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いい死に方と朝霧とえっち

 

 俺の呼び掛けに鎖鎌を持つユリ以外が全員で集中攻撃を仕掛ける。


 ユメは【舞矢】を浮かべ魔力の弾丸を雨のように浴びせ、ルケは【焔獄咆哮】を放つ、ミュスカは紫陽花を【伸縮自在】で伸ばす事による刺突を繰り出す。


 俺は…… 【飛龍帝の爪】!! いまは真正面! 外さない!!


 全ての攻撃が直撃した。


「やったかの?」


 おやー、ルケさん、ここでそのセリフはフラグ立っちゃうんじゃない?


「っ!! ルーちゃん!! そらに【絶界】張ってっ!!」


 ミュスカの声が鍾乳洞に響くのを聞きながら、気が付くと俺は致命傷を負っていた……。


「ゴフッ… な、何が…… 」


「そら様っ!! この塵芥がっ!!」


 掠れる視界の中でユリが鎖を引き鎌で切りつけるのを見る。


 あぁ、あぁ…… あ、んなに、怒って……。


「ダメだよ! おねーちゃん!! 一分たったよ!!」


 ユメの言うとおりユリの鎌での攻撃は空振りに終わった。


「そ、そら…… そんな……。」


「主よっ!! 主っ!!」


 そんな顔するなよ…… そんな顔されたら俺がつらいじゃん……。


「そらっ!! なんで…… なんで!!【未来の担い手】は!? どうしてっ!! ……ねぇ!! 答えてよそらっ!! そら……」


 答える力は残ってないな…… 皆、そんなに泣いて…… あぁ、なんかこういう死に方も悪くないな……。


 体か光になって登って行く。


 キラキラと、ゆらゆらと、何かに導かれるように……





 そして光は俺に吸い込まれる。

 はい、おかえり。


 〈うん、それが【未来の担い手】は本体しか使えないみたいなんだよね〉


 天井付近の岩棚から降り立つ。


「へ…… え? そ、そら?」


 〈そうだよミュスカ、こっちが本体でペア作るときに出した分身の方がさっきまで戦ってたやつだよ。〉


 あれ…… ユリがなんか睨んでる? 目も赤いし……。

 怒らせちゃったかな……。


「心配したのじゃ!! 主よ! そういうことは事前に言っておいて欲しいのじゃ!!」


 〈ご、ごめん、【氷柩】使った時にユメと目があったから皆も気付いたかなと思って…… いや、あのごめん。〉


 分身体は魔法がかなり制限されてて【氷柩】使えないから仕方なく本体で使ったんだよな。


「ユメは知ってたよー♪」


 まぁ、最後に本体がペア組んでたのユメだし、一番後ろ歩いてたから俺が上に行くの見てただろうしな……


 〈と、とりあえず話しがしたいからルケ、悪いけど【絶界】張って貰ってもいい?〉


「お願い権をもうひとつくれるなら良いのじゃ。」


「わ、わかったよ。 お願い!」


「うむ! 【絶界】!」


 皆が一ヶ所に集まり【絶界】へと入る。


 ん? さっきルケお願い権もうひとつって言ったよな…… なんだっけ…… あぁ! スミレの時にそんな話ししたなそう言えば! 忘れてたや。


 〈それでなんで俺の分身いきなり死んだの?〉


「……それは私が説明するよ!! アイツの魔法に【身代わり】っていうのがあってね、直前に受けたダメージをそのまま対象に肩代わりさせる能力みたい!」


 ミュスカもまだ少し怒ってそうだな……


 〈え、じゃあ倒しようが無くない?〉


「それは大丈夫だよー! 一回使ったら一日は使えないみたいー!!」


 再使用までに丸一日か、強力過ぎる魔法だしそのくらいの制限はあって当然か……。


 〈ユメ、結局あいつ今ダメージ与えられてるのかな?〉


「んとね、ほぼノーダメージだよー! でもMPはもう少しで無くなりそう!!」


「ユメよ、あの透明になるのは魔法かの?」


「そだよー!!」


 ならもう少しで姿を現す筈だ、それを待てば安定して戦えるな。


「でもねー、HPをMPに変換するスキル持ってるからまだまだ魔法使えると思うよ!」


 HPもMPも時間である程度回復する、HPをMPに変換出来るならMPの回復速度はかなりの早さになるな…… やっぱりこのまま倒しきるしかなさそうだ。


 どうにかしてあいつの動きが分かれば俺とルケが動きやすくなるんだけどな。


 〈ユメ、ユリ、例えばなんだけどあいつに塗料か何かかけたらどうなる?〉


「塗料もまとめて見えなくなりますね。」


 マジかー……。


 〈なにかあいつの動きが俺とルケとミュスカに視認出来そうな案は無いかな?〉


 ……………………。


 皆が一様に沈黙するなかユリが静かに手を挙げ、完全に姿を捉えられるわけではないのですが、と前置き一つの案を挙げる。


「私の魔法に【朝霧】というものが有ります、本来は辺り一面を霧に包み不意打ちを仕掛ける為の魔法なのですが、霧の範囲を足元のみに限定して霧の動きで敵の動きをある程度読む事が出来るのでは無いかと……」


 足元だけに霧…… 歌番組で足元モクモクしてるような状態だな……。


 でもそれなら確かにこのほぼ無風の鍾乳洞内であれば奴がいる場所だけ霧が押し退けられ口頭での指示よりタイミングは計りやすい。


 〈よし! ユリ、それでいこう!! ここからユメは攻撃に集中してもらって、ミュスカは見えない上半身の動きを逐一報告してほしい!〉


「これで妾もガンガン攻められるのじゃ!」

「ユメも攻めるー!!」

「了解! 任せて!!」

「では発動します… 【朝霧】!」


 鍾乳洞の地面から四十センチほどの高さまでが霧に覆われる。


 鍾乳洞の美しさと相まって幻想的とすら言える光景を生み出している。


「【絶界】を解くのじゃ!」


 俺が頷くと【絶界】は解かれ俺達の足元まで霧が満たされた。


 ユリは姿を既に消しているようだがまだ霧を見るに目の前に立っているようだ。


 試しに触ってみよ……。


「ひゃん………。」


 ……………なんかごめん。


 霧の穴がこちらへ近づきユリが耳元で本当に小さな声で囁く。


「そら様の…… えっち……」


 おぅふっ……。

 大ダメージだわこれ……。


 そしてユリは跳ね上がり完全に姿を隠した。


 う、うん! 霧の動きを見る予行演習だよ? ほんとだよ? ……ルケとミュスカがジト目で見てくるよ? ……うん。


 〈……ごめんなさい。〉


 ……………………。


 沈黙が痛い……。


「皆! あそこの柱の影にいるから気をつけてね!!」


 ユメっ!! 色々とナイスっ!!


 さぁ行こう! 今すぐ攻めよう!!

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