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(6)ダンジョン攻略に俺の経験が生きる? 戦戦戦戦戦重の構成で挑みます。

斥候なしヒーラーなし、魔法支援なしの脳筋パーリーでレッツダンジョンな内容。

新調した盾で今日も頑張る。

HP1タンクのハートフルタンクコメディー。


(6)ダンジョン攻略に俺の経験が生きる? 戦戦戦戦戦重の構成で挑みます。


 「簡単に説明すっと4回攻撃して10ヤード…こっちだと単位なんだろ、こんくらいの距離の十倍進むっス」

 宿が併設された酒場で朝ご飯。楊さんが飯を誘ってくれた。

 「こっちの単位だと1メルくらいかな、10メル進むとどうなるんだい?」

 「もっかい攻撃が4回出来て、最後、相手陣地までボール持っててタッチダウンってーのになって点数が入るっス、あと他はボールをキックしてこんな形のゴールの枠に入れても点数入るっス」

 「なるほど、こっちの世界でいうインフェルノシルクロみたいな競技の安全なやつだ」

 「似た競技あるっスか?」

 「っまあ、こっちは殺伐としてるがね」

 「殺伐?」

 「ボール持ってる選手はぶっ殺してもいいルールなんでね」

 「マジっすか?異世界こえええ、あ、これ旨い」

 昨日の残りものスープにブルスト、硬いパンを浸して食べる。

 残り物の旨味が出て、実は夜食べるより旨い。

 庶民には肉なんぞ高価で口に入らないのだから冒険者というのは贅沢できる職業だ。


 「農家の食っていけない三男坊とか、傭兵になったり、インフェルノの選手になったり、まあ私の家も裕福とまでいかなかったのでこうして冒険者してる」

 「楊さんも大変っスね」

 「ところで楊さん、楊さん頭いいから魔法職とかどうなんっスか?」

 「本がね、高いんだよ」

 「本…っスか」

 「初級魔術の為の参考書が1ゴルド、初級魔術に触れるための魔力の本が2ゴルド、で初級魔術の本が3ゴルドで計6ゴルド。銀貨にして600シルバなんて中流以上上流以下のご家庭の、ホントに頭良さそうな子しか買ってもらえないんだよ」

 魔術師の家系から魔術師が出るのって金銭的な理由なんだなと理解した。 

 「あーなんかわかるっス、うちも高校、大学と特待生じゃなかったら厳しかったっスからねー」

 そういや本当の母さんどうしてるだろう?

 今年もコミケとかいうのに行ってるのだろうか?

 武司ちゃん胸毛生えないわね、男は胸毛生えてないと…とか良く言ってたっけ。

 あまりいい思い出が出てこないので心配するのをやめた。

 女は春が決戦なのよ! とか意味不明だった。

 

 「で、まあ冒険者になったのは余り裕福じゃないからさ」

 とサラッと笑ってパンをかじる楊さん。

 こんなセリフもカッコよく言える大人の雰囲気。

 なんだろ、若く見えるけど苦労人っぽいよな。

 

 昨日、楊さんとも話して今度はダンジョンに潜ってみる事にした。

 楊さんが言うには相手の攻撃方向を指定しやすいのでこのパーティー向きだという。

 ダンジョン攻略ってなんだ? 頭の悪い俺でもわかるように(ヤン)さんが教えてくれる。この人、1レべなのにすごい詳しい。

 よほど冒険者になる前に勉強したんだなー。頭が下がるっス。


 「あーん…じゃあ、スカウトってポジションの人が罠を見つけたり、敵の様子探ったりするんっスね? なんつうかコーナバック的なことするんだなー」

 俺はなんとなく納得した。

 「コーナーバックってなんだかわかりませんが…まあ納得してくれたらいいでしょう」

 「あー、相手のワイドレシーバーに張り付いてパス封じたりするんっス、足が早えやつがやるポジなんでなんとなく」

 実際、一回見てもらえれば解りやすいのだが。


 「で、指示だしすんのが楊さんでー、ってか楊さん、HP高いからオフェンスでしょ? あれ? つうか前衛しかいないじゃん」 

 今頃気が付いた。 戦士戦士戦士戦士戦士重戦士じゃん? このPT。

 バランスとかどうなってんの?

