はいよろこんで
本日二話目でーす(^_^)/お気をつけくださいましー
あの後俺たちは手頃な木の根元で寄り添って眠った。
こういう時にユメの存在のありがたみを感じる。
何かあれば起こしてくれるし、寝坊する前には声をかけてくれる。
ちゅんちゅん。
「これが朝ちゅんってやつですね?」
〈ちがうよますたぁ! おはよう♪〉
「冗談ですよユメさんや。 おはよう!」
「んー、あさ?」
俺に続き紫羅も起きてきた。
寝惚けてる姿もかわいい。
もう一度言おうか、かわいい!!
好きだーー!!
「ふぁわあ。 良くねたー、君をだっこしてたからかな! ありがとう。」
いえいえ、役得でございます故。
「さてと、なんだか助けてもらってそのままこんな感じになっちゃったけど、君って私の言葉理解してる… よね?」
こちらからの意思を伝える術がこれしかない以上あれこれ悩んでも仕方ないよな。
肯定の意味を込めて頷く。
階位を登って、スキルを食えばいつか意志疎通が可能になるかもしれないし、進化先によっては人になれるかもしれない。
今は紫羅の心の支えにさえなれればそれでよしとしよう。
「よかったぁ! 改めて自己紹介しなくちゃね!」
いや、わかってますとも、ええ、わかってますよ。
「私の名前はミュスカ。 ミュスカ・デ・ブランだよ!」
おや? おやおや?
「一応これでもエルフの国の王女さまやってます! 宜しくね!」
おおふ。
前世の点数滅茶苦茶良かったんだな… 王族って。 なぁ、聞いてくれよ、俺… カタツムリなんだぜ。
あれ? またか。 目から汗が止まらないよ…
「えっ!? なんで泣いてるの!? 変な事言っちゃった? えと、なんかごめんね?」
いや、いいんだ。 でも童貞の減点が大きかったのか、それとも処女の減点が小さいのか、それすら軽く凌駕する加点があったのか……。
もしくは、ヴィオニエが面白がって童貞いじりをしてきたのか。 OHANASHIしなきゃならないことが増えましたね。
それにしてもミュスカか、 彼女がこっちの名前で自己紹介してきたんだ、これからはミュスカって呼ぼうかな。
それで、王女か… いくつか気になる事が有るな。
何故エルフの国の王女がこんなところに一人でいるのか。
ミュスカがいつからこの世界にいるのか。
二つ目に関して詳しく言えば、生まれた時からミュスカは紫羅としての意識を持っていた可能性と、俺のように途中からバックアップデータの復元を行ったのか。
或いはいきなり今の姿でこの世界に転生し王の養子にでもなった可能性。
これらが考えられる。
どれにせよ苦労したのではないだろうか。
いきなり文化の違う世界に生まれ違う自分を演じてきたのだろう。
王女であるが故に好きに動けずレベルを自由に上げに行くことすらままならなかったのではないだろうか。
そして何よりも孤独だっただろう。
自由に振る舞うこともできず、宛ら籠の鳥のように育ってきたのかもしれない。
そんな現状への焦りもあったかもしれない。
その結果が昨晩の無茶な遺跡へのトライに繋がったのだろうか。
それでも…
彼女の根幹が変わっていない事に、今でも俺を思ってくれていたことに… また涙がでた。
「なかなか涙がとまらないねぇ、ゴミでもはいっちゃったかな?」
いつまでも心配なんてかけてられないよな…
大丈夫だよ! という気持ちを込めていつもより大きめに首をふる。
「大丈夫? なのかな。 よかった! それで君はなんて呼べばいいのかな… ごめんね、言葉が分かればよかったんだけど。」
どうするか、名乗りようが無いな。
ソラ、そら、空か!
勢い良く雲一つない空を見上げる。
ミュスカはそれで確信したようだ。
「やっぱりソラ君があの時言ってたそらって君のことなんだね!! そか、そっかぁ…」
ミュスカの頬に一筋の光が零れ落ちた。
しかし次の瞬間には真面目な顔でこちらを見つめる。
「そら!! お願い。 私に力を貸してください!!」
どんな内容であれ俺の力を必要としてくれるならいくらでも貸そう!
何なら魔王倒せって言われたって二つ返事でこう答える。
「はいっ!よろこんでぇ!!」
元気な声と共に頷くと、それを見たミュスカの表情が華やぐ。
「ありがとう、そら! これから一緒にがんばろうね!」
「あ、でも何をするかとか何にも言ってなかったね。 まず私の前世と国の事からお話ししなきゃだね!」
……………
………
…
成る程ね。
生まれてから暫くたった頃には記憶があったんだな。
長いこと待たせちゃったな。
もう大丈夫だからね、ミュスカ。
俺が見てる、君を泣かせないように。
俺が守る、君の笑顔を。
俺が退ける、全ての厄災を。
俺が背負う、国ごとまとめてもってこい。
俺が紡ぐ、俺達の未来を。
手始めにちゃちゃっとこの遺跡を攻略しちゃおう。
■
「あちゃー、色々ばれちゃったわ、 ぷふぅっ。」
でも二人して腹上死でここにこられた日には本当に笑い死ぬかとおもったわ。
あのときの私の演技もなかなかだったわね。
流石は超絶美少女ヴィオニエちゃんね!
「どうしよう…思い出しちゃった… ぷふぅーーっ!!ひーふー、ひっひーふー」
ふぅ、それにしても今回のは本当にいいタイミングだったわ。
これだから女神ってやめられないのよね。
あのギリギリのタイミングで助けに入るシーンなんて手に汗握っちゃったわよ。
たまにはこういうのもいいわね。
ただのギャグって飽きがきたりするし、時々ドキドキ、ハラハラさせてくれないとね。
本当に今後もあの子達から目が話せないわ。
「あの子には是非とも二つ目の願いを叶えてもらわなきゃね。」




