(3)四捨五入ってなんスか?
四捨五入わからない!ゆとり世代ですか?武司君
(3)四捨五入ってなんスか?
「あのー、タムラさん」
「ハイドウシマシタ?」
「冒険者って死にますよね?」
「マア、死ぬヒトモイマスネ」
「死ぬとどうなるんでしょう?」
「死にマスネー」
質問の意図をくみ取ってほしい。
教会に行って復活させる!とか
仲間のプリーストが高レベルになったら復活させてくれるーとか
なんかあるでしょ? なんか!
「えっと仲間が死んだら?」
「カナシイデスネ」
「えっと僧侶とか」
「アア、オソウシキ? ボウケーンシャノ、オソウシキアマリナイ!」
「それって?」
お、教会で復活させてくれるとか?
あと考えにくいけどあまり死なないとか?
「ノタレ死ンダボウケーンシャ、ツチニ還ル ミンナソノ場デ祈ル!」
「それで?」
「オシマイ」
え?そんだけ? 結構冷たっ!
「街には持って帰らないの?」
「パーリーメンバー死ンダ、コレ危ナイ、ピンチネ!アナタソノ死体、セオッテ逃ゲル、デキマス?」
「んまあ、厳しいよな」
「仲間ノゾンビデレベルアガル!ッテコトワザアリマスカラネ」
「どういう意味だ?」
「外国ノ、コトワザナノデ、ヨクワカリマセン、HAHAHA」
いや笑うとこじゃないでしょ?
「あ、そうだ武司君!」とジェシー。
「今日はよろしくね、私、初めてだから…優しくしてね」
と腕に抱きついてくる。
近い近い近い!
「うんまあ、よろしく」
えっと、この展開、嬉しいんだけど嬉しくないよな、ヤンが睨んでる。
「そういえば僕ら初心者なので、まだスキルが無いんですが武司君はどんなスキル持ってるんですか?」
クロイツは茶髪で人懐こい青年だ。
ムードメーカっぽい、ヤンの視線がアレだったので話題の切り替えが嬉しい。
「そうだなー」ステータスオープン
「ウオークライと…まあそのぐらい」
あっぶねー、みんなのダメージ引き受けるとか詰んでるだろ。
「スキルポイント貯めてるんですか?」
「うんまあ、そんなとこ」
5分前まで俺つえええ、みんな俺についてこい!な状態だったがHP1という現実が俺を責める。
「へえ、なに取るんですか?」
「まあ固定のパーティーが出来たら必要なの取ろうかと思ってる!」
と墓穴掘る。
改めて習得可能な重戦士のスキルを見たが絶望しかなかった。
EXスキルのヘイトボルケーノが一番ヤバかった。
全員の攻撃を引き受けるだぞ!
死ねっていうのか? 使用、即死コンボだろコレ!
「生きた心地しねえ」
「ン?何カ言イマシタ?タケシクンサン」
まあ、気持ちを切り替えていこう。
やっちまったのはしょうがねえ、レベルが上がるとHPは上昇する。
まずはレベル上げ、レベルが上がってから考えよう!
10%も上がるんだから10Lvで倍だろ?
※だれか武司君に算数を教えてあげてください。
そこからが俺のスタートだ!
あとスキルにHP上昇系もある。
確かにあった、ピンチの時はそれ使おう。
躊躇なく、出来るだけ素早く、いや最初から!
