白くて暗い
「こうなりゃヤケだっ!!やってやらぁー!! かかってこいやぁ! たぬき野郎!!」
とは言ったものの。
皆様覚えておいででしょうか?
私… 絶賛噛みつかれ中でございます。
などと心の中で誰に向けてでもなく呟いてみる。
「やべー、どうすりゃいいんだこれ、 既に詰んでるわ 」
手も足も出ないとは正にこの事である。
もちろん、そもそもとして手足など無いのだから出すことも出来ないのだけれど。
暫しがじがじと大人しく齧られていると唐突に一つのメロディーが頭に浮かぶ。
フフフン フフフン フフフフフーン♪
「っ!?」
「今のは!? 何でだろう、懐かしいメロディーだな。 歌詞は… 思い出せ。 フフフン フフフン フフフフフーン…」
その時忘れていたはずの記憶の欠片が煌めいた。
「お…もいだしたっ!!」
「角出せ 槍出せ 頭出せだっ!!」
ー記憶レ…
「っ!!」
それを口に出した瞬間身体に変化が訪れた。
ちょこんとしか出ていなかった小さな角がどんどんと肥大化し、やがて目算30センチ程の長さになったのだ。
更にそれが重力を無視したかのように浮かび上がり、角の接合部から千切れて滞空している。
「おお!! 何か知らんけど槍できたっ!! ラッキー。」
「よしよし、あとはこれを動かせれば… うごけー、うごけー、うっごっけっ!! …動いた!!」
地面より水平を保っていた二本の槍がこだぬきの頭上で垂直になり、切っ先を煌めかせる。
「よっしゃっ! きたきたきたーー!! 遂に俺のターンだぜ!!」
この槍がどれ程の威力が有るか分からない現時点で敵との距離がゼロのこの情けない状況に置いて槍を二本とも叩き込むのは危険か?
いくら自分の防御力が高そうだからといってこだぬきの発達しきっては無いであろう顎力と頭上から叩き込む槍では間違いなく槍の破壊力に軍配があがるだろう。
「よし、戦い(笑)の中に身を置く者として、 常にハートはHOTに、 頭脳はCOOLにだぜっ! ふっ…」
「ふぉーー! 言ってみたかったんだこれっ!! かぁっくいい!!へへへ」
それはそうと…(笑)を勝手に着けたやつ後でOHANASHIしような? な?
「ふぅ、では参りましょう!! あっ! でも技名どうしよう。 えー、悩むー! んー、 んー。」
その時突然嫌な音が響く。
ビキっ。
「え? なに? え!?」
ビキキっ。
「ちょっと待って! うそだろ? 俺の渦が美しい鎧兼マイハウスにヒビはいったやん!! ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいってえぇぇ!! いそげいそげ! ! もう射っちゃえ! 名前は後々!【投げ槍】!」
ビュっ!!
意識した瞬間に風切り音と共に物凄いスピードで槍の片割れが飛来する。
こだぬきは未だにがじがじに夢中であり気付いてすらおらずその身体をいとも簡単に差し貫かれた。
しかし、こだぬきはその衝撃に仰け反り大口を開ける事となる。
くわえられてたものがどうなるかはお察しである。
ゴクンっ。
「っ!? あぁーーーー…」
■
「あははは! 食われたわ! あはははーひーっひひ、ふっふぅ、…ぷふっ。 くくく、やばっ、苦しいっひひ、笑い死ぬー、ひひ、ひっひっふー、ひっひっふー、ひっひっふー。 よしよし、落ち着いたぁ」
それにしても、やっぱり彼にして良かったわね。
見ててとても楽しいもの。
なんてったって前世での死に方から笑わせてくれたものね。
「ぷふっ」
今思い出しても笑えるわ……
これは今後も退屈しないですみそうね。
「さぁ、頑張って! 自分で選んだカタツムリでその世界を生き抜きなさいな! 渦の頂点を目指してね。」
何もかもが真っ白な世界にぽつんと拵えられた純白のソファーに腰掛ける純白の美しい少女は彼の者に何を与え、そして何を望むのか、
それはまだ誰も知らない。
「とか言ってみたりして… ぷふっ」
■
「あっ、ナニココ暗い…」