意を決してトラックに轢かれ異世界転生しようと思ったがなかなか死ねない
前回投稿、連載中の「嵐を呼ぶお姫」とは違ってめちゃ軽い文体のお話を書いてみました。
頭の悪い脳筋主人公が無い頭を絞って頑張る話です。
まあ、自業自得なんですがね?
第一話 トラックに跳ねられたぐらいで死ねない俺が異世界転生した話
うららかな春の昼下がり。
社会人一年目の俺はすでにやる気を失っていた。
勉強はほとんどせず、スポーツ特待生で過ごした高校~大学。
ソシャゲの影響で『日本刀大好き女子』であった母に幼少から柔道、空手にレスリング、抜刀術までやらされた。
武司ちゃんは運動が出来るんだから、運動しなきゃね?
と中学に入って柔道部、掛け持ちで入っていたラグビー部での成績で偏差値低い私立高校に推薦入学し、大学ではアメフトからスカウトされてこっちも私立大学の特待生として推薦入学。
勉強、何それ美味しいの? レベルでやってこなかった。
大学でも周りには筋肉バカが見事にそろい、九九の七の段が怪しいやつが居たので安心していた。
ベンチプレスで200㎏、走ると100m11秒を少し切る。
ああ、俺はこのままアメフトの社会人チームにでも入ってオリンピック目指すんだろうな…と思っていた。
アメフトがオリンピック競技ではないという事さえ知らない、
どこに出しても恥ずかしいバカだった。
そして迎えた大学三年生の冬。俺は靱帯断裂で選手生命が終了。
今更、勉強するってのもアレだし、卒業論文つうか読書感想文も書けない俺が卒業するのもめんどくさくなり先輩のつてで外回り飛び込み営業っていうブラック会社に就職することになったんだが…。
見た目が怖いのでインターホンを押しただけで不審者扱い。
警察は来るわ、苦情は来るわで町はもう大騒ぎだった。
自分語りが長いって? まあ愚痴ぐらい言わせてくれよ。
社会人の人がこれ聞いてたらわかるだろ?
内勤に回されても三角形の面積の求め方すら怪しいこの俺が役に立つと思いますか?
そうですよね。
役に立ちませんよね?
外回りで使った経費の伝票も出金伝票、入金伝票の区別もつかないんですよ? 部下とか後輩にしたいと思います?
漢字も怪しいんっスよ?
○○交通のフリガナに「こおつう」って書いて銀行から突き返されるバカなんっスよ。
もうトラックに引かれて異世界転生するしかないでしょ?
あ、知ってました? 異世界転生するには社会的にダメだったりブラック企業に勤めてっと確率高いって!
あーこれ俺の持論なんっスけどね。
それでもう、ここいらで異世界転生、俺つえええ!現代のチートで俺無双!
ってのやってみたくて今、トラック待ってるんすよ。
お? 来た来た。
軽トラだけどまあ痛くない方がいいや。
と飛び出してみたが見事に軽トラの方が横転。
運転手さんは俺を跳ねたついでに中央分離帯に乗り上げてしまい軽トラは大破。せっかく速度超過気味のヤベーの狙ったんだけどな。失敗失敗。
翌日
軽トラでは失敗したが今度は最低2tトラックだ。
よっしゃ来い!
さらに翌日
〇野の2t、あれ結構丈夫なんだな。大破しなかったが衝突安全装置ついてやがった。
もっとこう、なんつうの? デカいの狙うっきゃないっしょ?
さらに翌日
駄目だ、10tダンプに跳ねられたのに反射的に受け身とっちゃったよ。
跳ねられたらあれか? 駄目か? 轢く? 轢かれちゃう?
さらに翌日
トレーラーってさ、結構スピード出さないよね。
失敗失敗。
さらに翌日
列車か? 列車に引かれたら確実か?
でもさ、さすがに迷惑かかり過ぎだからやっぱりトラックかな?
列車に轢かれて異世界転生ってどんなのあったっけ?
思いつかないけどあるかも。
あ、思い出した幼女になるやつ。
でも今更女は勘弁だな、俺ノーマルだし。
さらに翌日
というわけで見事に死ねました! ぱちぱちぱち!
やった俺!
やれば出来る子じゃん。
え? 死因? 死因はわからない。
だって死ぬとこ見てないもん。
気が付いたら女神様的な女の子に呼び出されて説教くらってる。
「宮本武司さん、あなたが今どうしてここにいるかわかりますね?」
なんかセーブしないで電源切った時に怒られるヤツっぽい。
「えっとわかりません」
顔は可愛いんだけど怖っ。
「貴方は前世で罪を重ね過ぎました」
「特に悪いことしてませんよ? 酒もたばこも、誘われても大麻もやらなかったし」
「身に覚えはないと?」
「ええまあ」
サラサラの黒髪の美少女が俺を叱り飛ばす。
なんだろ、あの毒使う、なんとか柱のひとみたいな声。
美少女に怒られるの以外に悪くないな。
「聞いてます宮本さん!」
「あ、はい、できれば武司君って呼んでください、ちょっと拗ねた感じで」
中学の時に学級委員長に怒られた時みたい。
あの時、もう!とか怒られたの、結構キタんだよな。
「あなたの願いはそれでいいですか?」
あ、なんか大事なチュートリアルっぽいの聞き逃した?