スキルポイントを使ってこっそり習得させる。
あと「庇う」だの「ダメージ下げる」だの「素早く前に出る(盾スキル)」だの命がいくつあっても足りない。
「HP40%アップ(端数四捨五入)、パッシブ」をなけなしのポイントを使って獲得する。
コレで当面、何とかなるだろ。
※武司君は四捨五入が良く分かっていません」
「スキルをえらぶ♪っと はい/いいえ の、はい!」
ふう、これで安心。
どれだけ上がったか?ステータスウインドを見る。
HP1
「あるうえええええ?」
「どうした武司君」
HP1
目をこする。
「ドウシタ?」
「出発前に便所行き忘れて」
「しょうがないな、緊張か? そんなはずないよな、俺たちと違ってLv5だし場数が違うんもんな」
場数って「俺、今日初めてだから優しくしてね」なんですけど。
そこのジェシーちゃん、完全に俺を盾替わりにするつもりだ。
俺はタンクだが出来ることと、出来ないことがある。
いいか、俺は攻撃を喰らったら死ぬ。
初戦闘なのでどのぐらいの攻撃がHP1に相当するかわからん。
蚊に刺されたーとか、転んだーとか、一段下に落ちちゃったーとかで死ぬかもしれねえんだぞ?
責任者出てこいコノヤロウ! っつかこの女だ。
「ちょっと小便」と草むらに退避する。
ステータスウインドウ、ボーズボタン、カスタマー。
「おい女神、出てこい、クレームだコノ!」
「お客様との通話は品質向上のため録音させていただきます」
「あああ、あのですね、スキルの不具合なんですが」
録音という言葉にビビる。警察、弁護士、肛門外科が一番嫌いなんだ。
「ええと、お客様…武司君、どのスキルですか?」
「思い出したように名前呼んだな?まあいい」
「それで武司君、どうしました?」
「あのですねえ、HP上昇のスキル取ったんっスがね、スキル上がらんっスよ」
「スーキールーが、上がらない不具合ですね? お調べします」
「女神様、俺、HP1じゃないですか」
「そうなのでございますね? ひっと、ポイント、いちっと」
「あのいちいち復唱してなにしてます?」
「メモです」
「はあ」
神様もメモとるんだ。まあ先輩にもメモとれ、メモ捨てんなって言われたからなあ。
「っていうかその事務的な口調やめません?」
「そうですか、お客様のご要望なら…で、武司君なにが疑問なわけ?」
「だーかーらー、HPが上がらんのですわ!」
「1の4割っていくつなの?」
「1の四割?」
「じゃあ100円の消費税は?」
「…10円?」
「そうです武司君、やれば出来るじゃないですか!」
「えへへ」
「じゃあそれの四倍」
「えーっと、あれ?」
100円の消費性の四倍?
「十円が四個!」
「わかった四十円!」
「それを100で割る!」
「え?」
「え?」
「ああと、紙に書いて、小数点分る?」
「ゼロてん、いくつのやつ!」
「そう、もうできたも同然よ」
「桁を、2個下げるの、わかる?」
「えっと、104円? えへへ当たってますかね?」
「四十の100分の一って言ってるのに、なんで増えるんだこのド低能がああ!」
「うわあああああ」
「だって!」
「だってじゃないでしょう?」
「四十円を百で割ったら0.4円でしょ?」
「うん、うん」
「四捨五入したら?」
「うわあ、それ意味フなんすよ、なんなんっスかその四捨五入」
「そっから、かーっ?」
額に手を当てて悩む。
「あ、五捨六入ならわかるっス」
「なんで?」
「麻雀で使うので知ってるっス」
「それわかってて、なんで四捨五入わからないの?」
「謎っスね?」
「謎じゃねえよ」
「なんか四捨五入って呪文みたいで、意味が解らんとですたい」
「漢字読め?数字の所しか違わねえぞ?」
「ホントだ、漢字で書くと分るっス!」
「はああ、で、理解したか?」
「そこなんンスよ女神様、なんで40%も上がって増えないんっスか?」
「四捨五入わかったんだろ?」
「まあ大体は」
