第五話
[え、えっと…いくらシャルティア王女に救われたといえ、「ペット」扱いは流石にどうなの…?]
[いえ……私は、ティア様に尽くすことが唯一の幸せなのです。カイ様はともかく、私はティア様がどうなろうと一生お仕えする所存です。ティア様が願うのでしたら、この命を絶つことさえ厭いません]
跪いたオスクは頬を染めて、その黒瞳に私だけを映す。私の手に頬を擦り寄せ、心酔するような恍惚とした表情で私を見つめる。
[愛しています、ティア様]
[───!]
オスクの告白に、ついときめいてしまう。今の体は少女とはいえ、心は二十四歳の立派な成人女性なので。
[……ふ、二人は、ずっとここで暮らしてるの?]
顔を逸らして、部屋の端にいるカイザーを見る。
[はい。勝手にこの部屋を出ると、この首輪に電流が流れて苦しむ仕掛けになっていますので]
[……え?]
オスクはニコニコと微笑んだまま、自身の首にある鉄製の首輪に触れる。その首輪は、カイザーの首にもあった。
[く、苦しむって……]
[実際、カイ様が部屋から出たときには、一時間痺れて倒れていたんですよ。ああ、もちろん、僕はティア様の元から離れる気はないので脱出しようなんて夢にも思いませんが]
[い、一時間も…だ、大丈夫だったの、それ……]
[はい。……ティア様は、カイ様をとても可愛がっていましたから]
微笑んで言うオスクの目が、笑っていない。
可愛がっていたから、ちゃんと治療したということかしら……。
[それはそうと。記憶喪失ということでしたら……お困りではありませんか、ティア様?]
[きゃっ]
オスクが、私を抱き上げて壁際に下ろす。下ろされたところは布団なのか、少し柔らかい。
オスクは、カイザーにも聞こえないようにと私の耳元で囁く。
[この王城で、ティア様の本当の味方はきっと僕だけです。医者だの、侍女だのに心を許してはいけません。彼らは王家に取り入ろうと必死なのです。…ティア様は昔、彼らに命を奪われそうになったこともあったのですから]
オスクの言葉に、息が詰まる。
あんなに親身になってくれたお医者さんや侍女の女の子が、シャルティア王女──私を、殺そうとした?