(2)初めてのパーリーでメンバー全員1Lv。オレだけLv5で無双しちゃう?しちゃいますか?
ついに異世界に降り立った武司君さん。
片言の外人リーダー「タムラ」さんに誘われて初めてのジューシーポーリーイエイすることに。
ステータスを確認するとみんなHP120がいいとこ。
よおし、平均HP50000の俺が無双してやんぜ!
みんな俺についてこい!
(2)女神様が残したこの世界のマニュアル。
オンラインマニュアルってマジっすか?
俺、スマホ持ってきてねえんだけど?
結局どうなってんの?
異世界にカスタマーセンターとか、QRコード付きのオンラインマニュアルとか。
俺の知らない間に異世界転生業界、こんなんなってんの?
つかスマホ。
スマホなくてマジ詰んでんっスけど?
宮本武司21歳は女神が去った空間で茫然と立ちすくんでいた。
っべー、マジヤベエよこれ。
マニュアルとか、なんかよくわかんねー挨拶っぽいのとか、書いてあるだけで結局さ、スマホ持ってねーとなんもナランチャ?
「あのー 女神様?」
「女神様?」
「なんとか柱の声に似てる女神様?」
「あのー黒髪美少女の女神様?」
「居ますよね?」
「声、聞こえてっしょ?」
「おーい!」
「さっきクレームって言ったら反応したじゃないっスか?」
「あのー、美人の女神様!」
返事がないただの空間の様だ。
「超絶美人で優しくて、いい声のスーパー女神様!ってばよ!」
「本日の業務は全て終了しました」
「いますよね?」
「この音声は自動音声です、弊社の受付時間は平日午前9時から午後16時までとなっております」
「いや、いるでしょー居留守使わないでくださいよー」
「・・・」
「ご不明な点は弊社HPのオンラインマニュアルをご参照ください」
「それでは良い異世界ライフを」
それっきり返答はなかった。
仕方なくステータスを確認する。
メニューには「異世界に行きますか? はい/いいえ」しか出てこない。
まあ、迷わず行けよ、行けばわかるさってオレの尊敬するアントニオ猪木さんも言ってるしな。
元来、頭を使う事は苦手である。
アメフトなんて結構、頭使う競技だとは思うが、日本人離れした体格と練習に裏打ちされた技術。あと『考えるな感じるんだ』と心の師が言ってるのを実践しただけで国際強化選手に抜擢されるような男である。
「まあ悩んでも仕方ない」ぽち
身体が溶けていく。
心地よい。
武司は気が付くと冒険者の酒場にいた。
安物だがちゃんとプレートメイルにタワーシールド、あと武器はないようだが麻のリュックサックを背負ってる。
「いいじゃないか」
異世界転生というより転移か?と思ったら生まれてからこの方の記憶が流れ込んだ。
記憶ってか設定?
貧乏騎士の三男坊。世襲制ではないので俺は騎士の子だが平民。
まあ戦士階級なので多少の身分ではある。
母は他界。兄がいるが今は従騎士として修業中。
俺は自分の食い扶持を求めてこの街に来ている設定だ。
一応、記憶があるがなんとも他人の人生みたいで実感がない。
生まれた時から修行してればなあ。
まあ前世の記憶でなんとかなるでしょ。
「よう、タケシクン!」と馴れ馴れしく話しかけてくる奴がいる。
「オマエ、タケシクンダロ?」
記憶をたどるがお前なんか知らん。
「えーっとどちら様?」
「ワターシ、隣のマチからキマシタ、タムラ云います」
なんで片言?
「えーっとよろしく」
「タケシクンサン、私とボウケンシャパーリー組みまショウ」
えっと、まあそういう事だ。
ここは冒険者が集う酒場。
田舎から出てきた俺はここで冒険者登録をしたばかり。
初心者同士マッチングが行われ俺はこのタムラって外人に誘われてる。
らしい。
えっとタムラさん「ないすとぅーみーちゅー」
国際強化選手時代に覚えた英語力を見ろ!
「はう、あー、ゆー?」
「ア、ハイ、ハジメマシテー、ワタシモゲンキデス」
おおおおおお、通じた、でぃすいずあっぽーぺんってなもんだ。
ウインドウの所に「タムラ・ゴンザブロー・タダツナさんからパーティーのお誘いがあります。 はい/いいえ と表示される。
まあ、ものは試しだ。
「はい」っと。
視界の上にパーティーメンバーが表示される。
タムラ /戦士 男
ジェシー/戦士 女
ヤン /戦士 男
クロイツ/戦士 男
アントン/戦士 男
タケシクン/重戦士 男
「おおおお、よろしくみんな、俺のはじめての冒険だ!」
あれ、なんかおかしいぞ?
違和感を感じる。
賢明な読者は気が付いただろう。
そう
名前がタケシクンなのだ。
俺の名前、タケシクンで登録されてるの?
