口は災いの元
霧が押し退けられてる! これなら指示がなくても何処にいるか分かる!!
まずは【非実体化】を使わせないとな!! 【封樹】!!
奴の足元から木の根が這い出しそいつを拘束する。
「【非実体化】をつかうよ!!」
ミュスカの声と共に木の根の隙間が無くなる。
よし! 逃げた先が分かる!!
その進行方向には既にルケが待ち構えている。
「ルーちゃん! 左から斬撃!!」
「うむ!!」
ルケは剣よりリーチの長い薙刀を振り抜き、そのまま身体を狙っていく。
「ルーちゃん跳び跳ねたよ!!」
どうやら敵はルケの薙刀を飛び越えたようだ。
「私には見えているのですよ? 【ダークエッジ】」
闇のオーラを携えた直刀の斬撃が敵を捉える。
ガキーンっ!!
音から察するにユリの斬撃は剣で受け止めたようだが、勢いを殺せず吹き飛ばされた。
「そう、あなたはここに向かって来るよね! 【抜刀術】!【質量変化】!!」
吹き飛ばされた勢いを利用し一度引こうとしたようだがミュスカが心をよみ既に回り込み追い討ちを浴びせる。
ガギンッ!!
【抜刀術】の最速の振り抜きにインパクトのタイミングで【質量変化】が加わり重さがましたミュスカの一太刀が敵の剣をへし折り剣身が根元から折れ地面に落ちる音が響き、さらに折れた剣身が姿を表した。
更に吹き飛ばされた奴が鍾乳洞の壁に激突する音が続く。
「はいはーい! ユメの番!! 蜂の巣だーー!!」
ドドドドドドドドドドドっ!!
壁に打ち付けられた所にユメの魔力弾が雨のように降り注ぐ。
「ユメちゃん! 一分経つよ!」
「おっけー♪」
奴は何処に逃げた!? 衝撃で霧が一時的に飛ばされてる! ルケ、借りるよ【索凪】! どこだ…… ん? 動いてない?
もしかして倒したのか? いや、流石にそれは呆気なさすぎる。
〈強き者達よ、お前達の強さに敬意を……〉
っ!?
【念話】!?
その【念話】の直後、遂にそいつが姿を現した。
全身が鏡のように磨き抜かれた鎧がそこに立っていた。
HPを削られてMPに変換出来なくなったのか?
ユリが後ろに降り立ち耳元で教えてくれる。
「そら様、あれはリビングアーマーロードです、中には何も入っておりません。」
へー、空っぽで生きてるって不思議だな。
〈我が名はリーデル!! 誇り高き騎士なり!!〉
いや、誇り高い騎士なら最初から姿を現して戦うでしょ。
しかもロードなのに騎士ってなんか変じゃない?
「姿を現すって事はもう潔くやられる覚悟が出来たってことでいいのかな?」
〈ふ…… 馬鹿め。 そんなわけが無いだろう! 少し考えれば分かりそうなものだがな? 所詮は獣か。〉
なんなのこいつ、めちゃくちゃ煽ってくるじゃん。
さっきまでだんまり決め込んでチマチマ攻撃して隠れてを繰り返してた奴の言葉とは思えない。
しかも強き者に敬意をとか言っといて敬意の欠片も感じないんだけど?
「早く用件言わないと攻撃再開するよ?」
〈節操まで無いとみえる…… 少しは我慢を覚えたらどう……〉
「【飛龍帝の爪】!!」
ズガーーーンッ!!
距離を無視した爪撃が再びリーデルを壁に打ち付ける。
〈ぐぅ…… 卑怯な手をっ!!〉
「もう一度だけ聞く、何故姿を現して話しかけてきた? 最後のチャンスだ、考えて発言した方がいいよ?」
〈……一対一での真剣勝負を提案する。〉
は? なに言ってんのこいつ…… 不利になったら一対一でやろうって? 俺の分身殺しておいて? いやいや、虫が良すぎる。
それにこちらにメリットが無さすぎる。
「断る。」
〈なんだと!? 貴様それでも騎士か!!〉
いや、騎士じゃないし!!
