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龍人化と地竜、そして仲間

 

 永遠にも感じられるブレスが通りすぎた後、【砂嵐】が未だに吹き荒ぶ中で俺は吐き捨てられたガムのように地面にへばりついていた。


 羽は全て抜け落ちるどころか骨すら残らず根元から消失し、額の宝石も砕けちり、全身の毛もほぼ残っていない、部分的に骨が露出し生きているのが奇跡と呼べる程の惨状であった。


 みんなの心の声が聞こえてくる…… 大丈夫だよ、そんなに叫ばなくても…… だって……


「た、えきった…… から…… み、【身代わり】」


 残りのMPの半分を消費し、今俺が受けたダメージをそのまま地龍に与える。


 ああ、痛みが引いていく…… 物凄く痛かった。


『ーーーーーーーーーーーーっ!!!』


 今は地龍の叫びすら心地良く感じられる……。


 〈ふぅ…… みんな、心配かけてごめんね、もう大丈夫だよ!〉


「そらっ!! 無茶しすぎだよっ!! 死んじゃったかと思ったんだから!!」


「ユメは信じてたけどびっくりした!!」


「主はバカなのかのっ!? あまり心配させないでおくれ。」


「……次はその役、私にお命じ下さい。 私とユメの存在は体に依存致しませんので。」


 〈す、すみません、次は気を付けます……。〉


 にしてもまだ地龍はのたうち回ってるのか、まぁわざわざ攻撃を受ける時間をコントロールして【ウォーターライフ】で被ダメージを出来るだけ稼いだ上でそのダメージを押し付けたからほぼHPは全損なはずなんだよねー。


 そうなってくるとそろそろ…… ほら始まった。


 龍の形を成していた硝子の砂粒がさらさらと崩れ初め、地面に溜まる、そしてその砂粒一つ一つが光を放ち始め風に舞うように巻き上げられ再び先程までと同じ地龍の姿を象る。


「そら様、HPが全快しています、やはりこれが【数多の命】のようです、そしてカウントが1になりました。」


 〈予想通りだね、ありがとうユリ。〉


 カウント…… 戦闘前に地龍の詳細を見ていた時、この見るからに私復活しますみたいな魔法を観たら数字が書いてあった、それで俺達はこれが残機、つまり残りの命の数だと思ったんだけど、その時の数字は2、そして今は1。


 〈これで復活はもうしないだろうね、でもその分向こうも本気で来るはず、俺のMPも残り25%くらいしかない、ここからが正念場だよ。〉


 《二回目…… 許さない》


 っ!? 【念話】…… いや違う、持って無かったはず…… ならなんだ? 魔法にもスキルにもそれらしい物は……


「マスター!! なんかするみたい!!」


 そうだ、考えてる場合じゃない!


 《【龍人化】……。》


 ここまでで一番眩い光が地龍から発せられその身体が圧縮されるように徐々に小さくなっていく。


 嫌な予感がする! 【龍人化】を完成させちゃいけない!


「ユメっ!! 撃てっ!!」


「うんっ!! 蜂の巣だっ!!」


 《【雷門】》


 ズガーーンっ!ズガーーンっ!


 ユメが双銃のデュアルブレードを構え発射するまでの僅かな時間の間に何の前触れも無く、突然二本の実体を伴う雷が地龍の前に少し離れて横に突き刺さり、二本の雷の間でバチバチと放電し門を成す。


 ドドドドドドドドドドドドっ!!


 ユメが放った魔力の弾丸は全て【雷門】で消失させられ地龍へは届かない。


 阻まれたっ! なら【飛竜帝の爪】!!


 不可視の爪撃を横から叩き込む。


 《【風刃(ふうじん)】》


 ギンっ!!


 俺の攻撃を迎え撃つように風の刃が生み出され弾かれる。


 これならどうだっ!!【瞬身】!!【碧雷渡】!!


 地龍の直上へ【瞬身】で移動し【碧雷渡】の放電させた雷撃を叩き込む。


 《【雷刃(らいじん)】》


 バチっ!!


