遺跡突入
遺跡の入り口を潜る、薄暗い遺跡内は森のなかに有るのに湿気を感じないパリッとした涼しい空気が流れているように感じる。
段々と目が慣れてきた。
完全な暗闇ではなく壁自体がうっすらと光を発しているようだ。
ゆっくりと進みながらも、まだ敵の姿も見えていないというのに刀に手をかけているミュスカを横目に見ながら緊張を解そうと頬ずりしてやる。
「ふぅ、ありがとうそら。 こんなにガチガチじゃダメだよね。 そらも肩から落ちないように気をつけてね。」
「キュッキュー」
俺もミュスカの顔が近くて少し緊張してますのでお互いさまですよ。
等と内心思いながらこちらも気を引き締める。
そろそろミュスカが襲われていた場所に到達するはずだ。
通路の角を曲がると少し先にゴーレムが佇んでいるのが見えた。
一体だけだしここは本当の意味でトラウマを払拭した方がいいだろうしミュスカに戦闘を任せることにするか。
「キューキュキュ?」
「うん。 行けるよ! 任せて。」
今度こそ刀に手をかけ音を立てずに近付いていく。
余談ではあるが遺跡に入る少し前ダメージを気にしてミュスカが刀に鑑定をかけてわかった事なのだが、勝手に名前が付いていたそうだ。
その名は〔白夜刀―紫陽花―〕
矢鱈とカッコイイ名前だがカタツムリが造った刀に紫陽花とは正にといった所か。
因みにではあるが紫陽花は全くの無傷であった。
ゴーレム迄の距離は約五メートル、まだこちらには気付いていないようだ。
この距離であればミュスカなら踏み込み一つで詰められる間合いである。
しかしミュスカは踏み込まない。
残り8歩
6歩
4歩
2歩
0。
完全な自然体からの抜刀術。
美しい剣閃が煌めきそのまま紫陽花を鞘へと納めた。
そしてズルっと上半身が滑り落ち、滑らかな断面が露になる。
「やった… やったよ! そら!! 凄いよ!! この刀!! あんなに手こずったのに!!」
ああ、造ってよかったなぁ。
本当にそう思う。
どうやらトラウマは完全に払拭できたようだ。
少し進み角を曲がるとゴーレムとガーゴイルが犇めいていた。
その中に何体か一際大きい個体が見て取れた。
「うそっ… 私が通った時にはあんなのいなかったのに… それに最初に入った時も小型の弱い魔物ばっかりだったのになんで……」
同じ場所で魔物が強くなっていってるって事か?
チャラ先輩から無理やりやらされたRPGゲームにもそんな仕様があったな。
ダンジョンに初めて入った時は大したモンスターがいなくても入る度にどんどん強くなる。
そんな仕様だったと思う。
もしここが同じような環境下に有るんだとしたら一度で踏破しないと敵が強くなり続けるってことだよな。
厄介ではあるけどこれっててっぺんまでの敵を全滅させて、戻りでも殺してまた入ってを繰り返したら無限かどうかはわからないけど物凄く効率的にレベルを上げられるんじゃないのか?
美味しいな。
さーてと。まぁ取り敢えず強そうなの間引きしますかね!
【武具創造】、ー夢鎗ー、【念動力】、【悪食】っと。
「恋矢。 はい、逝ってらっしゃーい、 バイバーイ」
何の抵抗もなく大型のゴーレムは沈黙した。
「うん。 歯ごたえなーし。」
〈ますたぁ! すきるだけおいしいよ♪〉
ほう。
「どれ、ユメさんや、どんなスキルか教えてみなさい。」
〈んとねー、ごーりきだって! こうげきりょくがどーんなやつ♪〉
ほうほう。
単純にステータスが底上げされるスキルは重宝するし、まぁまぁかな。
「ユメ、ありがとう! 引き続き警戒せよ!!」
〈らじゃっ♪〉
ミュスカはどんな感じかな。
おお! 蝶のように舞い、蜂のように刺すって言葉があったけど、それ以上に美しい動きだな、これは新しい言葉を生みださなくてはならないな!
