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(5)盾なし勇者のやりなおし? っつか俺の生命線は盾だった

生命線であるタワーシールドを失った武司。

街でタワーシールドを探すがその値段は金貨50枚。

50ゴルドだった。

お金が圧倒的に足りない武司は女神を呼び出してそうだんするのだった。

(5)盾なし勇者のやりなおし? っつか俺の生命線は盾だった


 なんだかんだで最初の冒険は無事に帰って来られた。

 知らないうちにレアモンスターに挑んでおり、エリアボスにまで襲われた。

 『HP1』の俺が生きているのが不思議だったが、それもこれも全部タワーシールドという俺の命綱のお陰だった。


 「ロイヤルゼリーがたったの銀貨100枚ですって?」

 ジェシーは買い取り業者の座るテーブルをバンバン叩いた。

 「最近、かなり重要な神託(大型アップデート)あったでしょ?」

 「うんまあ、あったのかな? 私、駆け出しだし、知らないけど」

 「まあ、あったのね、それで新規冒険者が増えて、材料が品薄になってきたからモンスターの強さとアイテムドロップ率が変更されたの」

 「もっとわかりやすく言ってくれない?」

 ジェシーは腰に手をあてて鼻息荒く問い詰める。

 「要するに、蜂型モンスターがいっぱい出てきて、そんかし弱くなって、アイテムばんばん落とすようになったわけ」

 「それと、これと何か関係が?」

 「あー、需要と供給って、お嬢ちゃん、だれか仲間で頭いい人連れてきて?その人に説明するから、その人から聞いて?」

 楊さんに丸投げされそうだ。

 俺もよくわからん。

 「で、まあそういうわけで今価格が崩壊…ってわかる?」

 ふるふると首を振るジェシー。

 「要するに安くなったの!」

 と困り顔の商人。

 「んまあ、仮にその『価格ほうかい』ってのが起きても銀貨100枚は安すぎない?」

 「あのね、人の話聞いてた?」

 「聞いてたわよ?」

 「じゃあ、わかるよね?」

 「わかんない」

 「パーティーメンバーでだれか頭いい人いない?」

 「ワタシが納得しなければ誰に話しても同じでしょ?」

 「いやあ、おじさん午後に商談いかなきゃなんだよね」

 「だーかーらー、いつも900枚で売れるものが100っておかしいでしょ!」

 「いや、ホント今はこの価格なんだよ」

 「うちら、6人いるの!」

 それがどうした?

 「割り切れないじゃない?」

 「えっと、買取は三本だよね?」

 「それがどうしたの?」

 「三本あったら割り切れるでしょう?」

 「一つ100だと割り切れないわよね?」

  まあ確かに。算数が弱い俺にもわかる。

 「それをいくつ持ってきても割り切れないのは変わんないでしょ?」

 ※ジェシーも算数が苦手です。

 「あのね、冒険者になったら算数くらいはマスターしないと…」

 「は?私をバカにしてるわけ?」

 「いやあ…そんなつもりはないけど、まいったな?」

 「だからー、ちゃっちゃと割り切れる金額でもっと高く買い取って!」

 「じゃあしょうがない、銀貨102枚!それでいいだろ?」

 「そんな半端な数字、6で割り切れるわけないでしょ?」

 「そうだそうだオヤジ!」と横から俺。

 割り算の暗算とか無理だ。

 ジェシーを応援するぐらいが俺にできる関の山であろう。

 「えっとーそこから説明するの? お嬢ちゃんねー」

 商人は疲労困憊だ。

 「私はね、そんな金額はヤダって言ってるの、納得できる答えを聞いてるの!」

 「そんな無茶な…」

 


 結局粘りに粘って買取価格銀貨120枚にしてもらった。

 儲けは出ないが損はしない、商人からすると時間だけが無駄だった取引だった。

 ※薄利多売の人を値切るのはやまめしょう。


 とらぬ狸の皮算用。

 末端価格ざっと銀貨3000枚になる筈だった。

 金貨に直すと300枚くらい。1ゴルド100シルバだから

 いや30枚か?

