表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
176/185

突き出る切っ先

 

 強化された地竜が次々と空へと舞い上がり空を覆い隠す。


 〈みんなは周りの地竜を頼む! 俺はこいつを抑える!〉


 皆が頷くのを確認し【龍人化】した地龍を見据える。


『抑える? 出来るの?』


「やるしかないからね。 そっちこそ大丈夫? もう復活出来ないんじゃない?」


『【鑑定】持ち…… どの道ダンジョンにいる限り私の存在は無くならない、同じ事』


「普通ならね、俺が君を完全に消滅させる術を持ってるって言ったら信じる?」


『…………』


 ん? いきなり黙ったな…… っていうか…… めっちゃガタガタいってるけどどうした?


『し、死ぬの……?』


「え? あ、うん、死ぬね。」


『い、痛い……?』


「ん? 痛いんじゃ無いかな…… たぶん。」


 地龍は俯きブツブツと何かを呟いている。


 くっ、攻撃か!?


(いやだ、ムリムリムリ) (怖い怖い怖い)


 ……ん? 攻撃してこない……?


 少しだけ距離を詰めると呟いている言葉が聞き取れるようになる。


『痛いの嫌だ怖い怖い怖い怖い嫌だ嫌だ嫌だ嫌だよぉ……』


「あ、あの… もしもし? えっ!? 泣いてるの!? うそっ、ご、ごめん? まさか泣かれると思わなかったからさっ、えっ? これどうすればいいの?」


 ガタガタと震えながら涙を浮かべる地龍を目の当たりにして自分がなにかとても悪い事をしてしまった気持ちになる。


「わ、わかった! 消滅させないから! ねっ!? それでいいっ? ねっ!! そうしよう! 消滅は止める!! だから、ほら! 戦お?」


 俺の言葉に顔を上げ赤くなった目をぐしぐしと拭い見上げてそのまま見つめてしばらく経つと地龍はこう呟く。


『ほんとぅ……?』


 うぐぅっ、女の子の上目遣いでこれは破壊力が高い……。


「あ、あぁ、本当だよ…… 約束するよ。」


 正直スキルと魔法、ステータスは物凄く惜しいけどこのまま食べたらいろんな意味で後味が悪すぎる。


 俺の答えを聞き再び目を伏せまた少しの間静かになる。


「あの…… こ、こんどは何かな……?」


『ふ…… ふはははははっ!! 貴様など脅威足り得ない! 一人で私を抑えるなど不可能だ!!』


「…………ごめん、さっきの約束無しで。」


『嫌だ嫌だ嫌だごめんなさいごめんなさい死にたくないよぉ』


「って言うのも嘘で……」


『ふはははは……』


「やっぱり……」


『ごめんなさいごめんなさい』


「あのさ、キャラ定めよ? がばがばだよ?」


『昔私を倒した奴にも言われた……』


 勇者か、つまり勇者も地龍を完全に消滅させる術を持ってたって事か……。


「まぁ、消滅はさせないからそこは安心していいよ。」


 周りで皆が頑張って地竜と戦ってるのに俺だけこれじゃ申し訳が立たない、そろそろ真面目に戦わないとな、まぁ、このぐだぐだの中でも順調に俺のMPは回復していってる、きっとこれが勝利に近付く鍵になるはずだ…… という事にしておこ。


『怖くない怖くない怖くない…… よし、あっ、【恐怖抑制】……よし。』


 まだなんか言ってるし。


『【龍武具招来】!!』


 地龍の手元に光が集まり何かを象っていく。


「剣か……」


 どこからか呼び出されたそれはレイピア、持ち手には美しいスウェプトヒルト、刀身にも緻密な意匠が施され持ち主の美を引き立てている。


『まだ……【龍の怒り】【風神化】』


 地龍の体から怒りに満ちた朱いオーラが立ち登り、さらにそこに穏やかな風を思わせる緑色のオーラが混じり会うように発せられる、二つのオーラはやがて一つになり金色のオーラへ変化した。


『もう、怖くない、【紫電】』


 だめ押しとばかりに更に重ねがけされた【紫電】が金色のオーラからバチバチと放電を繰り返す、あたかもそれは……


「スーパーな西遊記っぽい名前の人かよっ!! しかもツーっ!!」


『意味わからない』


 正直ふざけていられる状況じゃない、相対してるだけでビリビリ力を感じる。


「これはヤバイね…… でも俺も引けない!【嵐纏い】!【炎纏い】!」


【嵐纏い】で俺の体の周りを暴風とかぜの刃が取り巻く、更に【炎纏い】を展開し風の刃が炎を帯びる、そこに僅かに回復した魔力を織り混ぜ紫焔へと昇華させる。


 足りない、これじゃまだあれを抑えるには心もとなすぎる…… それなら……


 借りるぞ! 【精霊化】!!


 体の実体が曖昧になっていくのを感じる。


 身体から柔らかな光が放たれ仄暗さのあった紫焔と混じり合うように淡く優しく変化していく。


 翼も完全に焔へと変わりキラキラとした光と共に藤色の輝きを纏う。


 更にその煌めく光の間を展開していた【碧雷渡】が軌道を残しバチバチと駆け廻る。


「……待ってくれてありがとう。」


『強者の余裕』


 いや【恐怖抑制】の効果で落ち着いただけでしょ。


『行くよ』


「っ!!」


 その言葉をその場に残し地龍は既に俺の懐へ入り最速の突きの動作へ入っている。


 早いっ!! 【瞬身】っ!!


 レイピアの切っ先が焔の刃と衝突しながらもぶれる事なく突き進み目前へと迫る、紙一重の所で【瞬身】で視界が切り替わり背後を取るが、直ぐ様地龍も振り向き迎撃体制を取る。


 お返しだっ!! 【飛龍帝の爪】っ!!


 右腕を振り抜き、振り返った地龍の死角の背後から爪撃を飛ばすが、驚異的な反射神経で横へ飛びそれを躱し体勢を立て直す。


『思ったより強いね』


「そりゃどーも」


『でもこれで終わり【脱水】』


 っ!! これは受けたらまずいっ!! 【非実体化】!!


【脱水】、これは文字通り対象の水分を抜く攻撃だ、つまり普通に受けたらミイラになるってこと、絶対に回避しなきゃだ。


『油断したでしょ』


 っ!?


【脱水】の回避に気を取られた一瞬の隙を突き背後を取られた。


【女神の瞳】と【碧雷渡】の効果で引き伸ばされた体感時間の中で対策を考える。


 既にレイピアが迫って来ているはずだ、先程【非実体化】を使ったから一定時間使えない! 【瞬身】はこのタイミングじゃ発動までギリギリ間に合わないっ! どうするっ!! 【精霊化】で物理は基本的に効かない、でもあの紫の雷を完全に無効化することは恐らく難しい…… くそっ! 間に合わないっ!! っ!!


 ゆっくりとレイピアが身体を突き抜け胸から切っ先が出てくるのが見える……。


 レイピアは確実に心臓を捉えている、この状態で紫電が流れたらどうなるのか……。


 それは後ろから聞こえる地龍の笑い声から明らかだろう……。


こんにちは(*_*)


ここ数日仕事で遠出していることが多く更新がペースダウンしております申し訳ありません( ;∀;)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