アーティスティックカタツムリアクション
前話の最後と視点が違いますのでご注意を(*^^*)
ずしゃぁーー。
「ぐぅぇっ」
気が付くと俺は顔面からの見事なスライディングをきめていた。
地面に対して水平を保ったままの顔面の美しい入斜角、接地面の摩擦により首から足が受ける慣性の法則、それにより仰け反り美しいアーチを描き足先は前方へぐるんと曲がり後頭部へ、ヘッドスライディングよろしくピンっと伸びた両腕。
サイドからこの姿を見たものがいたとするならば、ある一部の部分を除きこう形容するだろう。
カタツムリと。
その一部とはツノに他ならない、本来二本あるはずのツノが一本しか無く、それがちょこんと控えめに自己主張している。
そしてどこかにぶつけでもしたのであろうか、正面から見て下部にコブが二つ出来ている。
そこでなんと無く感じる肌寒さ。
男は…… そう、全裸であった。
その前にそもそもとして何故か人の姿を象っていた事で思考が止まっている。
さらに……
思いっきり笑われていた。
「ぷふっ!! ぷくくく。 あーはっはっはー、ひーっひひ、ふーふー、ちょっとまっ…くく。 ふーふー、ひっひっふー、ひっひっふー、ひっひっふー。」
突然の出来事に頭がフリーズする。
「はぁ、はぁ、ふぅ。 ねぇ、あなた、私が笑い死にしたらどうしてくれるの? 本当に退屈しない子ね、ふふっ」
どうすればいいのだろうか、ここは敢えて何事も無かったかのように……
「ねぇ、ねぇってば……。 いつまでその粗末な物を私に見せ付ければ気がすむのかしら? ふふふっ。」
「っ!?」
流石にその発言にガバッと起き上がり股関を片手で隠し、咄嗟の事に混乱していたのであろう、上まで手で覆いながら内股で震える事しか出来ない。
「ぷくっ! くくく、ひっひっふー。 ふう。」
目の前の少女は腹を抱えながらどうにか笑いを堪えようとしているようだ。
「あーもう! 本当に私、あなたの事大好きよ。面白いもの。」
面白いとは失礼極まりない、気恥ずかしさもあったが、どうにか平静を装って俺はその少女に問い掛ける。
「ここは……どこなんだ? そして君は誰?」
どうにか笑うことを抑えた彼女が語りだす。
「そうそう。 本題を忘れていたわね。 覚えて無いだろうけど、久しぶりね、荒巻 空至」
荒巻 空至、それが俺の名前なんだろうか、なぜか頭に靄がかかり上手く思い出す事が出来ない。
「あぁ、無理に思い出そうとしなくていいのよ? 今から嫌でも思い出す事になるから…… ぷふっ」
何故か最後に吹き出す少女を訝しく思いながらも疑問を投げ掛ける。
「嫌でもってどういう意味だ? 記憶が失われているなら思い出したいんだけど。」
「え? あぁ、そうね。 大丈夫よ。 こっちの話しだから。 ぷふふっ」
なんともおかしな少女である、何が彼女をそんなに笑わせているのかが全くわからない。
「さぁ! 此方にきてソファーに座ってみて! あなたの記憶を復元しましょう!」
言われるがまま、下を押さえたままではあるがソファーへと腰掛ける、すると彼女が徐にどこからか取り出した沢山のボタンのついた機械のような物を空中へと向けてボタンを押した。
すると空中に大きな窓の様なものが現れ、何やら映像を映し出す。
彼女は魔法使いか何かだろうかとぼんやりと考えていると、突然身体が浮かび上がりゆっくりと窓のようなものに近づいていく。
「それでは記憶の窓の御開帳ー!! それじゃあいってらっしゃい主人公! ここでもう一度あなたの終わりと始まりを堪能させてもらうわね! ぷふふーっ、 さぁ!はやくはやくぅ!!」
振り返ると先程まで俺が座っていた場所に腰掛け、いつの間に用意したのか管のついた飲み物と白っぽいモコモコっとした食べ物をそれぞれ手に抱え満面の笑みで見送る彼女の姿があったのであった。