 「俺、もともとラインバッカーってポジなんっスけど」

 「何する人なんです?」 

 「まあ最後まで状況見て突っ込んできたヤツをタックルでぶっ殺すつうか止める役目っスね」

 「はあ、まあ最初から最後までヘイトを稼いで相手の攻撃からみんなを守るみたいな感じをお願いしたんですが」

 「うーんディフェンス俺一人であと、オフェンスって感じですかね」

 「斥候役欲しい所ですけど、もうPT構成いっぱいで」

 「誰か入れ替えるっスか」

 一瞬、ジェシーの顔が浮かぶが楊さん許してくんないっスよねきっと。 それに入れ替えとかはどうだろう、なんか嫌だ。

 「俺、結構みんなの事、気に入ってるんで寂しいっス」

 まああんな奴でもいないと寂しい。

 毒消し持ってたり、準備が良かったり、優しい所もある。

 「そうですね、まあ今いる人間で役割分担しましょうか」

 楊さん人格者だよな。

 「クロイツどっスか?あいつ逃げ足はやいし敏捷性高いっス」

 「そういえば武司君さん、PTのステータス見れるのでしたね」

 

 「姐さん事件です!マジヤベエー」

 クロイツが飛び込んでくる。

 

 「どうしたクロイツ?」

  

 クロイツが言うには、この街最強のPTが初心者ダンジョンで遭難したらしい。

 理由はわからないが、協議の結果、ダンジョンの捜索隊を募集。

 ダンジョン経験のないPTのを立ち入り禁止にするってことらしい。


 「なんだ中止ならしょうがないじゃねえか」

 「武司君!しょうがなくないんだってマジ!」

 うでがワタワタしてる。コイツホントにかわいい。

 「よくわからないが、中止じゃしょうがないだろ? ねえ楊さんそうっスよね」

 「それで武司君、姐さんは?」

 コイツの中で、ジェシーは姐さんなのか、先日の商人とのアレ見たら、まあわかる。100シルバの買い取りに20シルバ上乗せとか鬼だな。

 貨幣価値がなんとなく分かってきたらビックリ案件だ。

 商人を角に追い詰めて金属鎧の俺をディフェンスに置いた布陣だった。

 あの商人さんよほど大事な商談だったんだろう、最後は涙目だった。


 「なんか、今日はバザーで買い物だって行ってたぞ? アントン連れて」

 「なんでアントンさん?」

 「さあ」

 どうせタカるつもりだろ。

 「で? どうしたんだクロイツ」

 「姐さん、確か昨日『そろそろダンジョン行きた━(゜∀゜)━!!い』って言ってたから知らせようと」

 まあ、『私、ショックーぅ』とか言って飯奢らせようとするのが関の山だろ。

 と思ったら酒場のドアをバーンと開けて我がパーティーの姫…じゃなかったジェシーが飛び出して来た。後ろにアントンも続く。


 「やった、やった! 大チャンス!」

 何がだよ。

 「あれ、誰も喰いつかない? ジェシーちょっとショックなんですけど」

 「ああ、悪い悪い、続けて話すのかと」

 反応ないと死ぬ病気なの?