帳簿を持ったルイージという女主人に尋ねる。
名前は本名で登録するらしい。
偽名の場合はランダムで登録されるがそれでよいか?と聞かれた。
ああああ、そっか、それであの外人、タムラなんだ。
他に偽名で登録してるやつはいるか?と冒険者マッチングの名簿を見せられる。「もりそば」「ぶらじゃー」「きんた〇」「うんこ」「ああああ」
まともなのがない。
タムラさんは当たりの方だ。
誰だこの偽名のシステム組んだ奴。
小学生の倉庫キャラか!
「でタムラさん、俺は何すればいいのかな?」
タムラさんが言うには俺は珍しい重戦士という上位職らしい
一応、上位職なのには感謝する。
まあ、現世でのステータスが高かったからだろう。
俺と同じようにチュートリアル飛ばしちゃう派の人、雑兵とかになりかねないな。
世界の不完全さを感じる。
気を取り直して仲間のステータスを見る。
タムラ /戦士 男
ジェシー/戦士 女
ヤン /戦士 男
クロイツ/戦士 男
アントン/戦士 男
タケシクン/重戦士 男
女の子一人か、サークルクラッシャーにならなければいいが。
ここで初めてのパーリーメンバーとして上級職の俺に恋。
仲間からやっかまれるイベント発生なのか?
と心配になる。
タムラさんが言うには俺はタンク。
あとはアタッカーという役割分担らしい。
要するに俺は殴られまくって耐えてあとはみんなでぶん殴るのだ。
実に清々しい。
それで、俺のステータスは?
と、ウインドウを開く。
「ウオークライ/敵対心を上げる」
「ヘイトボルケーノ/全攻撃を強制的に自分が引き受ける」
終わり/続行
タンクならではのスキルだ。
「で、だ肝心のヒットポイント、耐久値!」
タムラ /戦士 男 HP20
ジェシー/戦士 女 HP120
ヤン /戦士 男 HP145
クロイツ/戦士 男 HP56
アントン/戦士 男 HP120
タケシクン/重戦士 男 HP1
ふうん、やっぱみんな低いんだな。一番あるのあの東洋人っぽヤンか。
それでも145なんだな。
まあ転生者以外はそんなもんか。
「なあ、みんなのステータスさ」
「ナンダイ?タケシクン」
「ヤンが二番目にHP高いだろ?」
「ドウシテワカルノ?」
「いやココにPTステータス画面あるだろ?メニューから見れない?」
「メニュー? ソンナモノ ウチニハナイヨ?」
と険しい顔で言う。
なんか墓地の近くでイタリアンレストランやってる人みたいな声で言う。うっかり厨房に入ると掃除させられそうだ。
突然、ニッコリ笑うと。
「ソウデスカ、アナタ、転生者ってヤツデスカ」
どうやら他人の能力が見えるのは転生者だけらしい。
怪訝になるのも無理はない。
ちなみにステータスウインドも通じない。
転生者の特権、結構あるじゃねえか安心した。
という事は、アイテムボックスもないのか?
俺にはある。
おおおおお、アドバンテージでっか!
「アノ、ワタシノHPみんなにはナイショダヨ?」
「おうおう、わかってるって秘密な」
HP20とは可哀想に。
一般人に毛が生えた程度なんだ、同情するぜ。
「そういや、みんなレベルとかスキルとかどうやってあげるんだ?」
「私が教えよう」とインテリ顔のヤンさんが代わりに教えてくれる。
決して創造主がカタカナ文字を打つのに疲れたわけではない。
レベルは経験値を得て上がる。
まあ、これは一般的だ。 レベル2に上がるには2000経験値が必要だ。
ちなみにゴブリンという最弱モンスターを倒すと5程度貰える。
道は険しい。
自分は?と覗くと5レベルでパーリー最強らしい。
幸先良いぞ。いいじゃないか!
レベルが上がるとランダムでステータスが上がるほかHPが上昇する。
最大HPの約10%が上がるらしい。
HP200の戦士が5レベル上がるとHP300か、スゲエな!
※武司君は算数が苦手です
タムラ /戦士 男 HP20 Lv1
ジェシー/戦士 女 HP120 Lv1
ヤン /戦士 男 HP145 Lv1
クロイツ/戦士 男 HP56 Lv1
アントン/戦士 男 HP120 Lv1
タケシクン/重戦士 男 HP1 Lv5
おおおおお、俺が一番レベル高ぇ!
ま、駆け出しから無双したらつまらんしな。
鼻歌交じりにステータス画面を閉じようとした。
ん?
んんん?
もうお気づきだろうか。
武司君のHPに。
「あるぇええええ?」
「ドウシタンデスカタケシクンさん」
「おう、どうした武司君」
「頼りにしてるぜ武司君さん」
「よろしく、私ジェシー、どうしたの変な声出して」
みんなの握手を受けながら俺は思った。
「俺は生き残ることができるか?」
「ヘイ、武司君、この俺と地獄に付き合ってもらうぜ?」
むせる。
もうお気づきだろうか?
武司君のHPに
タムラ /戦士 男 HP20 Lv1
ジェシー/戦士 女 HP120 Lv1
ヤン /戦士 男 HP145 Lv1
クロイツ/戦士 男 HP56 Lv1
アントン/戦士 男 HP120 Lv1
タケシクン/重戦士 男 HP1 Lv5