「こちらにメリットが一切無い提案なんて受けるはず無いだろ? 所詮は空っぽの鎧だな。」
よし! 言い返してやった!!
〈メリットとは利点の事か? ある…… 有るぞ!!〉
「へぇ、どんな?」
〈このリーデルに勝ったら次の階層へ進めるぞ!!〉
「【飛龍帝の爪】。」
スガーーーンッ!!
再び爪撃が襲うが今度は下から抉るように打ち込んでやる。
倒せば階段でるから! 決闘の意味が全くないじゃん!
〈くっ、この卑怯者が!!〉
「飛龍帝の……」
〈ま、まてまてまてまて!! 利点はもうひとつ有るぞっ!!〉
下らない内容だったら次は本気でヤろう。
〈地龍の弱点…… どうだ!? 知りたいだろう!?〉
……正直知りたいな。
「弱点? どんな?」
〈ふ…… 今言うわけが無いだろう? 阿呆め。〉
……よし、ヤろう! 飛龍帝のつ……
「そら? 私がやろうか? 決闘でしょ?」
〈いや、そうなんだけど、もういいかなって。 死にかけた時に聞けば話すと思うし。〉
〈なんと卑劣な考えだ!! そこの女騎士! 嗜めてやれ!!〉
「私? 女騎士じゃないけど…… 地龍の弱点先に教えてくれたら決闘なんかしなくても私は見逃してあげてもいいよ? 下の階層への階段出せるならだけどね。」
お、ミュスカにしては意地が悪いな。
〈ふ…… 怖じ気付いたか。 まぁ良いだろう、無益な殺生は好まない事だしな!〉
いや、俺の分身殺したよね?
〈ならば無知な貴様らに教えやろうか、龍種にはな、龍核といって……〉
……………
………
…
龍核の話しを無闇矢鱈にペチャクチャペチャクチャと回りくどく話し終えふんぞりかえっているリーデル。
……知ってんだよっ!! そんなの知ってるの!! 龍核が弱点なのは分かってるのっ!! めちゃくちゃ使えないじゃん!!
〈少しは利口になったか?〉
うざっ…… もう、話すのも疲れたな。
「早く下の階層の階段だしてよ。」
〈出して下さいお願いしますと言ったらな!〉
「……早くしろよお願いします。」
〈相当育ちが悪いようだな…… まぁ、いいだろう。 開け。〉
鍾乳洞の中心付近に先程までは無かった階段が出現する。
〈あっ、岩棚に忘れ物した、皆先に降りてて!!〉
「分かったよ! じゃあ魔方陣の所で待ってるね!」
ミュスカがこちらにウィンクし、先に階段へ向かい、皆が階段を降り終えるのを確認してリーデルに向き合う。
〈なんだ忘れ物とはみっともない奴だな?〉
「あぁ、そうだな。 忘れ物はダメだよな? 【万物の創造神】―夢槍― 【付与術神】! 【美食家】! 【超念動力】―恋矢―!!」
恋矢が浮遊し、その切っ先をリーデルへと向ける。
〈な、なんだ! 鎗など出してどういうつもりだ!? まさか約束を違えるつもりじゃないだろうな?〉
「俺は約束なんてしてないよ? ミュスカだろ? お前を見逃すって言ったのは? ちゃんと言ってたじゃないか“私は見逃してあげてもいいよ“って。」
〈この痴れ者共がぁ!! よくも謀ったなっ!! 恥を知れ!!〉
「いい加減大人しく食われろ! 【封樹】!!」
〈何度も捕まると思うな!【非実体化】!!〉
「何度も逃がすと思うな?【超念動力】!!」
〈ぐっ!! 放せ!! この虚言師!!〉
よくもまぁそんなに悪口浮かぶな。
頭空っぽのくせに。
「終わりだよ。 因みにもう復活も出来ない。 来世では口に気を付けろよ? じゃあね!」
恋矢!!
〈や、やめろぉぉ!!〉