んー、どうするか…
あっ、そうだ。
「ユメさんや、ユリと繋いでくれるかのぅ?」
〈はいはい、ますたぁさんや、すぐにやりましょうねぇ。〉
〈お呼びですか?ソラさま。〉
「まぁまぁ、そう固くならずに。 若いんじゃから砕けていこうじゃありませんか。」
〈砕けて… ですか?〉
「ほんほん、そうじゃそうじゃ」
〈くだけちゃいましょーやおねーちゃんや!〉
〈分かり… わ、わかったのじゃ?〉
「そうそう! どうせ俺とユメにしか聞こえないんだから楽しく行こうよ!」
〈楽しく… 一つ勉強になりました。 ありがとうございます。〉
「ははっ。 でね、呼び出したのは他でもない。 今のミュスカにこう、ぴったりの言葉をつけようと思ったんだけど思い付かなくてね。 だから三人で出しあっていいやつを選ぼうと思ってさ。 一緒にどう?」
〈ミュスカ様の勇姿を表現する言葉… やります!〉
〈ユメもやる♪〉
「よしっ、決まり! じゃあ俺からいくねー!」
「暗闇に射す一筋の光、夜の紫陽花の葉の雫、月光を灯して」
〈なにいってるかわかんなけどおもしろい!!〉
〈私は良いと思いますよ。〉
「んー、詩的すぎたかなー。 じゃあ次、ユメ!」
〈はーい♪ んとねー〉
〈みゅすかひゅんひゅんながれぼしー!!〉
「う、うん! なかなかいいんじゃないか? ねっユリ!!」
〈ユメらしさがでてますね。 いいと思います。〉
おーう。以外と妹に甘いぞこのおねーちゃん。
〈へへー♪ ありがとう!! つぎおねーちゃんのばん!〉
〈はい。〉
〈舞い降りる星の煌めきは、月夜の露を振り払う〉
「おおっ! いいじゃん! なんかミュスカにぴったりな気がするよ!」
〈かっこいい♪〉
〈そう… でしょうか。だとしたら嬉しいです。 ふふっ〉
〈あー!! おねーちゃんわらった!! かわいー♪ ユメもうれしー!!〉
「よし! じゃあユリのにけってーーい!!」
〈おーー♪〉
〈よ、宜しいのでしょうか?〉
「ミュスカを思うユリの気持ちが伝わってくるいい表現だとおもうよ! ありがとう!」
〈ありがとうございます… ソラ様、 ミュスカ様をよろしくお願いいたします。〉
「うん! まかせて!! どんな厄災が襲ってきても命懸けで守るから!!」
〈いえ、 ミュスカ様の隣にソラ様がいない光景は見たくありません。 どんな厄災からでもよゆーでご帰還して頂きませんと困ります、 ふふふっ〉
〈またわらった!! たのしそうなおねーちゃんだいすきぃ♪〉
〈ユメ、私も好きですよ。 ありがとう。 いいマスターを持ちましたね。 ユメが真っ直ぐ育ってくれてるようで安心しました。〉
〈うんっ! ますたぁもだいすきぃ!!〉
う、うぅ。
これが子の成長を喜ぶ親の気持ちなのかな…
涙がとまらないよぉ……
「こーらっ! そら!! またぼーっとして、襲われたらどうするの? 危ないでしょ!! 全部倒したから大丈夫だとは思うけど気の抜きすぎはメッ!! だよ!!」
いつの間にか全滅させちゃったみたいだな。
取り敢えず謝っとこっと。
「キューキュン…」
「うん、気をつけてね。」
こんだけ倒せばミュスカのレベルも上がってきたんじゃないか?
「ユリ、ミュスカのレベル上がったんじゃない? もどってアナウンスしてあげて!」
〈かしこまりました。 ありがとうございます。 ソラ様 最後に一つだけ、 私もソラ様の事が好きになりました… ではまた。〉
ユリもええ子や……。
「あっ! レベル上がったみたい!! よし。 どんどんいこっ!! そら、はやくはやく!」