 どちらにせよ大金持ちである。

 それが銀貨360枚。

 羽は買取してくれなかったが大都市の錬金術ギルドに持って行けば少しは金になるだろうとの事だ。

 割り算の出来ないジェシーは銀貨の分配の際、トランプを配る要領で分配した。

 まあ一人当たり、ざっと50枚以上にはなるだろう。

 結局、俺のところに来た銀貨は65枚だった。

 壊れた盾のカンパだそうだ。

 盾の相場はわからんが、見たことない大金が転がり込む。

 「おおおお、銀貨65枚!」一生は遊んで暮らせないが3か月はいけそうだ。

 凱旋だ!打ち上げだ!と酒場で大騒ぎした俺たちは銀貨2枚という豪遊をした。

 俺の財布には残り63シルバ。

 アスリートの頃はあまり酒に酔ったことがなかったが、この世界の身体では二日酔いになった。

 まあ、あれだけ飲めばなぁ。

 昨日の酒量を思い出して気持ち悪くなる。

 まあ、井戸水飲んで、落ち付たら盾を買いに行こう。

 武器もあると良いな。


 「それで? なぜカスタマーセンターに来るんですか? 武司君?」

 呆れた顔で女神が答える。

 「えっと、盾が不良品なので」

 「盾は武司君、君のお父さんが買ったものなのでざっと30年ぐらい使用されています。弊社の責任ではありませんのでご期待に沿えず大変申し訳ありません」

 ニッコリ笑う黒髪の美少女女神。

 「今日はあれですね、なんか丁寧ですね?」こっちも丁寧に話してしまうから不思議である。

 美少女女神がコイコイとジェスチャーして耳元でささやいた。

 「勤務態度が悪いって注意されたの!」

 「はあ、それは災難っスね」

 「貴方のせいですよね? 武司君」

 「あ、武司呼びは続けてくれるんっスね?」

 「転生契約時の特記事項ですので」

 「あーそういえば…。あ、拗ねたように言うのはどうしたんですか?」

 「もうよい、とお客様の都合でキャンセルされましたよね?」

 「言ってない」

 「言いました」

 「言ってないっス」

 「言いました」

 「そんなことで無効になるんっスか? 神の信託銀行」

 「弊社は銀行業務を行っていません」

 「たとえっつーかギャグっつーっか、親父ギャグに冷たいなー」

 ツンとする女神様に頑張って交渉する。

 「でも、俺が獲得した大事な約束ですよね」

 もうアレやらないなら他のに替えてもらいたい、ってか替えて欲しい。

 女神はふうとため息をつき、ステータス画面、メニューと小気味良くタイピングすると現れた録音再生ボタン はい/いいえ を押した。

 「あー、確かに何回も『もうええちゅうんじゃ』とかいろいろ言ってる」

 「弊社としても再三の…」

 「わかった、わかりました!」

 「お判りいただけましたか? では問題解決のボタンを」

 「えっと、ちょっと待ったーーーーッ!」

 「まだ何か?」

 「危うく問題解決のボタン押すところだったでしょうに!」

 「問題、解決しましたよね? 2,拗ねたように名前を呼ぶキャンセル」

 「いやいやいやいや、思い出して? 思いだ・し・て!」

 「はて?」

 「しらばっくれないで下さいよ女神様! 盾の事ですよ!」

 「それは大変失礼いたしました、それではご要望を」

 わざとやってない?