 「あのね、これこれ! じゃーん!」と俺の顔の前に広げて見せる。

 羊皮紙に書かれた文字。近すぎて読めねえっての。

 「なにこれ?」

 「ダンジョン入坑許可証よ」

 「残念、ダンジョンは今日から立ち入り禁止になりました」

 俺は掌をひらひらさせる。

 「ところが! まだその通知が役所からダンジョンの管理事務所に届いてないの!」

 「は? どういうこと?」

 「武司君、役所は朝9時からでしょ?」

 「まあな」

 そうなのか、現実世界と一緒だな。

 「今は朝の8時45分!」

 「で?」

 「なんと! 閉まる前に許可証を貰ってきました! さあ出発よ!」

 腕に嵌めたお洒落な魔導時計で確認する。

 「あれ? どうしたのその時計」

 時計なんて貴族がするもんだぞ? お前には立派な腹時計があるじゃねえか。結構優秀だぞその腹時計。

 「あのね、アントンさんに買ってもらっちゃったw」

 「はあ?」

 「いくらすんのその時計!」

 「それがさー、ちょっと傷があるっていうからめっちゃ値切って3ゴルド!」

 3ゴルドってお前、最近の稼ぎ全部じゃねえか?

 「あのーアントンさん? こいつに何か脅された?」

 「失礼ね、昨日、アントンさん毒で死にかけたでしょ?」

 タゲなすりつけたお前のせいでな。

 「私が毒消し持ってたから助かった! って、お礼だって! もうアントンさんそんなことしなくても良いのにーって言ったんだけど、気持ちだって、あは❤」

 楊さん、楊さん、ちょっと! 人格者の楊さんがしちゃいけない顔してるっス。

 つうかマッチポンプじゃねえか、お前がタゲなすって、アントン毒喰らって、お前が直してただろ?


 無言で照れるアントン。

 いや気が付いて? 幸せってさ、その女以外にも見出せるよ?


 「で、前に持ってた時計どうすんの?」

 「え?私時計なんて…」

 「腹時計、結構優秀じゃん、ぴったり12時の鐘でおなかすいたって…」

 「あ?」

 「あ、すみません失言でした」

 んなんだからクロイツに姐さん言われるんだよ。


 「で、話し戻すとさ、今から出発! わかったわね?クロイツ、タムラさん起こして!40秒で支度させな!」

 展開が急すぎて有無を言わせない。お金かかると怖いこの人。

 「はい姐さん!」

 なんか天空のお宝探す女船長みたいだぞ? 婆あ(ばばあ)の。

 

 「おっそーい!」

 朝から優雅にモーニングして、楊さんとアメフトの話とかして、のんびりしてたのに、今はランニングさせられている。

 君たち、皮鎧に毛が生えた感じだけど、俺、金属鎧にタワーシールド持ってるんですが?

 相変わらず武器迄手が回らない。

 一番、しんどそうなのタムラさんだ。

 CON値一番低いもんな。

 あれじゃあ、HPの補正もないからHP20程度なんだ。

 俺なんか、自慢じゃないがCON値の初期値MAXだ。

 ※ここで武司君は何か重要な事を見逃しています。


 ああ、CON値以上に頑張るとHP下がるんだな。

 タムラさんは横腹を抑え、髪が汗でおでこに貼りついて、本人が気にしてる後退した生え際をあらわにしちゃってる。

 「早く! ねえ、ダンジョンしまっちゃう!」

 「ひい、はあ、はああああ、ゼイゼイ、ヒョット、マッレ、モウムリ!」

 「アアアアアアアアアアッ、ヒイ、ヒ」

 なんかいかがわしい(道徳上よくない)ゲームのセリフみたいだぞタムラさん。

 「ダンジョンはまだまだ! こんなもんじゃないわよ!」

 鬼か? ジェシーお前、ダンジョン入った事すらねえのに。

 「もう9時過ぎてんじゃね?」

 「あと10分!」

 「その時計、もう壊れてない? さっき9時の鐘なったよ? 姐さん」

 「役所が来るまでが勝負! 諦めたらそこで試合終了だよ!」

 いや、タムラさんHPゲージ、着く前からオレンジなんだけど?

 諦める前にタムラさんの人生、試合終了だよ! 

 「まずはダンジョンに入る! それが大事! はいイッチニ、イッチニ!」

 コイツ、体育教師になったら真っ先に熱中症の子出すタイプだ。

 

 「ひいいい、もう。らめえええ」

  なんのプレイ?

