表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/24

第九話


[……お父様、私、脂肪を蓄えた男性とは結婚しませんからね]


[どうした、ティア。お前が結婚するのはギルバートだろう]


[これでも鍛えておりますので、脂肪は少ない自信がありますよ]


お父様が天然っぽく首を傾げる。浅い皺は目立つが、流石はエドワードとエレノアの父親らしい美形なので、痛々しい感じにはならない。


ギルバートも、目元を覆っているのでわかりずらいが、少し笑ったのがわかった。腹を(さす)ってみせると、その薄さは羨ましいほどだ。しかも筋肉はちゃんとついているので、細マッチョといった感じ。


[でもよかったよ、ティア。心配で胸が張り裂けそうだったんだ。記憶をなくしたとは聞いているが、元気ならそれでいい]


[……はい。ありがとうございます、お父様]


我が儘姫を作り上げた張本人。無責任な男性と想像していたが、彼は愛する正妻を失い、そのぶんの愛情を愛娘に注いでいただけだったのだ。



久しぶりに感じた、親の愛情。前世では、両親とも早くに亡くなってしまったから。


今の私は、前世の「彩瀬稔」と今世の「シャルティア・セピア・アルーファ」が混じり合った状態。

シャルティアの記憶がない分、稔の部分が強く出ている気はするが。


二十四歳の稔に比べ、シャルティアはまだ十五歳。親の愛情を実感し、感謝できるようになる年齢では、まだないだろう。


……冷酷だのなんだの言われていたシャルティアが、それをできるかどうかは別として。





[そういえば、ギル様は私のことを「姫様」って呼ぶんですね]


[……?]


私達は、お父様に言われて庭園を歩いていた。私の様子を見に来たのと、ついでの用は済んだということで、ミニデート、みたいな。


日傘を持った侍女が慌ててついて来てくれようとしたのだが、「お日様は健康の元」だからと断った。元保育士として、子供達に教えていたことを自分でやらなくてどうする。


ギルバートは少し驚いていた。やはり貴族の令嬢にとって、日焼けやシミは大敵なのだろう。


[オスク……あ、えっと、私の…友達、みたいな人は、私のこと「ティア様」って呼ぶので]


[……姫様はもう、私が不気味ではないのですか?]


[へ?]


不気味?ギルバートの?どこが?


[あ……強いて言えば、目が覆われてるのにスタスタ歩けるのは、不気味っていうか凄いと思います]


[ほへ……]


私の言葉に、ギルバートは口をポカンと開けて立ち止まってしまった。


[どうしたんですか?]


[……あ、い、いえ。そういえば今の姫様は、私の瞳を見たことがないのでしたね]


[ありますよ?隠すのがもったいないくらい、綺麗な瞳]


再び歩き出したギルバートは、私の言葉に再び止まる。数歩先で、前を向いたまま硬直してしまった。


「今の姫様は」という言葉から、シャルティアがきっと、ギルバートの隠された瞳を不気味に思ったのだろう。



だが私──稔だったころ、その瞳を見たことがある。それは、ヒロインとしてプレイしたギルバートルートだ。


『愛の行方』では、ハッピーエンドは結婚式の場面となっている。そのスチルは、全プレイヤー達をドキドキさせてきた。


そして、そのスチルで初めて───ギルバートの真っ赤な瞳が、明かされる。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