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力を持つが故の苦悩

「オリビアさん…もしかして怒ってます?」

「いえ、怒ってません」


 先ほどからこのやり取りを繰り返しているが一向に進展しない。


 部屋に入ったルドルフを待ち受けていたのは明らかに不機嫌になったオリビアだった。


 側から見ればオリビアは無表情な為変化が分かりにくいがルドルフには分かる。


 ルドルフもオリビアから少なからず好意を抱かれている事は分かっていてる。


 それにルドルフもオリビアに同様の気持ちを持っていることも。



 だが今はまだそういうことに積極的にはなれない。


 直球で伝えることが出来れば苦労しないがその辺はルドルフも気恥ずかしくて出来そうもない。

 


 ルドルフは少し遠回りすることにした。



「オリビアさん、僕が昔聞いた物語の話をしてもいいですか?」

「何を突然……」


「別に聞かなくても結構ですよ」

「……」


 どうやら聞いてくれるようだ。


「では……その物語は一流の冒険者を夢見る少年の話なんです。詳細は省きますが紆余曲折を経て少年は強力なスキルに目覚め仲間と苦楽を共にし一流の冒険者と呼ばれるまで成長したんです」


「中々王道な物語ですね」


「そうですね、ですけどこの物語には続きがあるんですよ。少年、いやその時は青年でしたかね、ある能力に目覚めたんです」

「能力ですか?」



「能力と言っていいのかわかりません。どちらかと言えば神からの『ギフト』と言えばより正確かも知れません。何故ならその力はこの世に存在してはいけない力だったからです。まさしく神の如き力とでもいえばいいでしょうか。ですが最初はその青年も仲間の為、国の為、一流の冒険者としてその力を奮いました。最初は皆その成年を褒め称えました。「最強だ、お前より強い奴はいないと」しかしある時から皆青年を避けるようになったんです。何故だか分かりますか?」


「いえ……わかりません」



「怖いんですよ」


「怖い……ですか?」


 オリビアは眉を顰めながら聞いていた。

 ルドルフの答えに納得がいかなかったのだ。

 


「えぇ、最初は確かにその強さに皆憧れていたのでしょう。だがそれがやがて嫉妬に変わり、最終的には畏怖するようになったのでしょう」


「それはあんまりでは無いですか!……すいません。取り乱しました」


 オリビアの語尾が強くなったことに少しばかりルドルフは驚いた様子だった。


 あまり感情を露わにしないオリビアのそういう一面をみるのは初めてかも知れない。


「気にしないで下さい。ですが畏怖する人の気持ちもわかるんです。だってその力の矛先が自分に向いた時なす術がないわけですから。そうやって皆離れていくんですよ。例外もいますけど」


 そう語るルドルフはどこか遠い目をしていた。


 今の話がルドルフの経験談だと少し勘がいい人なら気づくだろう。



「それはそうかもしれないですけど……私は違います!」


 オリビアは今の話がルドルフの話だと分かっていた。


 オリビアはザクレン王国出身では無い為この国に来てからのルドルフしか知らない。


 ルドルフの事を知りたくても冒険者ギルドでは他人の過去を暴いたり詮索する事は御法度のため本人に聞くしかない。


 ルドルフが周りから避けられているのを知っていたが聞く勇気がオリビアには無かったのだ。


 だが過去のルドルフの話を聞いてもオリビアの気持ちに変化はない。


 その事をオリビアは伝えたかった。


「そうである事を願っています、私もオリビアさんのことは少なからず、その……好意を抱いていますから……ちょっと酒場にでも情報収集に行ってきますね!」


 少し顔が赤くなったルドルフは部屋を後にする。



 どうやらオリビアの気持ちはしっかりとルドルフに伝わっていたようだ。


 部屋に1人残されたオリビアの心はルドルフから好意を伝えられた喜びと辛い過去を知ってしまった悲しみで入り乱れていた。

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