っべー、ちょっヤベー?
「では武司君、武司君の希望する職業を」
「ああああ、っと何があるんです?」
ムスっとした表情でここから選んでください!とカタログを渡される。
なんとか柱さんの声でムッとされるのいいなあ。
ツンデレっぽい。
「ええと、アークウイザード、アークメイジって頭使うのあれだな」
あ、前衛職乗ってるの後ろか。
「え? 最近、前衛職人気ないの?」
不人気漫画も後ろに載っている。
「暗黒騎士とかカッコ良くない? え、魔法覚えなきゃならないんっスか」女神様に指をさされカタログを見る。
カタログの適正に知力と教養って書いてある。
「えーと武司君? まだですか?」
小一時間迷っている俺に女神様がため息をつく。
「そんな無計画で異世界転生しようと思ってたんですか? あれだけ運送業者さんにご迷惑かけて」
「あーその辺は今スゲエ反省してるっス。でも」
「でも?」
「このカタログ、ホントにアレっスか?」
「なにがです武司君」
「俺に出来る職業、無いんっスけど?」
「ちゃんとよく見ました?」
「端から端まで」
「本当に?」
「本当っス」
「本当の本当に?」
「ホントっスよやだなあ」
黒髪の美少女女神さまはカタログをひったくると凄い後ろのページを開いて指さした」
「アレ? でもそれ転生勇者っぽくないっすよ? 一般人でも出来る奴」
「誰が転生勇者ですか?」
「俺」
「俺?」と可愛い顔で小首をかしげる女神様。
「武司君、ステータスやアイテムの希望の時に言いましたよね?」
「へ? なんか言いましたっけ?」
「1、武司君と呼んでほしい。2、ちょっと拗ねた感じで」
「ちょ、待った、ちょっと待った!」
「なんですか武司君っ!?」
「1は良いけど2! 2は今初めて言いましたよね」
「そうでしたっけ? もう武司君っ!」
「つうか、それ反則じゃないですか?」
「何がですか武司君っ!」
「もういいちゅうねん!」
「武司君は確か東北地方の出身の筈ですが、関西地方の日本語翻訳にシフトします?」
「ああもう、それキャンセルしてちゃんと仕事してくださいよ」
「もう武司君っ! だめですよ我儘は!」
「なんか演技が雑なんっスけど」
「とにかく! 武司君はステータスなど願い事を登録するときにさっきのお願いを登録しちゃたんですから、もう武司君は変更できないんだからねっ!」
「って言われても」
「武司君…人間、あきらめが肝心よ?」
「あれだけ頑張ってトラックに跳ねられて頑張ったご褒美がこれですか?」
「ご褒美はね、自分の心が決めるものですよ武司君」
「あああ、いい事言ったような顔でドヤらんでくださいよ」
「というか、もう私、残業なんで早くしてもらえます? 武司君」
「あ、急に事務的になった」
「別に、この後用事なんて無いんだからね、勘違いしないでよね!?」
「つうか、それ何処にツンデレかかってるんっスか?」
「もう、ちゃっちゃと決めましょうよ」
「じゃあいいです、転生しなくても」
「はあ、転生しないでどうするんですか?」
「日本に帰してください」
がっくりと肩を落としカタログを放る。
「あーダメですね武司君」
「何でですか?」
「お願いを二つ受理してますから、こちらの指定する世界で魔王倒してもらわないと…」
「魔王はいいとしても、雑兵っとか、門番っとか、歩哨とか魔王倒せる気がしないんですけど?」
「契約ですから」
「死んだらどうするんですか?」
「ああーー、残念ですが武司君、弊社では転生後の事故、病気、またはモンスターに殺害された際のアフターサービスは受け付けておりません」
「なんでカスタマーセンターっぽいんですか?」
「カスタマーセンターなので」
「え?」
「異世界転生とか転移っっとか今物凄く流行ってるんですよ」
「はあ、まあそう…っスね」
「なので、神界では女神業務のアウトソーシングを弊社に依頼しまして」
「あーそれで…って女神様じゃないの?」
「まあ女神と言われれば女神かもしれませんね、神界での私の立場は一般市民程度ですが」
「一般市民?」
「神様だけで暮らせないですよね?」
「そうなんスか?」
「誰が神様の世話すると思います? 神様達、全員独立独歩で完全自給型のスローライフします?」
「まあしないっスね」
「なので神界にも私たちのような一般市民…神民がいるのです、わかりましたか武司君」
「じゃあ、私の権限でーとか特別にーとか出来ないんですか?」
「誠に残念ながら弊社の規定では…」
「あのう、説明不十分っててんぷら的にどうなんっスか?」
「コンプライアンスですね? 説明に同意されていますから問題ないかと」
「説明聞いてません」
「あー夢うつつで聞いてましたよ? その都度、確認ボタン押していらっしゃいましたよねお客様、というか武司君」
「マジっすか?」
「マジです武司君」
うあああああああ、やらかした!
