バカなの?
基本毎日1~3話投稿していきます!
ぴちゃん…
ぴちゃん…
「うーん… ちめたいなぁ」
ぴちゃん… ぴちゃん…
「なんだよー、 人がせっかく気持ちよく寝てるのにー」
ゆっくりと覚醒していく意識のなかで悪態をつく。
んー? 冷たいー? なんで?
やや寝惚けながらも身体をお越し上を仰ぎ見ると
そこは物凄く巨大な草木が茂る森だった…
「っておーーい!! 森だった… じゃねーよ!! 何で俺森におんねん!!」
摩訶不思議な現状に否応なく適切にツッコミを入れながらも自らが置かれている状況を把握しようと仕切りに辺りをゆーーっくりと見渡す。
天を衝くような巨木に自分の背をも容易く越える草花、そして極めつけはバケツをひっくり返したようなサイズ感の水滴である…。
「いやいやいやいやいやいやいやいやいや、 なにが"ぴちゃん"だよ! どちゅんっだわっ!! どっちゅんっ!!なんなの? どっちゅんっ!!ってさ!バカなの?」
ぜぇぜぇと肩で息をしながらもしっかりとツッコミを入れつつどうにか平静を保とうと深呼吸する。
「ふぅ、まっ、まぁ落ち着けよ俺」
「落ち着いた? 俺」
「よし、落ち着いた。 うん。 ありがとう。 俺。」
意味のわからない自問自答により平静を取り戻し、ふと下を見ると自分を中心に水溜まりが出来ていた。
そして水溜まりの水面に映る自分をみて今日一番のツッコミが炸裂する。
「…かっ、カタ、かた、カタツムリっておーーいっ!?肩で息をするって肩どこぉーーー!!」
見事なツッコミが森にこだまする。
どこぉーー
どこぉー
どこぉ
こぉ
ぉ…
…
「ぜぇ… ぜぇ… はい。これあれね、転生ってやつね。OKです。 理解理解。」
…………。
「ってなるかっ!! こんな周り見渡すだけでもゆーーっくりなカタツムリに転生ってバカなの? 死ぬの?」
「…夢だわこれ。間違いない、夢だわ。そうだよね? ね? ね!?」
そんな自問自答を一時間程繰り返し一向に覚める気配の無い仮定夢の真偽を確かめる為、ここに来てようやく定番のあれを試してみることにした。
そう。頬つねりである。
………うん。
「俺、手ないじゃん。」
その事実で何故か冷静になり、ようやく現状を受け入れ始めた。
そして冷静になった理由のもうひとつとしては危機感。
これに尽きる
もし本当にカタツムリになってしまったとして、果たして元の身体に戻れるのか、そもそも生き残れるのか……ん?
「あれ? 俺ってどんな顔だっけ? いや、名前は? 」
わからない…。
何故かほとんどの記憶を失っているようだ。
「これは本当に転生なのか? 自分の事もまともに覚えていないのに何故自らを人間だったと言い切ることができる? 肩や手、頬なんて哺乳類なら持っているものも決して少なくない。 いや、待てよ… 哺乳類なんて括りは人間が作ったものだろう、ならばやはり自分は人間だったのか? そもそもカタツムリな時点でここまでの思考が出来ているのがまずおかしい。 ならばこれは意識体が憑依しているという可能性もあるっちゃあるか。いやでも……」
などと答えの出ない無駄な自問自答を繰り返していると茂みが物音を立てる。
ガサガサっ
「っ!?」
ガサガサっ
次の瞬間茂みから黒い影が姿を表した。
なんだこの威圧感はっ そしてでかいっ!! なんだあの化け物は…
ー【鑑定】が発動しますー
突如頭に響く無機質な声、鑑定? なんだそりゃ。
黒い影を見据える形で空中に何やら窓のような物が浮かんでいる、そして何やら書いてあるようだ。
「おお、読める! えっと何々…」
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《こだぬき》Lv.1
ただのタヌキの仔、好物はカタツムリ
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「おっふ… こだぬき… こだぬきって、めちゃくそ身構えたけどこだぬきって、ビビって損したわ、ははは… は?」
「好物はカタツムリ? カタツムリ… カタツムリ。」
「俺じゃねぇーーかぁっ!! 逃げなきゃっ!!」
全速力でひた走る、走る、走る。
とにかくがむしゃらに逃げる、いま生き残るには逃げるしかない。
こだぬきはついてきているだろうか?
振り返りたくなる気持ちをどうにか押さえ込み走る、走る。
ずいぶんと逃げた、五分か、いや、十分か…
十分に距離を稼げたはずだとようやく後ろを振り返る。
進んで来た場所がテラテラと輝いて自分の努力を讃えているかのよう… だ……
っ!?
「ほとんどすすんでねぇーーーーっ!!」
ああ、そうだ。おれ、カタツムリじゃん。遅いじゃん。死ぬじゃんこれ
ここで初めてこだぬきと視線が交わる。
恐怖で身動きすることも出来ず、ただただこだぬきが近付いてくるのを見上げることしかできない。
あぁ、短い人生だったわ。カタツムリだけど。
次の瞬間こだぬきの牙が突き立てられた。
ガリガリ、がじがじ
ん? あれ? 全然噛まれても平気なんだけど、痛くも痒くもないぞ?
「もしかして俺、つよいんじゃね?」
「ふふふ… ふはははー!こだぬきごときがやってくれたな!! 我が拳! 受けてみるがいい!!」
あっ拳ないじゃん。恥ずかしい。
「ごほん。 ちょっとまってね。」
俺攻撃手段なくね? なんかないか? 何か…
ー【鑑定】を使用しますー
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《プライオマイマイ》Lv.1
ースキルー
・鑑定
・投げ槍
・毒独
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投げ槍って槍持ってねーよ!しかも手もないのにどうやって投げんだよ!死ねってか?
「はぁ。 こうなりゃヤケだっ!!やってやらぁー!! かかってこいやぁ! たぬき野郎!!」
初めまして、瓦落落 ルマ(がらおちと読みます)と申します。
星の数程あるなろう作品のなかで当作品に目を向けて頂いて誠にありがとうございます。
昨今の嫌になるような現実世界に疲れた方に少しでも笑い、若しくは気晴らしの時間を提供出来ればと思い今作を書き始めました。
作者も忙しい日常の中でこの作品を書くことを一つの癒しとしております。
最終的なテーマは・・・。
いや、言わないでおきましょう。
さぁ!このつまらない現実を共に生き抜きましょう!!