姫騎士ミュスカ
本日二話目となります。お気をつけ下さいまし(>_<)
あれから暫く歩き高かった太陽も西日へと姿を変えた頃、遂に目的地へと到着した。
その姿は一言で言うなら荘厳、であろうか。
四方を五角形の白い柱で囲われ柱の上には、それぞれになにやら生き物を模したで有ろう彫像が拵えられている。
その中央の建造物は所謂ピラミッドのような四角錐であるがそれとは様相が似て非なる物となっている。
というのも、ピラミッドとは上下が逆なのだ、それが突き刺さるように鎮座しているのだ。
そして時間の経過を感じさせる蔦や苔がまとわりついているようだ。
しかしながら建造物自体にはさほどの経年劣化を感じない。
何かしらの魔法で維持されているのかもしれない。
西日を受けくっきりと陰影が刻まれ美しくも力強いその姿に感動を禁じえない。
「あぁ、来てよかったな。 前世じゃ忙しくて旅行なんてしたことなかったしな。 紫羅にもみせたいなぁ。」
涙がながれるや。
〈ますたぁ、ないてるの? かなしいの?〉
おっと、心配かけちゃったみだいだな。
「違うよユメ、嬉しいんだ。 連れてきてくれてありがとな。」
〈かなしくなったらいってね!ユメがなぐさめるからね!!〉
「ああ、ありがとう…」
暫く涙が止まらなそうだな……。
「さあ、ユメ、 日も落ちたし今日は疲れたから探検は明日からにして休……」
「きゃーっ!!」
「人の悲鳴!? しかも遺跡から! 仕方ない、いくぞ!!ユメ!!」
〈ごーごー! みっなごろしぃ♪〉
教育したほうが……
■
霧深い森に、一つの国があった
その森の木々はどれもが樹齢数千は下らない。
中でも一際大きな大樹の中の空洞の豪奢な印象を受ける広間に数人の人影があった。
「我が娘よ本当に行くのか?」
広間の中央奥に美しい彫刻や宝飾の類いが埋め込まれた仰々しい椅子に深く腰掛ける男の姿があった。
深紅のマント羽織り、浅黒い肌に白い髪を後ろで縛り、同じ色の髭をたっぷりと蓄え、長い耳には黄金のカフスを、額には金箍児のような装飾品を着けている。
「はっ、 例え王が行くなと申されましても決してこの意思が変わることはありません。」
そう答えるのは新雪のような汚れなき白銀の髪にピンと尖った耳、褐色の肌にややつり上がった大きな瞳とスッと通った鼻、赤く紅をさしたの唇は冬を忍ぶ椿のようである。
背はそう高くなくスレンダーながらも凹凸も兼ね備えた非常に均整の取れた体つきである。
その美しい身体を守るように急所を守る白い皮防具を着けた様は姫騎士然としていた。
「王だなんてパパさみしーい。 いかないでほしいなーパパ泣いちゃうかもー。」
これが彼の素の姿である。
「はぁ、おおさま? ここは謁見の間よ? 宰相を初め、貴族達の目も有るのだから少し真面目にやってくれるかしら?」
愛する娘に相手にされず、周りからの白い目。
王は仕方なく威厳の有る言葉使いに切り替えた。
「ミュスカ・デ・ブランよ、もう一度聞く。 どうしても行くと言うのだな?」
「はっ! このミュスカ、必ずや目的を果たしてご覧に入れます!」
ガックリと頭を垂れる王。
表情は伺い知れないがポタポタと垂れる水滴が全てを物語っていた。
****************
「ふぅ、ようやく外に出れた……」
思えば長かった、エルフの国の王を度々輩出するブラン家に生まれこの方十七年間、この霧の森から出たことがないのだから。
この国の王は世襲制ではなく民意によって決まる。
私たちのようなダークエルフと所謂一般的なエルフの間に隔たりは無く、共に手を取り合ってここまで国を支えてきた。
なのでダークエルフとエルフの王は一世代で順番に選ばれる。
今の王が私の父、セミヨン・デ・ブランが退位したら次はエルフの中から次代の王が選ばれる仕組みとなっている。
これは選民意識を持たせないための昔からの習わしであるようだ。
元々数の多くないエルフ族、その中で無為に争いが起こらないようにと遥か昔から続いている風習である。
とは言っても長命な種族故に交代は数百年に一度という気が遠くなるようなスパンでの話しにはなるのだが。
「本当に世襲制じゃなくてよかったわ。 もしそうだったら本当に死ぬまで外に出られないなんて事もありえるし。」
私の目的は表向きはエルフ族の繁栄。
とある遺跡にある古代文明の技術的な遺産である。
本当の目的は別にあるのだけど、そうでも言わなければいつまでも籠の鳥になりかねなかった。
「さあ、行こうかしら、絶対にたどり着いて見せるからね! 輪廻の渦の頂きへ!!」
察しのいい方なら今こう思っていることでしょう。
ここで!?
私もそう思います笑
はてさて、今後どうなっていくのやら。




