたが子供はまだいない。


 エイラートではグレイとリズは有名でその子供たちもいつの間にか市民の間で有名になっていた。4人で通りを歩いているとあちこちから声がかかる。


「グレイ、これを子供たちに食わせてやれよ」


「こっちも持っていきなよ、グレイ。あんた用じゃないよ、子供たちにだよ」


「わかってるって」


 とグレイ


「いつもありがとう」


 リズは貰う度にお礼を言う。

 店の人たちから揶揄われながらもいろんな物を渡されてそれを子供達に与えると


「ありがとう」


「ありがとうございます」


 ときちんと頭を下げてお礼をする双子の子供。


「あら、きちんと教育してるんだね。こりゃグレイじゃなくてリズの躾がいいからだね」


「なんで俺じゃないんだよ」


 そんな軽口を叩き合って通りを歩いていた4人は居住区に入ってしばらく歩いて一軒の家の前に立つと呼び鈴を鳴らした。ケリーは結婚してからは旦那とエイラートの居住区の中に新しくて広い一軒家を買ってそこに住んでいる。


 すぐに扉が開いて中からケリーとその後ろにヤコブソンが姿を見せた。


「久しぶりね、どうぞ上がって」


 ケリーが言うとヤコブソンもどうぞどうぞと言う。子供二人はケリーらを見ると、


「ケリーおばさんだ」


「ヤコブソンのおじさんだ」


 と声を出していた。ケリーはレインの前にしゃがみ込むと


「レイン、私はケリーお姉さんだよ」


「わかった。ケリーおばさん」


 もぅというケリー。皆で笑いながら部屋に上がってリビングに座ると双子がそれぞれグレイとリズのお腹の上に乗ってきた。


 子供達の背中をあやしながらエニスに説明した様にグレイがエイラートのギルドマスターになるという話が来ているんだよと言う。


「リチャードにしちゃあいい判断してるじゃない。グレイなら問題ないわね」


 グレイから詳しい話を聞いたケリーがあっさりと言った。


「ケリーも賛成かよ」


 グレイが言った。


「当然でしょ?ここ魔法学院の卒業生はエイラート魔法師団に入る生徒が多くて彼らはエイラートをはじめ各地のギルドに所属するからね。ギルドの雰囲気や運営については魔法学院としても気になるところだもの。グレイがギルマスならエイラートのギルドに派遣しても問題ないわね」


「僕も賛成だよ」


 ヤコブソンがケリーの後に言った。ヤコブソンは元々王都にある魔法研究所というところで魔法を理論的に分析する部署で働いていた研究者だ。自分自身は冒険者の経験はないが精霊魔法を使うことができる。魔法を研究している学生たちに魔法を感覚的じゃなく論理的に説明しようとエイラートの魔法学院が講師の派遣の希望を出したところ手を上げてここエイラートにやってきた。そして魔法学院の教師をしているケリーと知り合って結婚したという経緯がある。確かケリーより2つか3つ年上のはずだ。


 ヤコブソンの言葉にグレイとリズがそちらに顔を向けると、


「グレイがこのエイラートで多くの市民や冒険者から好かれているというのはこの街にきてすぐに分かったよ。人望がある人が重要なポジションにつくことはギルドの発展、強いては街の発展につながると信じているんでね」


「皆好き勝手に言ってくれるよな」


 グレイが言うと


「それだけ好かれてるってのはある意味財産よ。聞いている話だとエイラートには結構な数の冒険者が集まって来てるって言うじゃない。荒くれ者をまとめるのはグレイの得意分野の一つでしょ」


 ケリーに止めを刺されたグレイわかったよと言うと、


「やっぱり皆からも勧められたわね、グレイ」


「ああ。リズの言う通りになったよ」


 そりゃそうでしょうというケリーの言葉を聞いたグレイ。ケリーとヤコブソンを見て


「明日ギルマスに受けるって話をしてくるよ。それでエニスにも言ったけど何かあったときは助けてくれよな」


 グレイの言葉にもちろんと頷くケリーとヤコブソン。



 翌日グレイは今度は一人でギルドに顔を出してギルマスの執務室に入って二人だけになるとギルマスのリチャードに後任のギルマスを受けるよと言った。


「ありがとよ。これでこのギルドも安泰だぜ」


「あんまりハードル上げないでくれよな」


 ちょっと待ってろと言ってリチャードはギルマスの部屋から出ていくとすぐに一人の女性職員を連れて戻ってきた。グレイもよく知っている受付に座っていた女性だ。


「ステファニー。グレイが俺の後任でギルマスになることを受けてくれた。すぐに必要書類を作成してくれ」


 そう言ってからグレイに顔を向けると


「ステファニーがここのギルドマスターの秘書も兼ねている。分からない時は彼女に聞いてくれ。何でも知ってるからな」


 リチャードがそう言うとステファニーはグレイに頭を下げて


「よろしくお願いします」


「こっちこそよろしく頼むよ。冒険者のことは知ってるがギルドのことはほとんど知らないからな」


「グレイさんなら大丈夫ですよ」


「ステファニーのお墨付きが出たぞ、俺も安心だ」


「勘弁してくれよ」



 グレイがエイラートのギルドマスターになるという通知はグレイが受けてから1週間後

に正式に発表された。その通知にはギルドが新しく王都にギルド総本部を作りそこの初代代表にフレッドがなること、王都の後任のギルマスにエイラートのギルマスだったリチャードがなること、そしてエイラートの新しいギルマスにはランクSの冒険者のグレイがなると書かれていた。


 この発表を見た冒険者達が一番びっくりしたのは言うまでもなくグレイのエイラートのギルマス就任だった。しかも通知によるとギルド始まって以来の現役冒険者のギルドマスターだった。そう、グレイはランクSの冒険者のステータスのままギルドマスターに就任する。


 エイラートの冒険者達は皆一様にグレイの就任を歓迎し、王都や他の都市でもグレイを知っている冒険者達はその発表を好意的に受け止める。


 リチャードとの短い引き継ぎ期間が終わるとリチャードは家族と一緒に王都に引っ越していき、グレイのギルマスの仕事が本格的に始まった。



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