 「モウムリ、モウムリ、ヒンジャウ、ヒンジャウ!」

 ほら、タムラさん、呂律回ってないじゃん?

 仕方なく、タムラさんを背負って走る。

 「ジェシー先に行け! お前が許可証持ってんだろ?」

 結構先に居るジェシーに向かって叫ぶ。

 「あのねー、ぱーてぃーりーだーが届けだすのっ!」

 「お前でいいじゃん!」

 「もう書いちゃったの! ってか私、字が書けない!」

 「いや、今、書いちゃったって言ったじゃん!」

 「アントンが書いてくれたのっ!」

 「クロイツ連れてけ! あいつまだ元気だ」

 「武司君、おれも字が書けない」

 中世ファンタジー識字率っつーの低っ!

 「俺はタムラさん背負ってるしな」

 「そのまま連れてきて!」

 え?マジ? 流石の俺もこの上り坂を人ひとり背負って走ったら死んじゃうんじゃ?

 「武司君、HP50000あるんだから疲れても死なないでしょ?」

 はあああ?

 「そうなん? やっぱ武司君カッケー!」

 ええい、しゃあねえな!

 「おう! 任せとけ! うりゃあああああ」

 もつかな俺のCON値。

 なんか横にバーが出て減り始めたけど?

 タクシーに乗った時の料金メータみたいなの。

 あのバーがなくなったら料金上がるくらいの感覚で俺死ぬの?

 「うりゃあああああ、バーがなくなる前に走り切る!」

 「なんすかそれ?カッケー」

 お前たちには俺のステータスバー(命の灯)見えないんだったな。

 

 震えるハート、燃え尽きそう。

 「どおりゃああああああああ」

 走っても死ぬ、ダメージを受けても死ぬ、下手すりゃ階段から落ちても死ぬんだぞ? 

 命が輝いてる。

 ライスボール最終戦の最終クオーター以上に興奮してる。

 生きてる実感。

 俺、生きてた。

 CON値の横に出現したステータスバー(命の灯)がゼロになる前に走り切った。

 俺はやり切った男の顔をしていた。

 なんかスポーツドリンクのCMみたいにさわやか笑顔でタムラさんを降ろした。

 「ふう、これで今日のミッション終了だな?」

 「何言ってんの? 探索の成果を出さないと明日からパーティー救出の名目で潜れないじゃん?」

 鬼だこの女。

 

 ダンジョン攻略の入坑申請を終わらせてダンジョンに入る。

 楊さんからレクチャーを受けて攻略開始だった。


 タムラ  /戦士  男 HP 20  トルコ人っぽい?カタコト

 ジェシー /戦士  女 HP120  アバズレを隠し持ったサークル姫

 ヤン   /戦士  男 HP145  人格者で物知り

 クロイツ /戦士  男 HP 56  人懐こい 

 アントン /戦士  男 HP120  寡黙 やさしい

 タケシクン/重戦士 男 HP 1  PT期待の転生者、でもHP1

 

 タムラ  スキル:会計:1 人望:1 片手剣:2 料理:4 

 ジェシー スキル;交渉:3 人望:3 片手剣:1 藁竹細工:2

 楊    スキル:博学:3 鑑定:2 片手剣:3 

 クロイツ スキル:敏捷:2 片手剣:3 

 アントン スキル:片手剣:4 攻撃:1

 武司君  スキル:盾:15 頑強:2 カウンター:4 

          ダメージ軽減:40%(四捨五入)



 最近知ったんだか、頑強ってスキルは5%のダメージカットがある。

 しかも端数切り捨て! という事は1ダメージの攻撃は0.95になるので

 切り捨てられてダメージゼロになるって事だ。

 女神のお姉さんありがとう!(今回も算数教室してくれた)

 おおおおおお、生きやすくなった!

 義務教育大事だよなああああ。


 盾スキルは最初から高いのが救いだな。

 盾はタイミングさえ合えば攻撃を無効化できる。

 タイミングが狂っても、ダメージカットがある。※死にます。

 取り回しづらいがタワーシールドは俺の筋力値では余裕だ。

 

 という事は、金属鎧にタワーシールドの俺、1レべモンスターなら無敵じゃん? 