 くっ、今度は雷の刃で相殺されたっ! それならこれで押し潰す! 【万物の創造神】―大岩―!!


 俺の攻撃を避けないで迎撃してるって事は、恐らく地龍は移動が出来ないはずだ!


 地龍の頭上に大きな魔方陣が描かれ、そこから巨大な岩が造り出され自由落下を始める。


 《【風化】》


 約三十トンにもなる巨大な岩が空中でさらさらと砂へと変化してゆき、直撃間近で完全に未だに止まない【砂嵐】に紛れる。


 直後、地龍を中心に爆発的な暴風が吹き荒れ砂を巻き上げ、埋もれつつあった赤茶けた大地が再び顔を覗かせる。


 その暴風が止んだ時、【砂嵐】も止んでいた。


 クリアになった視界の中で見るその姿を一言で例えるならそれは昂然。


 背はやや高く、頭部から突き出る二本の角は正に東洋の龍のそれだ、碧い髪は長く足首まで達する、スレンダーなボディのラインがしっかりと見て取れるバッサリとサイドにスリットの入った透明なドレスには要所要所に龍の鰭のような装飾があしらわれている。


『許さない。』


 っ!! 話せるのか!


 〈な、なぁ、少し話しを……〉


『うるさい、黙って殺されろ侵入者。【龍徒召還】』


 聞く耳もたずかっ!


 俺達を取り囲むように全方位で竜巻が発生し、そこから夥しい数の小さな地竜が生み出されていく。


 小さいといっても龍を基準に見てという注釈が付く、実際には頭から尾の先までで約五メートル程にはなるだろう。


 さらにその姿は地龍のそれとは全く異なり、最初の想像通りややトカゲよりのずんぐりむっくりとしたゴツゴツとした姿だった。


 全ての地竜が出揃った、その数およそ二千。


「これは厄介な事になったの……」


ルケの呟きに答えるように地龍が言葉を発する。


『楽に死ねると思うな、【龍徒強化】』


 ガァァァァァァァッ!!


 っ!? いきなり周りの地龍が一斉にもがき出した!?


「そ、そら!! みてっ! 背中がっ!!」


 ミュスカに促せるままに一体の地竜の背中に注視するとボコボコと背中が盛り上がり、そのまま肉を突き破る形で翼が生えていくという衝撃的な光景が目に飛び込んできた。


 さらに至る所で次々に同じ光景が繰り返され、終いには全ての地竜の背に翼が生えた、それどころか先程よりも筋肉が発達し体長も二メートルほど伸びているようだ。


「そら様、一体一体がかなり強化されております。」


 くっ、どうするべきだ…… 今の俺のMP残量で大量の【幻想鏡】で分身を造りだすのは正直つらい、下手をしたらこの後の地龍戦において致命的な隙を作ることになりかねない、ならいっそ地竜は無視して一気に地龍を攻めるか? いや、それも【龍人化】の力が不確定なこの状況では悪手か…… くそっ! 考えがまとまらないっ!!


「ねぇそら? どうせ今この状況をどうするか考えてるんでしょ?」


 っ!!


「そのどうするかに私達は入ってるのかな? どうせ一人でどうにかする方法を考えてるんでしょ?」


 〈っ!! ミュスカ……〉


「ほら、図星だ! ふふ、もうちょっと私達を頼ってくれてもいいんだよ? だから周りのは全部私達にまかせて!!」




 そうだった…… 俺には頼りになる仲間がこんなにいるじゃんか、戦う前まで力を合わせてなんて言っときながら一番一人よがりなのは誰だよっ…… バカだな俺は、本当に学ばない。

 いつもそうだった、結局俺が俺がって馬鹿の一つ覚えみたいにでしゃばって、それでうまくやれたみたいに思い上がってただけだ。


 でもそうじゃない、それじゃ今こいつに勝てないんだ。


 だからもう一度仲間達に宣言しよう……。


 〈ミュスカ! ユメ! ルケ! ユリ! 皆で勝つ!! いくぞっ!!〉


「うんっ!!」

「おー♪」

「当たり前じゃのっ!!」

「共に参ります。」


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