屋敷と人形
「ジュラさん、これで反対するのはもう難しいと思いますよ?」
「あ、あぁ、ここまでされちゃあもう何も言えないよ。」
「皆さんもいいですね? では改めてここにいる全ての者を証人としマスター、ルケをAAランクの従魔として登録、そのテイマーであるユメを同じくAAランクテイマーとして登録致します。」
「やったな! 嬢ちゃん!! これでお前らは史上二組目のAAランクだぜ!! 俺っちは今日、この場に居れた事を神さんに感謝するぜ!!」
あー、なんとか丸く納まったな。
もうかえっていいかな…… 日も落ちた頃だろうしルケもここまで走り詰めで疲れてるだろう、少しゆっくりさせてやりたいしな。
「ねぇピカリン、グラグラ!! ユメ達はもう帰ってもいいの?」
おっ! ユメナーイス!!
「あぁ! 今日は帰ってゆっくりしな! これからお前らの腕輪と首輪を造るからまた明日以降に取りきてくれ!! でいいか? グラーヴの旦那!!」
「えぇ、それで問題無いでしょう。 今日は帰ってゆっくりするといいですよ。」
「はーい♪ じゃあ行こっかみんな! キフじぃもいくよー!!」
キフおじいさんの家に行くのに立場が逆だよ……
「あぁ、いこうかぁ!」
皆いい人でよかったな。
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テイマーズからでて暫く歩くと十分ほどでキフおじいさんの家に着いた。
「キフじぃの家おっきい!! すごーい!!」
いやほんとに、俺も驚いた。
だってこの家… いや、屋敷か。
立地がこの国の城の一番近くにあるんだもん。
門兵がキフおじいさんに何かあったら王が哀しむって言ってたけど何か関係が有るのかな?
「厳密には儂の家ではないよ、王様にお借りしてるんだぁ。 ここで研究をするといいってねぇ。 さあさ、中に入ろう、腹も減ってるだろ? すぐに準備させようなぁ。」
あれ? キフおじいさんの奥さんって亡くなったんじゃ……
玄関に近づくと中から扉が開く。
「「「お帰りなさいませ、旦那様」」」
おぉ、執事とメイドが沢山いる!! キフおじいさんって学者さんってだけじゃないんじゃないか? 流石にここまでの待遇を研究者に与える事はないような気がするけど…。
「お客様ですかな? 私この屋敷の執事長を仰せ付かるオーパスと申します、何かありましたら何なりとお申し付け下さい。」
すごいなぁ、ルケと俺をみても顔色一つ変えずに挨拶してきたよ、正にプロって感じだな、オールバックのグレーの髪とダンディな髭が執事服にガチッと嵌まってめちゃくちゃかっこいいな、俺も歳をとったらこんな感じの渋いオーラ出してみたいな。
亀だけど。
「オーパスー!! よろしくねー! ユメはユメ!! 最強のテイマーで、マスターとルケのテイマーなの♪」
「ホッホッホ、オーパス、この娘らは儂の命の恩人であると共に、先ほどテイマーズでAAランクを正式に貰った方々だよ、存分にもてなしてあげなさい。」
「AAランクでございますか? それはそれはそのようなお客様を何もせず立ち話に付き合わせるのは何とも失礼で御座いましたね、直ぐにお部屋のご準備と食事をご用意いたしましょう。 当家にいる限り私共の事はユメ様、マスター様、ルケ様の従者だとお思いになってご自由にお使い下さい。 準備が出来るまで応接間でご休憩いただきましょう。 さぁ、どうぞこちらへ。」
「オーパスや、儂は少しやることがあるから暫く任せるよ。」
「畏まりました旦那さま。」
キフおじいさんと別れ、広い応接間に通される。
ユメは豪奢なソファーでポヨンポヨンしながらご満悦、ルケは絨毯でうたた寝、俺はと言うと……。
探険に出ている!! いやぁ、いくら元々は社会人だったからって男の子はずっと子供のままなんだよ! 俺の場合は別の意味でも大人になれなかったけどね…… あれ? 悲しくなってきた。
いやいや、取り敢えず気を取り直してレッツ探険!!
【隠密】を使って静かに色々見てまわる。
色々と見たが正直別に面白い物は無かった、残すは一番奥の部屋だけで、そこがキフおじいさんが魔法人形の研究をしている部屋だろう。
覗くのは失礼だろうか、いや、失礼なのは分かってはいるんだが、何故かここで見ないといけない気がしてならない。
こういうのを神の啓示って言うのかな? え? 神ってヴィオニエ…… ま、まぁいいや、これ以上考えるのはやめとこう。
近寄ると扉が少し開いていて隙間から中を覗き見る。
死角があって全部は見えないけど、どうやらキフおじいさんはいないようだ、入れ違いになっちゃったかな。
流石にキフおじいさんもいないのに中に入って勝手に見るわけにはいかないよな、もどるか。
探険も終わりなので【隠密】を解く。
「こっちへきて。」
部屋の中から声がする。
【隠密】を解いたせいで誰かに見つかってしまったようだ。
中には誰もいなかったと思ったけど……
「こうなったら行くしかないよね。」
そう自分で言い訳を作り、ギィっと扉を開き部屋へと足を踏み入れる。
そこにいたのは精巧に創られ、息を呑むような芸術的な美しさを感じさせる男の子の人形が在るだけだった。
「今、話しかけたのは君?」
………
気のせいだったのか…
「たすけて。」
今度こそ間違いない! 今この人形の口が僅かに動いたのを確かに見た!
「助けて、そう言ったね? 何から助ければいいんだい?」
その問いかけに人形は自らが座っているテーブルの裏を指差す。
「たすけて。」
何か有るのかと指差された方へと近づいていく。
「たすけて。」
テーブルの後ろを覗き見るとキフおじいさんが倒れていた。
「キフおじいさんっ!!」
「たすけて。」
「【ウォーターライフ】!!」
キフおじいさんを癒しの光が包む。
今、俺に出来るのはこれだけだ、でも【ウォーターライフ】は全てに利く程万能じゃない、怪我や疲れは癒せる、だが例えば病、これは治せない可能性が高い。
だから一刻も早く医者に連れていくべきだ。
「ユメーーっ!! ルケーーっ!! 今すぐきてくれっ!!」
これで二人ならすぐ駆けつけて来るだろう、ここからは如何に早く医者に見てもらうかが大切になるだろう。
「たすけて。」
「あぁ、大丈夫!! 直ぐに病院に連れていってあげる!!」
「ありがとう。」