 「だから、俺がこの職業選んだ時に、初期装備ついてたでしょう?」

 「確かに付いてましたね」

 「それが不良品だったの」

 「初期装備の盾が不良品でございますね?お間違いありませんか?」

 「そうっ…っス」

 「ご購入日はいつでございますか?」

 「購入日っスか?」

 「はい購入日でございます」

 「あっと、親父が使ってたから買ったの三十年くらい前っスかね?」

 「購入年月日未定、恐らく三十年前っと、かしこまりました」

  そういうと、暫くなにやらどうでも良い音楽が流れ、待たされる。

 「大変お待たせしました」

  と十分ほどで女神さまが戻ってきた。

 「遅いっスよ女神様」

 「武司君様のお問合せ内容1お父様が三十年前に購入した盾が不良品ということでございますね?お間違いないでしょうか」

 「さっきもソレ確認してましたよね?」

 「武司君様が最初に確認されたのは初期装備の盾という内容になっております」

 「もういいです」

 「はい大変失礼いたしました、それではご回答させていただきます」

 と資料を見ながら説明を開始する女神様。

 「この商品、弊社の商品ではなく補償の対象になっておりません、お買い上げの店舗にお問い合わせください」

 「ええ?ってそりゃないでしょ? そう言う設定なんですよね?」

 「設定と申されましても、現実ですので」

 「職業選んだ時に初期装備って書いてありましたよね?」

 「確かに書いてございますが」

 「じゃあ、お宅の商品じゃないですか」

 「誤解しやすい表現で誠に申し訳ございませんが、入手方法がご家族の遺産という事になっておりますので誠に恐れ入りますが弊社の商品ではございません」

 「もう、意地悪」

 「大変申し訳ございませんがご納得いただければ何よりです。本日はご来店ありがとうございました、またのご利用を…」

 「ちょいちょいちょいちょい!待って!あのね、盾が一日で壊れたの!」

 「おお気の毒には存じますが弊社の商品ではありませんので」

 「なんか、クレーム着けてるみたいになってきたけど、一日で壊れる盾を斡旋するって、もう詐欺!ほんと詐欺ですわ!」

 「大抵のお客様は、初期装備を売って、他の装備を買い換えますので」

 「ってかさ、所持金1シルバスタートってどうなんですか?」

 「それもお客様が選択された職業欄に明記しておりますが?」

 カタログを見せて指さす。

 「ぐうう」

 「それではこの問題解決ボタンを押してください」

 「押したら話聞いてくれます?」

 「それはお約束いたしかねます」

 「もう、押すから、押すって、ちょっと相談ぐらい乗ってくださいよー」

 「それでは問題解決ボタンを押してください」

 はい/いいえ

 「んじゃ、まあ」ぽち

 「ご利用ありがとうございました、この通話の内容は弊社の品質向上に役立てさせていただきます」ぴーーーーーーーっ


 「んで? なんです? 相談って」

 「急に態度替わりましたね?」

 「通話録音されてっと上司がうるさいからね」

 「ああ、そういうこと…」

 「んで? 何?」

 「盾が高いんっスよ」

 「いくら?」

 「50ゴルド」 

 「まあ、モノによってはそんくらいするのもあるだろうね」

 「俺、こっち着て日が浅いけど、1シルバあれば宿も泊まれるし飯も食える、結構な額だってわかったっス」

 「まあ、1シルバ100カパだからね、4,5日贅沢しなければ暮らせるんじゃない?」

 「で、さ、盾50ゴルドって天文学的じゃね?って事っすよ」

 「まあ、1ゴルド100シルバだからね」

 「金貨1枚で何日暮らせると思ってるんですか!」

 「割り算してみ?」

 「また割り算ですか? 割り算卑怯っスよ」

 「お前…武司君、大学でてただろ? 結構有名な」

 「まあわりと…中退ですが」

 「割り算ぐらいできるだろ?」

 「いやいやいや、小学校からこっち勉強なんてしてませんって」

 「今の学習要領だと小学校三年生からだろ?」

 「えっと…おぼろげな記憶で確かそれぐらいでしたね」

 「ま、四捨五入もワカンネーくらいだ、割り算も怪しいだろうな」

 「はあ、まあ」

 「お前、割り勘の時どうしてたんだよ、飲みに行くだろ大学生で」

 「あーなんか携帯アプリのなんとかペイってので一発でした」

 「便利な時代だなオイ」

 「まあ。便利っスね」

 「で、割り算出来ないのわかったが」

 「簡単なのはわかるよな?」

 「ってかこっちのお金、ゴルドとかシルバとかカパとか単位が謎過ぎるっスよー」

 「まあ、慣れだよ慣れ」

 「で、まあ紙に書くと、50ゴルドなんだよな?」

 「何がっスか?」

 「盾」

 「ああ、はい」

 「50ゴルドだから5000シルバだよな」

 「はい」

 「では問題、5000シルバで何日暮らせるでしょうか?」

 「1シルバ5日として…」

 「この場合、掛け算の方が早いんじゃね?」

 「4桁の掛け算っすか? なんで掛け算するんすか?謎っス」

 ※武司君は算数が苦手です。

 

 「まあいいから、5×5は?」

 「五五…二十五!」

 「で二十五にゼロ三つ付けてみ?」

 「二万五千!」

 「そう二万五千日も遊んで暮らせるってこと、わかった?」

 「わかりました!」

 「じゃあ私、仕事があるからこれで!」

 「はいありがとうございました、って待って待って!」

 「なに?」

 「全然、問題解決になってない!」

 「まだ何かあるの? 武司君」

 「いやいやいや、盾が買えないっスよ」

 「ああ、そのこと」

 「なんか由緒ある盾で、在庫これしかなくて、即決するなら50ゴルドに負けとくとか言ってきてー、なんかこっちの販路開拓するために是非俺に使って宣伝してくれって、重戦士だけの特別ご奉仕って、すぐ壊れない盾で、多機能で、マジお買い得なんっスよ」

 と俺は興奮気味に耐久度が段違いな事を説明する。

 「ふーん? それなんか騙されてない?」

 「いえ、鑑定したらマジ機能が神でー」

 「ふうん君、あーっと武司君は営業だったでしょ?」

 「はい、1年ぐらいっスけど」

 「モニター商法って知ってる?」

 「いやあ残念ながら」

 「外壁工事とかリフォームの業者来たことある?」

 「うち実家マンションなんっス」

 「まあいいわ、お金がないなら安いのにしときな?」

 「でも、タワーシールド売ってる店がそこしかなくて」

 「中古でいいんじゃない? 中古扱ってる店、さがしてみ?」 

 「俺、中古はちょっと…」

 「君の使ってた盾は?」

 「父のモノで」

 「それ使い古しだよね」

 「あ、そっか」

 「まあ、今の稼ぎだと何年もかかりそうだからな」

 「あ、ありがとうございます!」

 「今度は気軽に呼び出すんじゃねえぞ?」

 「あざーっす!気を付けます!」

 

 相変わらず、おっかねー姐さんだ。

 「そういや何歳なんだろ」

 見た目で言うと18歳位だ。

 黙っているとサラサラ黒髪の清楚な美少女神様なんだが…。

 今度訊いてみよう。 


 その後無事に盾は買えた。

 ちなみに銀貨で100シルバだった。


 ◆次回予告

 武司は新しい盾を手に入れた。死の交錯する地下迷宮で力試しを試みる。

 武司は知らない、地下迷宮には武司を瞬殺する罠があることを。

 来週も武司と共に地獄に付き合ってもらおう。

◆次回予告

 武司は新しい盾を手に入れた。死の交錯する地下迷宮で力試しを試みる。

 武司は知らない、地下迷宮には武司を瞬殺する罠があることを。

 来週も武司と共に地獄に付き合ってもらおう。

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