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戸は閉じてない

作者: かねこふみよ

 仕事から帰宅すると仏間に行く習慣があった。無事帰宅できたと仏壇に合掌するだけ。取り立てて信仰深いというわけではないが、なんとなく、それこそ習慣になっていた。

 ある晩、いつものように仏間に行こうとすると、隣の納戸の障子戸が開いていた。僕は一人暮らしだ。この平屋建ての一軒屋は広いのだが、僕が建てたわけではない。就職で帰郷しただけのことだ。両親はすでに他界している。ペットもいない。兄弟姉妹もいない。田舎とはいえ昔とは違い外出時には玄関の鍵は閉める。朝、あるいは休みだった昨日、納戸を開けた記憶はない。記憶はないが、開いていたということは僕が開けたのだろう。そう言えば、その日は起床がいつもより一〇分遅くて朝からドタバタしていた。洗顔、昼の弁当の準備や着替え、出社用鞄の中身の確認、布団をたたむなどなど。動線は自室と洗面所と居間とキッチンと玄関だった、はず。だから僕は納戸に近づいてないのだ。けれど、帰った時には戸が開いていた。僕以外にはいないのに。けれど僕しか開けないのだ。僕は障子戸を静かに閉めた。仏間に入った。仏壇の前に正座して合掌をした。いつも通りの行為。ふと見ると、一つ手順が違っていたことに気づいた。過去帳のページをめくってなかったことだ。過去帳をめくり、その日の日付にした。その日は僕が懐いていた祖父の命日だった。



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