冒険者ギルドへ②
「それでルドルフ、お前はどうするつもりだ?」
王宮へは行くのかと聞きたいのだろう。
「……そうですね、伺ってみようと思います」
少し考えたあと、ルドルフは答えた。
「そうか、お前の事だから心配はしてないが念のため用心して行けよ」
「そうですね、ではあまり長居しても申し訳ないので失礼しますね」
その後少し世間話をし、ルドルフは立ち上がり応接室を後にした。
冒険者ギルドを出ると既に日も傾いていた為、王宮に向かうのは明日にしてルドルフは自分の屋敷に戻るのだった。
☆★
ルドルフが立ち去った後、入れ替わるように応接室に1人の人物が現れた。
「ギルド長、少しお時間よろしいですか?」
「オリビアか、まぁ取り敢えず座れ」
そう言われたオリビアは椅子に腰掛けた。
「それで、話ってのはルドルフの事か?」
「はい、ギルド長はルドルフさんに昨日の事全て伝えたんですか?」
「いや、全てでは無いな俺たちがアイツに頼んだら引き受けるに決まってんだろ」
ジョセフはルドルフに昨日の件で伝えていない事がある。
それはこれから起こるであろう戦争についてだ。
実は昨日使いのものから招待状と一緒に頼まれたことが一つある。それは戦争が起きた場合、ギルドの冒険者を自国の傭兵として参加してほしいという趣旨のものだ。
本来、冒険者ギルドに所属する冒険者ははどの国にも属さない。
だが、その国に存在する以上当然その国との繋がりは強くなる。今では国からの魔物の駆除依頼など国関連の依頼がギルドの収入源の多くを占めている。
つまり国が滅びればその国にあるギルドも共倒れというわけだ。
今回の依頼は冒険者を傭兵として戦争時に雇うものだった。それも破格の値段でだ。
冒険者ギルドからしてもこれは美味しい話だ。もし敵に攻め込まれた場合ギルドは冒険者を臨時的に雇いギルドと国を防衛しなければならない。
何故なら冒険者は戦争には関係ないからだ。
冒険者はどこの国にも属さない。
だから戦争が起きれば逃げて別の国で冒険者をやれば良いだけの話だからだ。
その為、ギルドを守る為には雇う必要がある。
しかしその雇うお金を国が出してくれるというのだ。これほど美味しい話はない。
ただ一つの条件にさえ目を瞑ればの話だが。
「……戦争にルドルフを出させることが条件か」
使いの者に言われた事を思い出し、ジョセフは溜息を漏らした。
「ギルド長はルドルフさんを参加させたく無いんですか?」
「もちろん出てくれるなら大いに助かる、だが俺はアイツの意思を尊重したい。それにアイツは冒険者だ。なら決めるのは俺たちじゃ無い。引き受けないというなら俺たちで頑張るしか無いさ」
「そうですね」
一瞬部屋が静寂に包まれ、ジョセフが再度話しかけた。
「オリビア、お前はルドルフは受けると思うか?」
「ほぼ間違いなく引き受けると思います、彼は優しい人ですからね」
オリビアの顔はどこか確信に満ちているようだった。
「お前がそこまでいうなら俺も期待しておこう」