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辺境領エイラート =Sランクの両親と双子の子供達=  作者: 花屋敷
【Aランクそして更なる高みを目指して】
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第33話 レインの知識とミスティの作戦


 その後も1体、2体と倒しながらかなり森の奥に進んで行った彼らは森に入って半日が過ぎた昼過ぎ、前に進む足を止めた


「あれは?」


「見たことがないわ。NM(ノートリアスモンスター?」


 ミンとシルビアが話をしている森の木々の先、そこにはちょっとした大きさの池がありその池の中を悠々と竜の様な生き物が泳いでいるのが見える。長さは5メートルくらいか。体をくねらせながら池の中を泳いでいるその白い体がはっきりと見えていた。


 シンディの指示で10名はゆっくりとその場から下がってから一塊になった。スコッチとミンが周囲を警戒している中打ち合わせをする。


「あれはおそらく水竜と呼ばれるNMだ」


 レインが言った。


「水竜?」


 聞いてきたシンディにそうです、ギルドの資料室、そしてエイラート図書館で見ました。と答えてから話を続けるレイン。


「水竜は成体で長さが10メートル以上あるNM。おそらくあの長さから見てあれは成体ではなく幼体だろう。成体でのランクはSSS以上、幼体だからそこまではないにしてもSSクラスかそれ以上であるのは間違いない」


 聞いている他のメンバーのうちエマーソンらはレインが普段からギルドの資料室や図書館で魔獣の資料を見ているを知っているので黙って聞いていたがシンディらはレインの博学にびっくりする。


「彼は休日によくギルドの資料室や図書館に出向いては戦術の本や魔獣の本を見ているんですよ」


 シンディらの驚く表情を見たエマーソンが言った。ギルドの資料室なんて入ったことがないわとか言っているリンやキャロル。私もよとシンディが言ってからレインを見た。


「それで相手の特徴や弱点についても知ってるの?」


 レインは頷くと言った。


「攻撃は口から吐かれる水。威力が凄くまともに当たると吹き飛ばされるか腕や足が千切れ飛ぶ程強力です。それからあの尻尾で敵を弾き飛ばすこともできるらしい。幼体でも攻撃方法は同じでしょう。あとこれは資料に書いてありましたがあの水竜は水の中だけじゃなく地上も移動できます。地面から少し浮いて移動する様ですが地上での移動速度は水の中に比べるとぐっと落ちる様です。弱点は水系の魔獣だから雷系ですね」


 NMの特徴については理解した。それにしてもやっぱりこの双子普通じゃないとシンディはレインの話を聞いていて思っていた。止まない向上心、探究心。流石に賢者から大賢者になったギルマスの子供達だと納得する。


 この思いはシンディ以外の女性メンバーも同じだった。普通はギルドの資料室や図書館なんてよっぽどの事がない限り顔を出さない場所だ。しかも休日であればのんびりしたり買い物をしたりするのが普通だろう。そんな中いつ会うかわからない魔獣を調べ、その特徴や弱点を覚えているというレインを皆見ていた。


 シルビアも感心して聞いていた。今から戦うかもしれない敵の情報がここまで揃っていれば事前にいろんな場面を想定して対策が打てる。それにしてもあのNMは水の中だけじゃなく地面も移動できるのか、やっかいだ。


「ありがとう。あのNMの特徴、弱点は分かったわ。それでどうする?倒すかここから引き返して応援を呼ぶ?正直あれを倒すのは簡単じゃないと思うんだけど」


 そう言ってからシンディはミスティを見て貴女はどう思う?と聞いてきた。彼女がこの場面でどう言う判断を下すのか個人的に興味があったからだ。


 顔を向けられたミスティは暫くして顔を上げると、


「倒しましょう」


 と言った。


「どうやって?」


 とびっくりした顔で聞いてきたシンディに自分の作戦を説明するミスティ。


「今のレインの話を聞いて思いつきました。NMが水の中にいては倒すのに苦労すると思うのでまずは地上にあげます。それからマラソンしながら倒します」


「「マラソン?」」


 何名かが同じ声を出した。そうですと言ったミスティ。


「今から説明します。まずシルビアとスコッチの2人が交互に挑発スキルでNMのタゲを取って水から地上に上げるとその後も2人で交互に挑発をしてタゲを取りながらこの森の中を走り回るの。シンディとニーナは木の上から雷属性の矢を撃ち、私とキャロルが雷の精霊魔法を撃つんだけど決して連続して撃たないで一度ずつ、挑発スキルの発動後に一度だけ撃つの」


「シルビアとスコッチからタゲが移動しない様にね」


 シンディの言葉にその通りですと言う。


「矢や魔法を撃つのは2人が交互に挑発スキルを発動した直後だけ。一番ヘイトが高い時に打てばタゲはフラつかない。そうやって少しづつ体力を削っていって弱ってきたところで戦士も含めた全員で一気に攻撃して倒す。森の中をかなりの時間走り回って少しずつ削るのでマラソンするって言いました」


 なるほどと感心するシンディら。急いで倒さずにじっくりと体力を減らしていく作戦だが聞いている限り悪くない様に思える。あのNMがいる時点で周辺にはあのNMよりもらランクが低くなるランクSもいない。マラソンするには問題ないだろう。


「シルビアとスコッチにはリンとレインが一緒に近くを走ってもらってフォローをしてもらう。万が一NMが攻撃しそうになったら私が声を出すからすぐに木の陰に隠れて。間違っても直撃を受けない様に」


「と言う事はミスティも並走するの?」


「はい。NMの横か後、顔の動きが見える場所を並走します。魔法を撃つ時は止まりますけど」


「俺やミンは前半は何もせずに待機だな?」


「最後の追い込みまで体力温存でお願い」


 聞いてきたエマーソンにミスティが言った。そう言ってからどうでしょうか?とシンディを見るミスティ。


「いいわ。それでやりましょう」


 シンディの一言であのNMと戦闘することが決まった。その後は森の様子を見ながらマラソンルートを確認する。走るルートを間違えると木の上にいるシンディとニーナの矢が届かない。打ち合わせの途中でキャロルも木の上から精霊魔法を撃つことになった。3本並んでいるの木の両側が狩人、中央の木に精霊士という配置になる。


 3人が3本の大木の枝の上で構え、その3本の木の周囲をマラソンして走ることにする。マラソンする予定の3本の木は距離にして約10メートル間隔であり、縦の長さが20メートル弱になる。どこにいても矢や魔法が当たる距離だ。イメージとしては直径20メートルの円周を走りながら相手の体力を削って倒す作戦だ。


 エマーソンとミンは盾ジョブの2人に何かあった時のために地上で木の陰に隠れて待機することにした。


 狩人の2人は魔法袋から属性矢を取り出して背中の矢筒に入れていく。マラソンの時間が読めないので盾ジョブを含め全員がポーションをいつでも飲める様にポケットに入れた。実際にマラソンルートを歩いてしっかりとルートを覚え、細かい打ち合わせをすると3人が木に登って太い枝の上、所定の位置につく。準備完了という3人の声を聞いた7人。エマーソンとミンが3本の大木から少し離れた場所に立ち、レインとリンがそれぞれの盾ジョブの近くにたった。ミスティは彼らとは少し離れた場所に立つ。


「そろそろ行くぜ」


 スコッチがそう言ってゆっくり池のほとりに近づいて言った。




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