「じゃわかんだろ?」
「えっと、4%なら四捨五入で切り捨てっスよね」
「まあ間違ってないが」
「40%もあるなら四捨五入しないっスよね?」
「だめだコイツ、早く何とかしないと」
「アレ?なんか違うっスか?」
「小数点第一位わかるか?」
「第一位ってのが謎っス」
「そこからか…そっから教えんの?マジ殺すこの客」
「なんか地が出て来ましたっっスね姐さん」
多分、見た目年下なんだが、なんか数学持ち出されると逆らえない。
※算数ですよ武司君
「んまあ、紙に書いてやるから待ってろ」
「はい!」
「ここが小数点第一位、その隣が二位、まあそんだけ知ってりゃあ上等」
「はあ」
「エクセル使えっか?」
「いえ」
「難しすぎたか?社会人1年生」
「ええ、エクセル使えりゃあトラック飛び込まないっスよ」
「ん、まあそうだな」
「大抵、小数点第二までしか使わん」
「そういうもんなんすね」
「そういうもんだ」
「で、1.4を四捨五入してみろ?」
「1になりましたっス」
「そういうこった」
「どういう事で?」
「はあああああ」
「お疲れっスね?」
「お前のせいだよな?お前の! お前のHPはいくつだ?」
「1っス!」
「じゃあ1のHPに40%するといくつだ?」
「1.4っス!」
「四捨五入してみろ糞が」
「イエス・マム! 1っス マム!」
「よろしい」
「いいか脳みそ蛆虫野郎、お前のHPに40%かけても1なんだよ」
「おおおおおお」
「関心すんのはいいけど、お前、レベル上がってもこの計算忘れんなよ?」
「どういう事っスか?」
「レベル10になればHP2になるとかお花畑してんじゃねえだろうな?」
「違うんですか?」
「もっかい説明が必要か?」
「あ、いえなんとなく解りましたっス」
「じゃあ、ここ、解決済みのボタン押してこの問題は終了な?」
「ああああ、っとちょっと待った、えっと俺のHPって増えないんっスか?だってHP100000万ってヤツ、HP200000増えるんですよ?」
「10000万な」
「不公平じゃないっスか」
「なにも不公平ではない、あるのは数式と条件だけだ」
「じゃあ、じゃあ、俺100LvになってもHP1っスか?」
「まあ、可哀想だがそうだな」
「そんな養豚場の豚見て可哀想って言うように言わないでくださいよ」
「現実…直視しろよ?大人だろ?」
「はあ、そんなもんっスかねえ」
「そんなもんだ」
「わかったら解決済み押して、現実に帰れ」
ぽち
「本日はお問合せありがとうございました、この問題は弊社の品質向上のため役立てさせていただきます」
ガチャ
「ふわあああ、頭使ったな」
「結局、あのスキル、スキルポイントどぶに捨てたって事かー無駄なスキルだなー、糞ゲーが!」
とりあえずポーズ解除、ステータス画面終了っと。
「っとすまんすまん、便所長くて!」
「え?もう行ってきたの?」
「早くない?」
「まあ、昔から風呂と便所は早いんだ」
「そんなレベルじゃない気が…」
「まあいいじゃない」
「とりあえず今日はどこ行くの?」
「最初は街の近くでレベル上げが基本っしょ?」
「そうなんだ」
ちょっとホッだよ。
「武司君いるし、ダンジョン行っちゃう?私、ちょっと可愛い装備欲しい!」
この女、俺を殺す気?
「気が早いですよ、我々駆け出し冒険者なんですから」
いい事言う、ヤンさん、俺あんた好き、命の恩人認定入りますよ。
「じゃあ、この辺でポップするリンクしない奴行っとこうか?」
ポップとかリンクとかわからんがまあいい。
「目標、Lv2!」
「そうだな、じゃあ武司君、お願いしますよ!」
「しゃあねえな、クヨクヨすんの柄じゃねえし、一発やりますか!」
「おう!」×5
「みんな俺についてこい!」
「おーう!」×5
「ヨウシ、狩場マデキョウソウデスヨ!」
難しい文章書かないのでめっちゃ捗る。
第四話もお楽しみに。
来週も武司君と共に地獄に付き合ってもらおう!
ちゃららら