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辺境領エイラート =Sランクの両親と双子の子供達=  作者: 花屋敷
【Aランクそして更なる高みを目指して】
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第58話 いかにも怪しい


 12層には階段から見ただけでも土の中から飛び出してくるサンドワームがいるのが確認できている。ここから攻略の難易度が上がるのだろうと全員が気を引き締めていた。


 例によってレインとミスティの強化魔法から攻略が始まった。土は柔らかく歩くと砂と靴が擦れる音がする。これが魔獣を呼ぶのだと理解するが音を消すことはできないので周囲を警戒しながら進みだすと直ぐに右前方の地面から3体のサンドワームが垂直に飛び出してきた。魔獣を見た瞬間にニーナが矢を撃ち、ミスティが風の精霊魔法を撃ってそれぞれ1発で2体のワームを倒す。そこでスコッチが挑発スキルを残り1体に発動。タゲを取ったところにニーナの矢が命中してそのままワーム3体を倒した。


「魔法を撃つ前に倒せたな」


「今回はうまくいったけど毎回行くとは限らない。それと今後ろから見ていたが3体のワームのヘイトはリンクしている様に見えた」


 レインが言うとどういうことだと聞き返してきたスコッチ。5人は周囲を警戒しながら進みつつやりとりをしている。


「固まっているどれかでも攻撃を受けるとその固まりの全てが攻撃をしてきた人にヘイトを向ける様だ」


「となると俺はどうしたらいい?」


「サンドワームが出てきたらスコッチは自分に一番近いワームに挑発してみて。残りは私とニーナで倒すから。今の戦闘だと魔法と矢、それぞれ1発で倒れたから相手が魔法を撃つ前に倒せる気がする。それに万が一魔法を撃たれたとしても1発程度なら十分に耐えられるから」


 ミスティの説明にわかったと返事をするスコッチ。エマーソンとレインもそれで行こうと言った。確かに魔法を直撃するとしてもランクAクラスの魔法なら1発でこちらが死ぬことはないだろう。強化魔法もかかっている。自分たちがダメージを受けずに倒そうとすると選択肢は限られてくるが1発程度なら被弾上等と割り切ることも大事だ。


 遮蔽物がなく見通しの良い砂漠だが若干の起伏はある。そして魔獣は土の中にもいるが当然砂漠の上も徘徊している。ただ遠目に見つけても魔獣の感知外だといきなり襲ってはこない。ニーナとミスティで魔獣の探知できる距離を探っていた。


「20メートル?」


「もうちょっとあるかも?多分ランクで違うんだろうけどAランクだと30メートル程度はありそう」


「なるほど」


 何度かスコッチにお願いしてゆっくりと魔獣に近づいてもらいながらどの距離で相手が反応するかをチェックしている2人。魔獣のランクや種類によって感知距離は異なるが

ランクAクラスでおおよそ30メートル弱じゃないかという検証ができた。


「これなら感知外からでも命中できる距離だね」


「でもそう簡単じゃないよ。それは私も同じなんだけどね」

 

 検証を終えたニーナが自分の距離よりも近いので倒せると言うがミスティは違うと言う。他の3人も歩きながらミスティの次の言葉を待っていた。


「感知外だと土の中に潜るでしょ?」


「あっ!」


「だからスコッチかエマーソンがタゲを取って初めて攻撃ができるんだよ。確かに矢は感知外から撃てるけど魔獣を土の中から出して初めて使える弓や魔法だからね」


「確かにそうね」


「だから私とニーナの仕事は前衛の2人がタゲを持ってる間に出来るだけ早く倒すってこと。30メートルより内側でもいいんだよ。威力が増すのならね」


 黙って聞いていた3人はさすがミスティだと思っていた。距離の検証結果だけを見れば確かにミスティやニーナの射程距離の方が長い。ただそれだと地面から魔獣が出てこない。そこまで計算した上での検証だったのかと。


 メンバーは地上を徘徊する魔獣を討伐しながらも地中の様子を探っていたそうやって探ることが個人の気配感知の能力アップになると信じている。


 12層も太陽は常に真上にあり容赦なく陽の光が地面に向かって注ぎ込んでくる。そんな中リザードを倒しスコーピオンを倒しサンドワームを倒しながら砂漠を進んでいく5人。


「前方に岩場がある。オアシスじゃないみたいだけどな」


 前方を警戒しているスコッチが声を上げた。全員が顔を前に向けると確かに踏み固められている砂漠の道から少しだけ外れた場所に大きな岩が3つほど重なる様に積み上がっていてその岩場の影が砂漠の上に伸びていた。


「ミスティ」


「うん。怪しいね」


 レインが聞いてきたので即答する。


「ニーナと私であの岩場の30メートル外側から矢と魔法を撃って見る。皆は戦闘準備をお願い」


 ミスティの一言で全員が準備に入る。強化魔法を再度掛け直すレイン。エマーソンも片手剣を持っていつでも対応できる姿勢だ。スコッチは腰を落として盾を持って構えている。


 行くわよという声でミスティとニーナがゆっくりと岩場に近づいていき、30メートルより少し外側で立ち止まった。


「見た限りは何もなさそうだけどね」


「だから怪しいのよ。普通なら魔獣がいておかしくない場所。そこにいないってことは何かある、あるいは何かがいると見るべきよ」


 ミスティの指示でまずニーナが積み重なっている岩場に上から順に矢を射っていく。矢は岩場に命中するが何も動きはない。


「ここからよ。岩場の周囲の砂漠に矢を魔法を打とう。みんなは複数体が出てくる可能性があるからよろしくね」


「任せておけ」


 ミスティの声にエマーソンが返答した。タイミングを合わせて岩場の周囲に魔法と矢を撃ち、それが地面に当たった瞬間に岩場の周りにワンドワームが湧き立ち、それと同時に土の中から2体のスコーピオンが飛び出してきた。


「スコーピオンを倒して。ワームは距離があるから地面に逃げるはず」

 

 叫んだミスティの言葉に返事はないが各自が動いていた。スコッチが1体のスコーピオンのタゲを取り、もう1体はエマーソンがタゲを取る。すぐに矢と魔法が2体のスコーピオンに向かって撃たれて命中すると光の粒になって消えていった。ミスティの予想通り一度はPOPしたサンドワームだが距離が離れていたのかすぐに砂漠の砂の中に引っ込んだ。


「岩場に近づかない様に砂の上を移動したらサンドワームは出てこない」


 レインが言ってぐるっと岩場を遠回りにして移動した5人は安全な距離まで離れると再び踏み固められた土の上を歩きだした。


「何も知らずに近づいたら一斉にPOPするということか」


「サンドワームも3体の一塊が5つ6つあったぞ。あれらが一度にきたらきつかったな」


 スコッチとエマーソンが前方を警戒しながら話をしている。砂漠の真ん中に岩場がありしかも周囲に敵がいない。どう見ても皆が怪しいと認識していた岩場をうまく回避した5人。そのまま歩いていると13層に降りていく階段が見えてきた。


 翌日の14層も13層と同じ造りだった。このフロアには2箇所岩が積み上げられている場所があったが問題なく処理した5人は15層の階段を見つけて記録したところで地上に戻ってきた。



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