 モンスターの行動は今のところ読みやすい。

 攻撃に入る前に予備動作があるからだ。

 元ラインバッカーなめんな?

 

 「えーと今からダンジョン潜りますがー」と役人が説明を始める。

 なんか遊園地のアトラクションのお姉さんみたい。

 「くれぐれも罠、特に落とし穴に注意してください」

 「せんせー、なんでですか?」 

 「落とし穴自体のダメージは旨く着地したらゼロなんですが、下の階層に降りますので注意してください」

 「なお初心者ダンジョンはオンラインマニュアルの攻略のしおりに書いてありますので転生者がいる場合はそちらをご覧ください」

 

 ダメージゼロか幸先良いね。

 このダンジョン、楊さんに聞いたら1層はレベル1モンスターだけって言うし、罠もスリットアローって、穴さえ見つければ盾が弾いてくれる。

 あとは落とし穴なんだけど、俺、未だにマニュアル見てないんだよな。

 転生者みんなスマホ持ってるの常識なの?

 つか、スマホ持ち込めるの?


 「武司君、落とし穴の位置わかる?」

 クロイツ、余計なことを!

 「あ、うん、まあ?」

 「ワタシ、勇気ダシテ誘ッテ良カッタ!」

 「まあ、こっちこそ、一人でだったら盾すら新調できなかったっスから」

 「タケシクンサン! ウウウウウっ」

 「ってタムラさん泣かないで、鼻水出てる、ほら」

 「私、武司君と一緒でよかったわぁ アリガトね?」

 あの巨乳、巨乳、巨乳! 楊さんとアントンさんがこっち見てる!

 俺、なんつうーか初めては黒髪で清楚そうな年下の女の子がいいんだよ。

 こっちではそうそう居ないと思う…って。

 は?

 女神じゃん?

 女神様じゃん?

 黒髪美少女、黙ってれば清楚そう。

 うわー見た目は超絶好み何だけどなあ。

 中身ヤンキーだからなー。

 みっともない所見せちまったしなあ、しかも何回も。

 でも、なんかあの声で叱られるの癖になるっていうかー。

 あれ、俺、結構まんざらでもない?


 「ちょっと武司君聞いてる?」

 巨乳が巨乳を腕に押し付けてくる。

 「え? あ、はい」

 「斥候というか、モンスター探して、安全地帯に連れて来る役のこと!」

 「うん」

 「いいかな?」

 「いいんじゃないか?」

 俺、結構胸は無いほうが好きなんだよなー。

 いやロリコンではない、ロリコンではないぞ?

 スレンダー美人が好きなの!

 自分がゴリマッチョなので自分にはない部分に惹かれるんだよね結局。

 「じゃあ、武司君ん、おねがいね!」

 「あれ? うん」

 気が付くとダンジョンの大回廊という場所の横に陣取っていた。

 「武司君がタゲ取って戻ってきて、そのまま盾役して全員攻撃」

 「あう?ん?」

 「さっき言ってたじゃない」

 聞いてないよ?

 ※武司君は説明の時、巨乳と貧乳のこと考えていて上の空でした。

 「言ったじゃない、もうしっかりしてよね武司君」

 「お、おう…。 じゃあ行ってくる、蝙蝠飛んでるけどいいか?」

 「武司君さん! ここの蝙蝠はアクティブだから近くまで行けば勝手に絡んでくる」

 楊さん博学すぎんでしょw

 「おう」

 「遠くにいる奴は…って武司君、飛び道具無いんだよね」とクロイツ。

 お前らもない。

 「ま、アメフトで鍛えたこの足、見せてやんぜ!」

 「ちょっと大変だけど走って連れてきて、兄貴!」頼れる兄貴に昇格した。

 「まあ強靭値高いからな、いくらでも走れるぜ?」

 命の灯が燃え尽きるまでなら。

 「かっけー、さすが兄貴!」

 「オネガイシマス、タケシクンサン!」

 「おう、任しとけ!」

 

