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無理心中?いいえ腹上死です!

前話で投げ槍に恋矢と言う名前をつけましたが、本当にカタツムリに恋矢というヤリが有るらしいですよ笑

何に使う器官なのか気になるかたはしらべてみてね(^_^)/

ツノだせヤリだせメダマーだせー♪

 〈ますたぁ、 いわなかったんだけどれべるがあがってスキルもふえたよ!〉


 本当にユメはいい子だ。

 遂に空気まで読めるまでになったか。

 ヴィオニエが生み出したのが疑わしいくらいだな。


「ありがとう! 後で確認するからその時にまたお願いするよ!」


 〈さーいえっさー♪〉


「どうしたの? キューキューいって。 あ、ごめんね強くぎゅーってしすぎたかな?」


 紫羅にさっきまでの悲壮感は感じられない。

 俺の部長に涙は似合わない。

 だからもう悲しい涙は流させない。

 ()()は俺が見守り助ける番だ。


 問いかけに首をふると嬉しそうに微笑んだ。


 あぁ、女神が目の前にいます。

 本物はこちらです。


 こつんっ。


「いてっ。」


「大丈夫? なんでこんなところでドングリが落ちてくるのかな? リスでも迷いこんだのかな?」


 いいえ違います。


「ヴィオニエひゃっほーー♪」


「びっくりした! どうしたの? 変な声だして。」


 また、首をふり、なんでもないとごまかす。


「取り敢えずまたゴーレムたちに襲われたら困るし外に出よっか。」


 頷くと俺を抱き抱えたまま外へと歩きだす。

 少し歩けば直ぐに外だ。


 森の匂いがする。

 紫羅の香りがする。

 穏やかな鼓動が生を奏でる。




「眠くなっちゃった?」


 少しうとうとしていたみたいだ、そういえば寝るつもりだったしね。

 顔を見上げようと上を見ると満天の空に大きな月が輝いていた。


 俺につられて紫羅も空を見上げる。

「満月…か、ソラ君と残業した日も満月だったなぁ… きれい。」


 正直あの日は舞い上がり過ぎて月なんて見てなかった…

 ん? そう言えばなんでこっちに紫羅がいるんだろう。

 つまり死んだって事だよな。

 今度ユメを通してヴィオニエに聞いてみるか。


 ちょっと待て。

 あの時、あの白い空間でなんでヴィオニエは俺に二つ目の願いを聞いた?


 まさか。

 最初から知ってたんじゃ…… いや、間違いない。

 絶対にそうだ。 あの時教えてくれなかったのはどうせ面白そうだからとかそんな理由だろう。


 つまりほぼ同じタイミングで死んだんじゃないか?

 と言うことは……


 一つの会話がフラッシュバックする。




 "幸せで死にそうなくらいですよ! はは"


 "本当に? どうしよう嬉しすぎて私も死にそうかも。 えへへ"



 まさかね。はは。

 え? うそ。


 俺と同じくらいドキドキしてた感じ?

 どうしよう。 なんか嬉しいかも。

 この気持ちはおかしいですか?

 おかしいですよね。 はい。


 でも、もしそうならやっぱり幸せな気持ちになるんだから仕方ないよね。



 あっ。



 もしこの妄想が事実だとして… だ。

 事実だとしたら… 俺たちの死体って…

 うわ。 ないわー。



 ■


「おいっ! もう会議の時間だぞ!? 黒木部長と荒巻はどうした!?」


 そんなん俺に聞かれてもしらねーっつーの。

 ほんとに喧しいなハゲ係長が。


「お前連絡しとけ!」


 ったくしょうがねーな。

 これは美女紹介するのは無しだな。

 魔法使いに一歩近づいたな荒巻ちゃんよぉ。


「あっ、ギャル子っちー、荒巻ちゃん来てないんだけどなんかしらね?」


「相変わらずチャラいですねぇ、チャラ先輩ー。 あー、昨日彼氏とデートだったんでお仕事お願いしちゃったんでもしかしたら寝坊とかですかねぇー。 マジいい人! あっ、聞いてくださいよぉ彼氏がー…」


「ちょっとまて。 お前も仕事たのんだの? 俺もたのんじったんだけどーって、マジかー、寝坊なら俺らのせいじゃね?」


「うそっ!やばっ! 私ソラ先輩が困ったら助けるっていったんだった!! ここは私に任せてください!! 会議、どうにかしてみせますから!!」


「お、おう。じゃ、まかせたわ。 俺は連絡してみっかなー」



 結局この日、二人とは連絡が取れず、会議はギャル子が頑張ってどうにか無事終ることができた。



 次の日も二人は来なかった。

 流石にこれはおかしいと社長が警察へと通報し、警察官がそれぞれの家に向かったらしい。


 暫くして警察官が戻ってきた。

 いくらなんでもと心配になり、情報が入ったかもと社長室に行き扉をノックしようとしたところで中から声が漏れ聞こえて来た。


「…………無理心中の疑………」


「っ!? うそだろおいっ!!」


「ん? 誰かいるのかね!?」


 やべっ、逃げねーと。


 逃げた。

 涙がとまらねぇ。

 走った。


 屋上の扉を勢いよく開け放つ。


「あれー? どうしたんですかぁ? チャラ先輩。」


「俺、聞いちまったんだっ… 聞いちまったんだよっ!!」


「聞いたって何をですかぁ?」


 無理心中? あいつが?

 うそだっ!!

 そんなやつじゃねぇ!!

 あいつは… あいつが三十になるまでまだ童貞だったら俺が捨てさせてやるつもりだったんだ!!

 三十才の誕生日の前日に風俗奢ってやるつもりだったんだっ!!

 いつも迷惑かけちまってるからよぉ…


 絶対に魔法使いになんてさせねぇって… そう、思ってたのに。

 なんでだよ……


「うわっ、何泣いてるんですかぁ、ちょっと引くんですけど…」


(無理心中だってよ。)


「え? なんですかぁ?」


「だから!! 無理…心中だって言ったんだ。」


「は? なにいってるんですか? そんなことソラ先輩はしないですよ!!」


「俺だってそう思ってる!! でも、警察が……」


「うそだっ!! そんなの信じない!! 信じないもん…

グズっ… うぇーん!」


「くそがっ!! くそがっ!!」



 フェンスが軋む音だけが屋上に木霊した。





 後日、再び警察が来た。

 また社長室の前で聞き耳を立てる。



「……どうやら無理心中ではなく共に腹上死だということが検視の結果わかりました、薬物反応は認められず……」



 腹上死? 腹上死ってあれか? ヤりながら別の意味で逝っちまうやつか?


「やりやがった… あいつヤりやがったっ!! ひゃっほーーっ!!」



 また走った。

 泣きながら走った。

 笑いながら走った。


 屋上の扉を蹴破る。



 そして空に、ソラに叫んだ。


「童貞卒業おめでとーーーー!!! あっははは…… でも」


 死んだら意味ねぇじゃねーかバカ野郎。






 結局屋上の扉を蹴破り、この数日まともに仕事をしなかった俺が、この後クビになったのは言うまでもないだろう。



まさかチャラ先輩も童貞のまま逝ったとは思ってないでしょうね笑

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