意外とイケる
「あっ、ナニココ暗い…」
「しかもなんか身体がビリビリしみるしこれはあれだな、胃袋ですね、 胃酸ですねハハハ… じゃねぇー!! アホか! これ溶けるやつじゃん!」
とにかくこのままじゃまずいのは明らかだ、どうにかして脱出しなければそう遠くないうちに溶かされてしまうだろう。
「取り敢えず口をめざすか。」
ズドンっ!!
「っ!?」
突如として響く衝撃音。
恐らくこれは完全に忘れていた先程の槍の片割れだろう
意識下より外れたことにより自動発動してしまったようだ。
「びびったぁー… 自分に当たらなくてよかったな、 よし、 進もう。 こっちであってるはずだよね」
ー経験値を獲得しましたー
ーレベルが上がりましたー
ー記憶レベルが上がったことにより【鑑定】のレベルが2に上がりましたー
ー新たなスキルを取得しましたー
「ちょっと! ビックリするじゃん! いきなり喋らないでよ!」
今レベルが上がったという事は、僅かながらにこだぬきが生きていたと言うことだろう。
ある意味槍の暴発グッジョブである。
色々確認したいところではあるが、脱出が先だ。
二十分程をかけてどうにか飲み込まれた口付近迄戻ってくることができたようだ。
僅かではあるが光が漏れている。
やっとの思いでたどり着いた口付近には驚愕の事実が待っていた。
「おい。 おいおいおい。 おいっ!! 出口が俺の槍で塞がってるじゃんっ!! マジかぁ…… イベント盛りだくさんかよ…… これ消せないの?」
結果を言えば消せなかった。
スキルレベルが足りないのか、魔力的な物が切れるまで消えないのか、はたまたずっと残り続けるのかは定かでは無いが今すぐ消せるわけではないようである。
最初に貫いた槍で下も塞がっているかもしれない。
ここまで詰みに詰んで来て更に詰んでいる。
「ないわー。 どすんのこれ……」
「はぁ、疲れたし腹へったなぁ。 思えば何も食べてないじゃん俺。」
どうすることも出来ないし、よし。
【鑑定】に一縷の望みをかけるしか無いか。
さっき取得した物を確認しよう。
「【鑑定】!!」
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《プライオマイマイ》Lv.2
ースキルー
・鑑定Lv.2
・投げ槍Lv.2
・毒独Lv.1
・転がるLv.1
・悪食Lv.1
ーステータスー
・HP 232/320
・MP 152/260
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「増えたのは【転がる】と【悪食】か、そしてHPとMP……」
【転がる】はそのまま転がるスキルだろう。
何もかもが遅いカタツムリが転がった所でたかが知れてはいると思うが貴重な移動手段となるだろう。
後は【悪食】か……。
名前から察するに食べる事に関するスキルであることは間違い無いだろう。
今の【鑑定】のレベルではスキルの詳細までは分からない。
であれば検証していくしかないだろう。
「食べて……みるか。」
現状を打開する策がこれといって無い以上とにかく行動していくしか無いだろう。
「よし、行くぞっ!!あーーーむっ!!」
さぁ、ここで一つの疑問が呈される、『カタツムリに歯は有るのか?』である。
結果を言おう。
有る。
しかも、厳密に歯と言えるかは分からないが歯舌と言われるおろし金のような器官が備わっており、そこに約二万本の歯が生えている。
光源が僅かなため、うっすらとしか見えないが食らいついた場所はくっきりと半円状にくり貫いたような形状をしており、明らかに自分の口のサイズすら遥に超えて
消失している。
スキルには物理法則すら覆す力があるのだろう。
そしてその結果を見て更に食らう。食らう。食らう。
「んぐ、もぐ。どうやって、 もぐもご。食べてるかよくんぐ。わかんないけど。んく。意外と美味いかも」
幾ばくかの時間を費やし、遂に腹を食い破る事に成功した。
ー【悪食】が発動したことによりステータスに補正がかかりますー
どうやら【悪食】には食らった対象のステータスを奪う効果があるようだ。
思わぬ収穫である。
「んぐ、 お! でれたー! もぐもぐ。 ふふふ。 ゴクン。 やってやったぞっ!! タヌキ野郎! 俺のかんぜんしょーりだっ!!」
初めての勝利の味に酔いしれながら天を仰ぎ見る。
そんな俺を大きな大きな木々と……
タヌキが見下ろしていた。
「へ……? うそん。」