 近寄る、タゲとる、走って戻る。

 近寄る、タゲとる、走って戻る。

 近寄る、タゲとる、走って戻る。


 「繰り返してくと走りっぱなしじゃんコレ?」

 蝙蝠弱すぎる。

 「経験値5ばっかじゃん?」

 「みんなあと経験値どのぐらいです?」

 「私、アト700」

 「ワシも」

 「オレも」

 「私もー!」

 「まあみんな同じですか」

 「武司君戻ってきたら狩場変えましょうか?」

 「賛成!」×4


 ひい、はあ、すげえ、斥候の人、こんなに走るの?

 あと、コツがわかってきた。

 とどめの連携に入ったらタゲを奪わず釣りに行く。

 絡まれて戻ってくる頃に倒し終わってる。

 すげえ、命の灯燃やしてる。

 おれ、疲労ダメージで死ぬのでは?

 「ひいはあ、もうちょっと休憩すっか?」

 CON値のメーター(命の灯)回復しないと

 「あ、兄貴、お疲れっした!」

 「おう! どうだ俺の釣り役」

 「兄貴、足速いっすねー」

 「40ヤード走4秒2だからな」

 「よくわかんねーけどカッケー!」

 蝙蝠に追いつかれて背後攻撃だけは避けないと死ぬしな。

 「さっすが武司君!」

 去れ巨乳!お前、俺の居場所クラッシュさせんな。

 「ジャア、タケシクンサン戻ッテキマシタシ!」

 「そうですね、行きましょうか」

 「ん?」

 「二階層ですよ」

 聞いてないよ?

 ※武司君には言ってない。


 「初日に二階層到達ってどう!? 私たちスゴクない? ねー武司君スゴクない?」

 「あー、まあそうだな」

 よくわからないけど。

 「で、作戦は?」

 「まず、安全地帯見つけるまで地図作らなきゃなりませんね」

 「こっから落とし穴あるんだよね?兄貴」

 「罠も出てくるって言ってたわ」

 そういや言ってたな。

 「どんな罠があるの?楊さん」

 「私が調べた範囲ではストーンブラスト、まあ石礫ですね、これがダメージ50程度」

 それ、俺、50回死ぬ計算なんじゃ?

 「これは武司君さんがタワーシールドで防げます」

 俺、爆弾処理班みたいなことになってる?

 「あとは、アロースリット、横から矢が飛んできます。こちらはダメージ20程度ですね、そのかわり防御無視攻撃ですから、タワーシールドで回避できれば大丈夫。プレートメイルは貫通しますから注意です」

 あ、タムラさん死ぬ奴じゃん。

 「あとは、毒ガスですね、10秒ごとに最大HPの5%端数切捨て」

 あ、これは俺、唯一自信ある奴だ。端数切捨てなら一生毒ステータスでも死なない、…まあ気分的に嫌だけど。

 「兄貴、ダンジョンでは無敵じゃん?」

 ホントはスカウトって奴が罠探して、罠外すか、罠のスイッチ避けるんじゃね? 罠に引っかかる前提で進んでるよね?

 「まあ、任せろ!」

 考えても仕方ねえか、無事だっていうんだから。

 シュ!

 「ん?」

 「ああ、アロースリットですよ武司君さん」

 楊さん結構サラッと言いましたね?

 「なんか俺の鎧穴開いてるんですが?」

 「防御貫通ですからね、気を付けてください」

 「聞いてないよ?」

 ※言ってました。

 「数ミリずれてたら死んでたぞ?」

 「兄貴、兄貴は20ダメぐらいじゃ死なないって」クロイツがドンマイな感じで肩を叩く。

 お前、知らないだろうが20回死ぬダメージだって。まあ可愛いから許す。

 「まあでも、金属鎧の修理代もバカになりませんし気を付けていきましょう」と楊さんがフォローしてくれた。

 え? まだ金かかんの?

