表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/24

第十九話


僕はリート。リート・カフ・ビース。ビース伯爵家の次男だ。

現在十四歳。シュタンとは十歳離れているけれど、シュタンのお母さんがうちの屋敷で働いていたことや、シュタンと長兄が同い年なこともあり、今も仲良しな幼馴染みである。


僕はいつも通り、シュタンの手伝いに図書館に来ていたんだけど…。



[よし、今日中に終わらせるわよ!]


[はい!]


と、ウキウキと言ってオスクと作業を始めているのは、この国の王女、シャルティア様。


姫様は男性服のような白ブラウスと黒のパンツスタイルの装いに、長い金髪を結っている。

動きやすそうではあるけれど、そんな格好、低位貴族の令嬢でもしないよ…!?最近の姫様は本の趣味とかも変わってるし、どうしちゃったんだろう。


[リート、どうしたのぉ?]


[い、いや、なんでもない……]


逆に、シュタンが驚きもしていないのが不思議だ。

でも、今はとにかく働かないと。


だがその前に、のそのそと動く姿が見えた。そいつが抱えている本と、そいつがいる本棚を見て言う。


[えっと…カイザー、だっけ?その本はもう一つ奥の本棚だよ]


[………はい]


それに、姫様と同じくらいこいつのことも気になる。


元王子だとかの噂は聞いたことあるけど、手際が悪すぎる。それに指示してもいちいち不満げ。「どうして俺がこんなことを」みたいな感情が駄々漏れだ。


[……オスク、カイザーの補助をしてあげて]


[え?でも、ティア様……]


[私は大丈夫よ。ほら、お願い]


姫様がオスクにこっそりと言うのが見えた。そういえば、オスクも帝国で高位貴族だったらしいけど、カイザーとは真逆に手際がいい。


オスクは最近、姫様の本を借りに来たりして、シュタンと少し親しくなったようだ。シュタンは人当たりはいいけど本にしか興味がないので、おそらく帝国にしかなかった本の話でもしたんだろう。



(帝国人って、よくわかんないやつばっかりだな……)


[あ、待って、そこ危ない!]


[え──わ、ああ!?]


よそ見しながら歩いていたからか、姫様の焦ったような声と共に、何か──本の山に、躓いた。


しかも、その上に積んであった本が、僕の方に倒れてきて───。


[リート!]


珍しいシュタンの焦ったような声。そして僕は、突き飛ばれるようにして横に転がった。


[ティア様!]


視界の端に映った金髪と、オスクの悲痛な声。

打ち付けて痛む体を起こし、見えたのは───姫様を覆い込むように本が崩れていくところだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