夜の帳
「のうユメよ、此奴ら中々に堅いのぉ……」
「うん! ちょっとユメの攻撃だと倒すのに時間かかるー!!」
ふむ、やはりあの強化はとてつもない効果を発揮しておるようじゃの、幸いなのは【砂化】が使えぬ事じゃが、にしても堅いのじゃ…… 更にこの数じゃ、連携こそしてこぬが仲間に当たる事も気にせず放ってくるブレスもかなり厄介じゃし…… どうにかまとめて倒したいものじゃが……。
む? ミュスカ嬢…… 身体を倒して何をする気かの…… いや、今はこちらも戦いに集中せねばの……。
「ねぇルケー!! またあれやろーよ!! がったい技ー♪」
合体技かの…… うむ、良い考えかも知れぬの。
「そうじゃの! 一つやってみるかの!」
さて、また不死鳥にでもなるかの……。
「あっ!! ユメいいこと思い付いたー!! ルケーお耳かしてー!!」
む? 良いことかの…… ユメの思いつきはバカに出来んからの……。
「あのねー!! ………………でね、………………後はザシュザシュでみな殺しだよ♪」
正直ユメの話しは妾には理解出来ぬ事も多々あるのじゃ、しかし物は試しじゃ! ユメを信じてやってみるのじゃっ!!
「ユメよ! 準備はいいかのっ?」
「おう♪」
ならばいくのじゃ!! 【認めざる者】!! 妾はユメの双銃のデュアルブレードに発生する摩擦抵抗を認めぬっ!!
摩擦抵抗、妾はこの言葉の意味を知らぬ、じゃがユメはこれで地竜の身体をとうふ? のように切れると言ったのじゃ、まぁ妾はそのとうふとやらも知らぬのじゃが、後はユメを信じるしかないのじゃ。
「いっくよーー!! 【確率の確率者】!【流蒔剣】!!」
ユメの楽しそうな声と共にユメのデュアルブレードの剣身が舞い散る白い花びらのようにさらさらと小さく別れ風に乗り小さく渦巻きながら徐々にその姿を消していく。
「これはゼタマンティスの時の技じゃの…… 近くの敵はユメに任せて良さそうじゃ、ならば妾は離れた敵を燃やすかの。」
■
『ダメージが入らない。』
「ふぅ…… それは防戦一方な俺も同じだよ…… それよりも周りをよく見てみなよ。」
空を見上げるとまるで紙でも切るように地竜を一方的に蹂躙するミュスカの姿と、それを補佐するように付き従うユリ、そして【焔獄咆哮】を放ち次々に地竜を撃墜するルケ、そして…… 踊る要に空中を飛び回るユメの姿が見て取れた。
『……あいつはなんで踊ってる?』
「まぁ、見てれば分かるよ。」
既に地竜は元の数の半分程まで減っている、そしてユメによってその減少速度は爆発的に早くなるだろう。
その時ユメに食らい付かんと一体の地竜が襲いかかる、しかし次の瞬間、その地竜の首は何もない空中で元よりそうだったかのように胴体から離れ地面へと落下する。
『っ!? なにあれ……』
そこから次々にぼとぼとと地竜達の頭が降って来る。
『意味がわからない……』
「あれは恐らく合体技だね、詳しくは俺も分からないけど、それより今は少し焦った方がいいんじゃない? この調子じゃすぐに君の僕は全滅しちゃうよ?」
『っ!! そうみたい、なら急いで殺す。』
っ!? また懐に入られたっ!!【幻化】!!
最速のレイピアが俺を捉える、しかしそこに実体は伴わない。
「はい、残念…… 燃えろ!!」
一気に纏っている紫焔の火力を上げ、地龍を燃やさんと仕掛けるも既にそこに地龍はいない。
ちっ、やっぱり速すぎる…… もう一段階スピードを上げるか、ここぞって所で意表を突きたかったけど仕方ない。
【減重力】!!
敢えてここまで使わなかった【減重力】、これで僅かだけど速度が上がるはずだ。
来たっ!! また懐に入られたっ! でもっ……
伸びるかのように滑らかに突きだされたレイピアをギリギリで避ける。
『っ!!』
「さぁっ!! こっからだっ!! 【五秒の悪夢を体現せし者】!!」
『……っ!? ウソつき、さっき約束したのに……』
よし、今のうちに仕込みだ!!
ルケからあれを借りて…… 後は回復してきたMPを使ってこれの準備…… そして最後に【夜の帳】!!
俺と地龍をドーム状の闇夜が覆う、これはこのフロアに入る前、【万物の創造神】で創った初めての魔法だ。
効果は対象を暗闇に閉じ込め互い以外の認識が出来なくなる事、さらに【夜の帳】の外からは中の様子を知る術が無くなる事の二つのみ。
そろそろ【五秒の悪夢を体現せし者】の効果が切れる
急がないとな。
【形態変化】!!
体が光に包まれ実態があやふやになるのを感じる、そこから【形態変化】で形を変えていく。
アギオルと戦った時のように生前の姿へと自分を作り替えていく。
手足が伸び、二足歩行へ、翼が身体を覆い服へと変化していく。
徐々に光が収まり輪郭がはっきりとしていく。
【万物の創造神】―白鞘大刀―!!
前回は大太刀を造ったけが今回は一回り小さい白鞘の刀を造った、これはレイピア相手だと大太刀では立ち回りが難しくなる為である。
『卑怯者…… あれ、さっきの変な生き物は?』
戻ってきたか。
「変な生き物はやめてよ…… まぁ、俺がその変な生き物だよ。」
『人になった、変なの…… 暗い……』
どっちにしろ変なんだな。
「ちょっとこっちも訳有りでね、外から見えなくしただけだから気にしなくていいよ。 さぁ続きといこうか」