 盾の買い替えで毎回スカンピンなんだけど?

 宿代+メシ代+盾買い替え。

 贅沢覚えたわけじゃないけど、この身体燃費悪くて、あとホントは筋肉量落としたくないんで、1日5,6回の低カロリー高たんぱく食喰いたい。

 でも肉高けぇんだよな。

 「できれば、罠見つけて欲しいんだけど、右か左かだけでもいいから」

 「あーでも私ぃー、目悪いしー」

 巨乳、お前バザーで遠くからお買い得品見つけるの得意だよな?

 「オレもちょっと…兄貴ごめん」

 まあ、クロイツはいい、弟みたいで可愛いから

 「ワタシガヤリマショウカ?」

 「あ、いえタムラさんは後ろで警戒お願いします」

 命大事に、タムラさん即死ですから。

 「じゃあワシが行こう」

 結局、静かに頼れる男、アントンさんが先に進んでアロースリットの穴だけでも見つけるk

 「アントーーーーーン!」

 いきなり罠に引っかかるアントン。

 「ダメージ100って情報と違いうじゃないっスか?」

 「覗き込んだ時に頭部に刺さりましたのでクリティカルヒットって奴です」

 それ大丈夫なの? 頭だよ?

 「すぐに治療を!」楊さんがアントンを脇に寄せる。

 「ってヒーラーつうか僧侶居ないじゃん! 兄貴どうしよう!」

 クロイツがとりあえず止血用に布を出す。それ汗拭いてた奴じゃ?

 そんなこと構ってられない。いきなり大ピンチである。

 「まずいですね、流血で継続ダメージが」楊さんが布で抑えて止血する。矢は頭に刺さったままだ。

 「誰か救急車!あなたはAEDを探して、大丈夫ですかー?」

 「なにやってんの兄貴!?」

 「救急救命の資格持ってて…前世で」

 AEDってなんだよ、ねーよ。

 つかアントン虫の息なんだけど?

 「じゃあ、どうやって治療を?」

 「各自薬草を持ってますから、アントンのバックパック探してください」

 うわあ、怪我すっと自己責任なのか。

 だからあの巨乳守銭奴、斥候嫌がったんだな女狐め。

 「大丈夫デスカ?」

 「あれ?アントンさん薬草は? どこにも無いっスよ楊さん!」

 「持ってないの? しょうがないわね私が余分に持ってるからね安心してアントン!」

 お前に貢いで薬草買えなかったんですよね?

 3ゴルドの時計あったら低級ポーションくらい何本も買えますよね?

 「ありがとう、ジェシー、命の恩人だ」

 「気にしないでアントン、今は傷の手当てが先っ!」

 薬草は即効性がないため取り合えず小休止。

 HPがある程度回復したら矢を抜き、火酒で消毒してまた薬草。

 現代医学からするとめちゃくちゃ乱暴な処置だな。

 アントン、大丈夫か?

 「アロースリットは覗かない・アロースリットは覗かない」

 念仏のように繰り替えずアントン。強靭なアントンにもトラウマレベルの災害である。

 手持ちの薬草を全て使い、アントンは回復していった。

 しかし、薬草すげえな。病院要らないのでは?

 薬草:HP10~20回復(CON値補正あり)価格1シルバ。

 「念のため、罠があった場所は地図に書いておきましょう」

 「薬草スキルあればもっと治るんだけど、ごめんねアントン」

 巨乳、それ計算か?

 膝枕、優しい声かけ、下手すると勘違いしてストーカー作っちゃうぞこの魔性め。

 しかしゲームだとあたりまえだけど現実でここまで治るのエグいな。

 「で、どうする? 薬草使い切ったから帰るか?」

 「稼ぎゼロだと明日から厳しいわね」

 暗に帰りたくないって言ってる?

 「そうですね、実績もまだですし最低限このエリア探索しないと」

 楊さんが考え込む。

 「あのー、実績ってどんくらい稼げばいいっスか?」

 「二階層のエリアボスですね」さらっと言うなあ楊さん。

 ってか俺、聞いてないよ?

