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辺境領エイラート =Sランクの両親と双子の子供達=  作者: 花屋敷
【Aランクそして更なる高みを目指して】
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第6話 精霊の弓


 エイラートでの冬の鍛錬でレインとミスティはスキルがそれぞれ1つずつ上がった。ミスティはまさかこの期間で自分のスキルが上がるとは思っていなかった様で脳内にスキルアップの声が聞こえた時はその場でジャンプして感情を爆発させる。


 グレイに言わせればそれは自分達が常に厳しい鍛錬を行ってきた結果だと行って2人を褒める。


「レインもミスティもしっかりと鍛錬したからね。きつい鍛錬だったと思うけどスキルが上がってよかったじゃない」


 リズもそう言った。


 冒険者のランクはギルドの査定で決まるがジョブのスキルは自分の鍛錬の結果だ。ジョブのスキルが上がればそれはすぐに自分たちの魔法に現れてくる。結果が見えるのだ。


「レインもミスティも魔力量も増えてるし魔法の威力も増している。しっかりと鍛錬すれば必ず自分に返ってくるということがよくわかるだろう?」


 鍛錬を終えて自宅に戻ってきて夕食を摂りながらグレイが双子を見て言った。父親の言葉に頷く2人。


「しっかりと鍛錬するということはだ。常に意識をしているということだ。だらだらと魔法を撃っているんじゃだめだ。目的をしっかりと持ってそれを意識するということだ大事になる。目的を持ってそれを意識すると魔力のロスが減る。それが魔力量の増加や魔法の効果アップの基礎になるんだ」


「同じ魔法を撃っても目的意識がないと伸びないということ?」


 レインが聞いてきた。その通りだとグレイ。


「詳しい仕組みまではお父さんはわからない。分からないがこれだけは言えるぞ。目的意識のない魔法なら撃たない方がマシだってな」


「強い魔法、効果のある魔法というのは術者が強い気持ちを持つと威力が増すのは過去から実践で証明されているの。相手を倒す、味方を助ける。その強い気持ちを持ち続けることが大事ね」


 それからも週に3、4日は家族で森の奥に飛んでは鍛錬をする2人。エマーソンとスコッチも普段は2人で鍛錬をし週に1、2回は母親のマリアに模擬戦の相手をしてもらう、時に領主のエニスにも相手をしてもらうという鍛錬を冬の4ヶ月間続けた。


 エイラートの街の中の雪が溶け出した頃4人。この日は定期的な近況報告会をギルドの中の酒場で行っていた。テーブルの上には各自が頼んだ飲み物が置かれている。外はまだまだ寒いがギルドの中は暖房が効いているので全員が冷たい飲み物を注文していた。


 レインとミスティはそれぞれスキルが1つ上がった事を報告するとよかったなと2人から言われる。


「鍛錬はきついがスキルが上がるとやっててよかったなと思うよな」


「その通り。きつい鍛錬が報われたよ」


「2人のスキルが上がることはパーティにとっては大きなアドバンテージになる。それにしても短期間でスキルが上がるってことは相当しごかれた様だな」


「正直きつかった。でも魔力量が増え、魔法の威力が増しているのを実感できるとね。きついけど頑張ろうって気になるのよ」


 ミスティが言うとその通りだと隣のレインも頷く。


「そろそろニーナも戻ってくるだろう。5人揃ったら活動を開始するがとりあえずは慣らしの意味もこめてフィールドで体を動かしてはどうかな。ダンジョンは皆の様子を見て判断したら良いと思うんだけど」


 そう言ったレインの案に他の3人が賛成し、ニーナが戻ってくるまでは引き続き各自で鍛錬を続けることになった。



 ニーナはエルフの森で鍛錬を続けていた。パーティの時と同じく3日鍛錬して1日休むというローテーションで活動をしている。森にはダンジョンがないのでフィールドばかりだがエルフの森の結界を抜けて魔獣のいる場所まで出向いては一人で木の上で野営をしながら魔獣を倒しては魔石を取り出していた。


 魔石は最初はエルフの村に寄付をしていたがそのうちに長老達から


「村の分は良いから自分で持ちなさい。金策になるんだろう」


 と途中からは自分の魔法袋に収納している。


 森で3ヶ月と少し過ごしたニーナはそろそろエイラートに戻るべく長老達と会う。


「しっかりと鍛錬をしておるみたいじゃな、うん、良いことじゃ」


 村の長であるモネが柔和な表情で向いに座っているニーナを見て言った。


「おかげさまで。村に戻ってリフレッシュもできましたし鍛錬もできました。お世話になりました」


 その言葉にモネはじめ長老達も大きく頷いている。


「そろそろエイラートは雪解けになります。私もエイラートに戻って冒険者を再開したいと思っています」


「良いじゃろう。森でのニーナの暮らしぶりを見ておったがもう十分に一人前になっておった。一人で森の外で暮らしても何も問題はなかろう」


 ありがとうございますと長老達に頭を下げたニーナ。


「今やニーナはエルフの村一番の弓使いとなった。そんなそなたにエルフの森に伝わる精霊の弓を授けよう。これで冒険者としての活動も楽になるじゃろう」


「精霊の弓! それをいただけるのですか?」


 精霊の弓とはエルフの村に住む優秀な職人達によって作られる弓だ。精霊の加護をたっぷりと受けることができる職人が木の選定から加工、そして仕上げまで一人で作りあげた弓のことである。その弓は攻撃力、命中ともに他の弓の追随を許さない程に高いがなによりも最大の特徴は矢が要らなくなるということだ。


 弓を構えて弦を弾くといつの間にか矢がセットされている。精霊の加護により無尽蔵に矢が出てくる弓だ。エルフの人にとっては妖精の弓を持つことが最高の名誉とされている。


 長老のモネが入っておいでと声をあげると奥から弓を持った職人が入ってきた。この森で一番の弓作りの名人のアニータだ。彼女は弓職人としてはもちろん一流の中の一流だが同時に森の精霊達とも最も通じ合っている一人だ。


「ニーナ、私が精霊と一緒に精魂込めて作った弓だよ。会心の出来になっている。大事に使っておくれ」


 そう言って手に持っていた弓をニーナに渡した。ニーナの体型に合わせたロングボウは彼女が手に持った瞬間に自分の手にフィットした。最高の弓だと分かる。


「アニータ姉さん。ありがとう。もちろん言われなくても大事にするわ」


 頑張ってねとニコニコしているアニータが言った。


「グレイとリズの子供達はこの冬にそれはそれは厳しい鍛錬を続けておったぞ。エニスの息子とその友達も同じじゃ。エルフの代表としてみっともない真似は出来まいて。わしもここにいる長老達もグレイとリズ、そしてエニスらを見返してやりたいしの」


 モネがそう言うと全員が笑った。


「ありがとうございます。長老様方。この弓で冒険者としての高みを目指して参ります」


 その言葉にうんうんと頷いている長老達だった。



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