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辺境領エイラート =Sランクの両親と双子の子供達=  作者: 花屋敷
【双子の冒険者】
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第68話 久しぶりのエイラート


「しっかりと鍛錬してきた様だな」


 エイラートのギルドに顔を出した彼らは会議室でギルマスと向かい合って座っている。時刻は昼を過ぎた頃でギルドの中も静かだ。


「ええ。ダンジョンも1つクリアすることができました。得る物が多いティベリアへの鍛錬でしたよ」


 エマーソンの言葉にうんうんと頷くギルマスのクロスビー。


「当分はここでまた鍛錬だな」


「そのつもりです」


 無理はするなよというギルマスの言葉を聞いて会議室を出た5人は酒場のテーブルに座る。ここも久しぶりだ。


「皆んなお疲れ様。移動もあったので明日と明後日の2日を休暇にして3日後からいつものローテーションで活動を開始しようと思っているんだけどいいかな」


 2日の休養はありがたいと思っていたミスティ。皆も同様だった様で活動は3日後から再開することになった。



「「ただいま」」


「あら、お帰り」


 玄関の扉を開けて声を出すとリズがタタタと玄関まで走ってきた。


「いいタイミングでエイラートに戻ってきたわね。一昨日ようやく雪が溶けてネタニアから春一番の馬車がやってきたところよ」


「そうなんだ」


 とレインは言い。


「お父さんは?」

 

 とミスティが聞く。地下室にいると聞いてミスティが階段を降りようとするとちょうどグレイが下から上がってきた。


「ミスティとレインの声が聞こえたんでな」


 1階に上がるなりミスティの頭をガシガシと撫で回すグレイ。


「うん、しっかりと鍛錬してきた様だ。えらいぞ」


 階段を上がったところに立っていたミスティを一眼見てしっかり鍛錬をしてきたと見抜いたグレイ。子供達の雰囲気がティベリアに行く前とは違っているのを感じ取っていた。


「えへへ」


 久しぶりに父親から養分をもらったミスティ。レインと交代でシャワーを浴びて着替えて出てくると皆でリビングのソファに座ってミスティを待っていた。


 ミスティがソファに座るとリズが入れたお茶を飲みながらの報告会になった。レインがティベリアでの活動の内容を両親に説明する。これは2人が冒険者を初めてからの習慣だ。その日にあったことを両親に言うと時には褒められ、時にはアドバイスを与えてくれる。それが自分たちの活動の糧にもなっていた。


「ティベリアのギルマスも元気そうでなによりだな」


「そうね。それにダンジョンをクリアしたのは立派よ。ランクSのボスといったら貴方たちよりも2ランクは上。強くなったわね」


「そうだ。話を聞いていると皆が自分の仕事をきっちりとこなしたから倒せたんだろう。よくやった」


 グレイとリズから褒められて頬が緩む2人。


「明日と明後日はしっかりと休んで疲れをとりなさい」



「お父さん。お願いがあるの」


 その日の夕食の時にミスティが言った。何かなと彼女を見るグレイ。


「お父さんとお母さんって今でもたまに昼間に森の奥に飛んで鍛錬してるんでしょ?一度一緒に行きたいなと思って」


 グレイとリズは子供達が大きくなってからもたまに2人で森の奥に飛んでランクAを相手に鍛錬を続けている。これが意外とストレス解消になるのだ。魔法使いの2人はやっぱり時には魔法を思いっきり撃ちたいと思っており。そんな時は森の奥に出向いているのを双子も知っていた。


「それは僕も一緒に行きたいな」


 ミスティの話を聞いたレインも言った。どうしようかととリズがグレイを見る。


「ランクBだよな。まぁいいんじゃないか。ランクAが相手でも全然歯が立たないこともないだろうし」


「「やったー」」


  実はレインとミスティは両親の本気の魔法をほとんど見たことがない。特に父親のグレイの精霊魔法はまだ一度も無い。母親も本気の強化魔法を数度見た程度だ。


 自分達の実力、立ち位置がどれくらいなのかを探るには最強の大賢者と聖僧侶の魔法を見るのが一番じゃないかと考えているミスティ。


 2日ある休養日の2日目の午前中に森の奥に飛ぶことになった。


 翌日は完全休養日となった。朝の鍛錬を家族で終えて朝食を済ませるとレインは図書館に行くといい。ミスティは久しぶりに市内をうろうろすることにする。


 グレイとリズの子供であるミスティはそうでなくても有名だがその上に美人でスタイルも良い。シャツにロングスカートと言った私服で市内を歩いているとあちこちから視線が飛んでくる。ただミスティはそれは自分が両親の娘だからだと思っていた。


 市内の服屋や小物屋をのぞきながらぶらぶらしていると自分を呼ぶ声がする。


「ミスティ久しぶりじゃん。今日はお休み?」

 

 声をかけてきたのは学院の同級生だったスミレだ。彼女は卒業後に辺境領の魔法師団に入団してここエイラートで冒険者をしている。


「久しぶりだね。そうなの。今日と明日が休養日なの」


 スミレも今日は休みだというので2人で市内の喫茶店に入って窓側の席についた。

 スミレは精霊士で学院時代の女友達の僧侶とあとは剣術学院卒の女性の戦士と盾ジョブの合計4人で女性だけのパーティを組んでいて今ランクはEだという。


「冬の間は雪かきをしてポイントを貯めて春になったから外で薬草集めをしているの」


「雪掻きってきついけど楽しいでしょう?」


「そうなのよね。たまーに店の人が熱い飲みものをくれたりするし、終わったあとにお礼を言われると頑張った甲斐があったなって思うもの」


 スミレも素直な女性で低ランクのクエストを楽しんでいる様だ。


「もうすぐDランクに上がるんじゃない?」


 自分の経験からそういうミスティ。


「うん。だから今はしっかりと金策中。それで見なかったけどどうしてたの?」


 スミレが聞いてきたので冬の間パーティでティベリアに4ヶ月ほど武者修行に行っていたのだと説明する。


「ランクBだっけ?ギルドで聞いた話じゃ最速でランクを上げてるって話だよ」


「う〜ん、急いで上げてるって感じはしてないんだけどね」


 思っていることをそのまま言うミスティ。スミレもミスティが話を誇張したり自慢したりする人じゃないと知っている。


「当人達がそう思ってなければ周りの評価なんて関係ないよね」


「そうそう」


 その後4ヶ月間不在だったエイラートの事情を教えてくれたスミレ。彼女によると魔法学院の同級生でここエイラートで冒険者を始めた連中は皆今はランクEになって薬草やモコ草取りをしているらしい」


「ランクDになったらゴブリン退治が始まるよ」


「そうそう。それでミスティもゴブリンの胸から魔石を取ったりしたの?」


「したよぉ。最初は私には絶対に無理って思ったけど私だけやらない訳にはいかないから目を瞑って胸に短剣刺したよ」


 それから冒険者の先輩としてスミレが聞いてきたことに丁寧に答えるミスティ。その話が済むと


「セリーナも元気にしてるの?」


「もちろん。私達と同じで4人で組んで薬草取りをしてる時々薬草が取れる草原で会うんだよ。あっちは男性2人、女性2人のパーティだね」


 どうやらポールとセリーナらはとりあえず4人でパーティを組んで冒険者を始めたらしい。その後はエイラートにできた新しい店の話やどこどこのレストランのランチが美味しいと言った女子会になって時間を潰した。


 いい気分転換になったと家に戻ってきたミスティの表情は明るかった。


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