 ※言ってません。


 「エリアボスって薬草なくて勝てるの?」

 「通常のパーティーだと3レベル推奨ですが、転生者の強力なタンクが我々のパーティーに居ますから楽勝かと」

 何それ、町周辺の弱めエリアボスすら苦戦したんっスよ?

 話によると女王蜂よりもまわりに護衛がポップせず楽勝らしい。


 「いざとなったらヘイトボルケーノで粉砕ですよね兄貴?」

 いやいやいやあれスキルちゃうから!

 必死にスキル使ったように見せただけだから。

 「あ、でもー武司君、使うときは事前に言ってね、あれ私らも死ぬから」と思い出してクスクスわらう女狐。

 タワーシールドを使った竜巻のようなアタック。

 敵味方問わず範囲攻撃である。

 「じゃあモンスターの攻撃パターンから打ち合わせしましょう」

 楊さん、あんた俺の命綱だよ、死が互いを分かつまで一緒にいよう?

 

 道中はモンスターを倒し前に進む、モンスターを倒し前に進む。

 アメフトのようなもんだった。違うのはずっと俺たちのターン。

 接敵、タゲとりウオークライからのオフェンス、アタッカーで取り囲む。

 接敵、タゲとりウオークライからのオフェンス、アタッカーで取り囲む。

 まあ繰り返して前進する。

 しかし、このモンスター共ってどこから生まれるんだろう。

 謎のシステムである。 ダンジョンに生態系とかあるのだろうか?

 「よーし一気に40ヤード前進!、安全地帯確保!」

 「罠警戒!」

 「周囲にスリットなし!」

 いい感じだ。

 アメフトと違って作戦が少ないのがいい。

 「あのドアまで敵がポップしないといいけど、兄貴行けそう?」

 「誰にモノ言ってる?」

 親指を立てると、ぱあっと笑顔になるクロイツ。

 コイツホントに可愛いな。

 「さすが兄貴かっけー!」

 「よせやい」

 俺は左右通路の安全を確認、盾をかざして一方にディフェンスラインを構築しハンドサインで合図をした。その後ろをパーティーが移動する。

 横からの不意打ちを避けるためだ。

 十字を通過後、俺は再び前列に戻って警戒。

 「あのドアってか扉、結構立派だよね?アレっスか?楊さん」

 「あれが二階層のボス部屋で間違いなさそうです」

 「階層ボスの部屋前は安全地帯」

 「小休止しましょ?私お腹すいたー!もうお昼だよね?あ、やっぱり12時だ」

 お前今、時計見る前に時間解っただろ巨乳。

 アントンさんに謝れ?

 「アントン、傷平気? 私、ちゃんと治療できてたかな?」

 「ワシは大丈夫、ふふジェシーは看護婦並みだのう」

 あの薬草あれば医者とか看護婦要らなくね?

 「腹ごしらえしたら、エリアボスに挑みましょう、不確定名:這いよる巨大芋虫 正式名:ジャイアント・エビル・クロウラー」

 うお、強そう。

 「特殊攻撃は麻痺、複数回繰り出される麻痺攻撃のあと防御無視攻撃が来ます」

 「え?」

 麻痺ったら即死じゃん?

 急速に帰りたくなってきたが、もう後戻りは出来なさそうだと武司は諦めた。

 「まあ、ごちゃごちゃ考えても始まらねえ、死ぬときゃ死ぬし怖がってると死ぬ、死中に活ってえ言葉もあるしな!」

 「おう!」×5

 「おっしゃ行くぜ!」


 武司の本当の戦いは本当にこれからだった。

 

 

ついに二階層エリアボスの部屋まで来た武司達。

アリアボスは複数回麻痺攻撃のあと防御無視攻撃を繰り出す強敵だった。

麻痺=即死の死のコンボに果たして武司は耐えられるか?

来週も武司君と共に地獄に付き合ってもらおう!

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