せっかくのチャンスをやらかした!
うああああああああ、無理じゃね? 無理無理!
職業「雑兵」アイテム「数打ちの槍」「雑兵の皮鎧」
ってクッソゲーじゃん?
「そういうわけですので、武司君には職業を決めていただきます」
「ステータス、サービスないんっスよね?」
「はい♪」
「じゃあ、自分、筋力マシマシなんでこの重戦士(盾)でいいっス」
比較的マシなのを選ぶ。
「じゃあ、装備は一般的なプレートメイルとタワーシールドでよろしいですね?」
「はい」
目の前の空間にある「承認」ってボタンを押す。
はいはい、確かに押しましたわ、すっげ見覚えある。
「では最後に耐久値を振ってください」
「はい?」
「耐久値を振ってください武司君、もう何回も説明させないでよねっ、ふん!」
「その設定、もういいっスわ。で、振るってなんスカ?」
「テーブルトークRPGしたことないんですか?」
「なんスか其れ? 俺、グランなんとかファンタジーっぽいのしか」
「ああっと、商品名言っちゃだめですよ、規約で禁止されています」
「ああ、すいません」
「まあいいですわ武司君、ステータスウインドウわかります?」
「ああ、はいはい、ソードあー」
「ストップ! 規約違反ですっってば! 気を付けてよね武司君!」
「すいません」
「二本指で優しく、そう撫でるように動かしてね武司君」
「なんかキャラブレますね? お姉さん」
「仕方ないじゃない、演技なんだもん、ふんっバカ武司」
もうええちゅうんじゃ!
「えっと、ここダイスロールって所」
「はあ」
「押して?」
「押すんですか?」
「押すだけ、あとは何もしなくていいのよ? ねえチョットだけおしてみて武司君」
「急に魅惑的な声、何とか柱さん声で誘惑しないでくださいよ」
「まあまあ、ちょっと時間圧してるんで」
「ここ?」
「そうそこ」
「あーちなみに耐久値ってHPの事っスよね?」
「早くして?」
「ちなみに平均どんくらいあるんっスか?」
「1~100000の間でランダムですから、平均すると50000くらいですね」
「インフレしてません?」
「いえいえ。一般人が高くて10くらい、兵士など戦闘に関する人でも100行けばいいかと」
「へえ、かなり優遇されてますね」
「魔王を倒す勇者ですから」
「ですよねー」
「じゃあ一発、ダイスロール逝ってみますか」
「なんか誤字っぽい響きが」
「いいからいいから」
「じゃあ、行くっスよ」
「うんうん、巻きでね、ケツカッチンだから時間的にも」
「いっせえの、って勇気が」
「お前、舐めとんのか武司コラ、ブッコロされてぇか? あん?」
「女神のお姉さん、それ地ですか?」
なんとか柱の声でそれは反則だ。
「いいから押せってんだ、オウ、武司君」
「急に巻き舌って…」
「口で言ってワカンネーカ? オ?」
顔が怖い。
「んじゃまあ、気を取り直して」
「早くしろって言っとんじゃワレェ!」
ガッっと手を持ってボタンを押させる。
「はい、武司君、お疲れ様でした」
「いまのコンプラ的にどうなんっスか?」
マジで。
「で、結局俺の耐久値どのぐらいなんです?」
「これでお手続きはすべて終了しました。本日はご来店ありがとうございました。またのご利用が無い事をお祈り申し上げます」
「あ、っとちょい、ちょい、ちょっと待って! ねえ女神様!」
笑顔とお辞儀と共に空間から消え去る女神様。
「チュートリアル聞いてなかったんで、もう一回聞かせて、俺どうなるの? どうすればいいの? 言葉とか、所持金とかさああああ!」
叫び声は空しく暗闇に吸い込まれる。
「ねえ、ちょっと、マジクレーム入れるぞ!」
その声に反応したのか、女神様の居たあたりの空間がひらく。
「あああああ女神様!」
べっ!
と音がしてその穴から何やら薄い本が落ちてくる。
「異世界マニュアル…?」
摘まみ上げるとペラペラだ。
「えっと?」
中を開くとQRコードと簡単な説明がある。
ああ、オンラインマニュアルね。
と納得したが。
「で、スマホとか持ってきてないんだが?」
ペラペラの冊子を持って俺は茫然と立ちすくんだ。
前回とうって変わってテンプレ的な世界観で書いてみました。
アホっぽい内容なので、頭空っぽにして読んでいただければ幸いです。
ちなみに女神のお姉さんのお名前はまだ決めていません。
リクエストがあればその中から採用します。