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モスカート、選手紹介、病気?

 

「お前らー!! 待たせたなぁ!! さぁさぁやってきたぜ!! テイマーマスターズ杯本選!! 今日はこの俺! カミュが実況してやるからありがたく思えよっ!! そして解説も連れて来てるぜー!! テイマーズの超目利き受付嬢モスカートだぁ!! ほら! 一言喋んな!!」


 あっ、モスカートだ! 解説なんか頼まれてたんだな。

 それとあれはマイク…… じゃないか、魔法の類いかな。


「皆様、ごきげんよう、テイマーズの()()受付、モスカートでございます。 本日は様々な観点から分かりやすく解説をさせて頂きますので宜しくお願い致します。」


 なんかキリッとしてる…… ユメにデレてる時とは大違いだな。


「よっしゃ! 他にも色々やんなきゃならねーが、どれもこれもめんどくせぇ!! 軒並みすっ飛ばして予選を勝ち抜きやがった選手どもの紹介だけやるぜぇ!! つーことでモスカート! 任せた!!」


「畏まりました、では出場選手をご紹介させて頂きます、尚、紹介した順にトーナメントの枠に当てはめて参りますので魔法で投影されたトーナメント表をご覧になりながらお聞きください。」


 へー! 中々様になってるじゃん! モスカートがなんだかかっこよく見えてきたな!


「モスカートおねーちゃーん! がんばってー♪」


「ぶふぉーっ!! て、天使がほほえんでるぅ……」


 ……前言撤回。


「はっ! こ、こほん。 では、第一枠……」


 どうにか持ち直したみたいだな。


 空中に写し出されたトーナメント表を眺めながら、モスカートの説明に耳を傾ける。




 第一枠

 ―ジュラ―

 カディフラティのベテランテイマー、炎を操るサラマンダーと水を操る水蜥蜴、風を操る嵐蛇の三体の従魔と研鑽された我流の剣術を巧みに組み合わせ近距離戦、遠距離戦、共に満遍なくこなすオールマイティな戦いが魅力。


 第二枠

 ―ヴァン―

 予選で見せた奇想天外な移動術とグリフォンによる地上戦、空中戦でAブロック決勝を覗き、ここまで他の選手を圧倒してきた強者、その実力は未知数。


 第三枠

 ―シャブリ―

 何より特筆すべきはテイマー、従魔共に身軽で軽快。

 素早く目標に接近し、小さく攻撃を重ね、気が付くと敵がパタパタと倒れていく様は正に電光石火。

 従魔は風(いたち)と砂鼬の二体、そのマスコット的可愛さとは相反して共に砂漠の小さな悪魔の異名を持つ。


 第四枠

 ―セパージュ―

 数少ない女性の本選参加者、艶やかな民族衣装を華麗に着こなし、双剣術に民族舞踊を織り込んだ変則的かつ美しい攻撃で強者を下して来た。

 従魔はミラージュフォクシーと幻夢蝶、共に幻を見せる従魔。


 第五枠

 ―マコン―

 今大会唯一の同一種の従魔を三体揃えての参加、三体のスライムを使役するがスライムは別段強い魔物ではない、物理耐性があるが、魔法にはめっぽう弱い、つまりこの大会の相手を死に至らしめたら失格というルールを巧く突き魔法の使用を控えさせるのが彼の戦いかた。


 第六枠

 ―ウ・ジ―

 通称蟲使いのウ・ジ、自らは戦わず、メガマンティス、ギガマンティスに戦わせるスタイルではあるが、カマキリ型の従魔なだけあり強力な鎌での攻撃や空中からの奇襲、又、蟲型の魔物が苦手な相手を降参させ予選を勝ち抜いた。


 第七枠

 ―バッサーノ―

 カディフラティの王直属テイマー兵団の団長。

 彼の人柄は正に堅実、実直、そして鍛え抜かれた鋼の筋肉で従魔もろとも殴り飛ばす。

 従魔は彼とは正反対の狡猾さを持つスライモンキーと二体のサーベルドッグ、表裏一体の肉弾戦と左右対称の奇襲が非常に強力。


 第八枠

 ―カラフェ―

 カディフラティのAランクテイマー、白い肌に白髪、白髭に更に白い服、年齢不詳の白杖使い。

 彼が繰り出す白杖は、白に紛れて認識できない。

 従魔は彼の白に対して真っ赤に染まる血のようだ。

 ブラッドスネークとクリムゾンバード、嫌でも気になるその赤色に気を取られたら命取り。



 第九枠

 ―ドサージュ―

 彼女を語るにはまず彼女の本業を語らねばならない。

 それは古の魔術を用い様々な薬を作り出す薬師である。

 その風貌は魔女そのもの、そして薬とは毒にもなりえる、そんな彼女が使役するのは極めて毒に対して耐性の強いポイズンバットとステインラッドの二体。

 予選では麻痺毒で相手を戦闘不能にしてきた。


 第十枠

 ―ソアヴェ―

 彼にテイマーとしての才能はあまり無い。大会史上初のCランクでの本選出場を果たしたが、これは従魔の力では無い。

 では何か……。

 それは天より授かりし魔法の才能、予選では従魔は彼の後ろで小さくなるばかりで一切攻撃をしていない。

 しかし従魔も無能なんかではない。

 彼が従えるのは三体の小妖精、それぞれが攻撃力、防御力、魔力に対して大幅な増幅魔法で補佐する。


 第十一枠

 ―デュロン―

 前大会の優勝者、言わずと知れた最強テイマー。

 鉄壁の守りのアイアンベアーが彼を守り、圧倒的なパワーで敵を粉砕するメタルガーゴイル、そして驚異の回復魔法で全てを癒すヒールシープ。

 全てを兼ね備えたチームプレーで他の追随を許さない。


「そして……」


 ん? どうしたんだ? ここまでスラスラと各選手を紹介してたのに……。


「そ、そしてぇ… 第十二枠のぉ、マオちゃーん! この子もめっちゃ可愛いっ!! ハァハァ。 あの小柄な身体も白を基調にしたフリフリっとした服も、ふんわりとエアリーな薄紫の髪も、こ、声すらも!! もぅかんわいぃのぉ!! ユメちゃんも可愛いけどマオちゃんもストライクっ!! もう持って帰りたーーい! ハァハァ、従魔も可愛いし、とにかく可愛い!! 可愛いし可愛いくて可愛いいから強い!! ハァハァ…… はっ!! ………い、以上、選手の紹介でした……。」


「お、おう。 お疲れさん… お前大丈夫か? 色々と……」


 カミュさんに激しく同意いたします。


「まぁ、なんだっけか。 あれだ!! クソ強い奴らが集まったぜって話しだっ!! そんじゃあ気を取り直して本選一回戦、始めるぜっ!!」



「あの人はぁはぁしてるけど病気かな。」


 そんなトカイの声と共に本選が始まるのだった。

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