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見えざる者

 

 ユリの言った通り、少し進むとかなり大きな空洞に突き当たった。


 いや、でかくない? 東京のドーム球場くらいある気がする。


「わぁ…… 綺麗…… 鍾乳洞だね。」


 ミュスカの言うとおりかなりスケールが大きいが正に鍾乳洞だ。

 天井からつららのように伸びるつらら石、そこから滴る水滴が途方も無い時間をかけて作り上げたであろう石筍、リムストーンによって棚田のように折り重なる透き通った水溜まりに地面と天井を繋ぐように出来た太い柱。


 本当に綺麗だ……。


 だけど、つくづくダンジョンって変だよな、この天井の高さなら前の階層突き抜けてるはずだもんね。

 もっと言えば鍾乳洞って何万年単位で作られる物なはずだけどこのダンジョンがそんなに前から有ったのかも分からないし、何階層とか言ってるけど実質的には階段によって繋がった別空間って言われた方がしっくり来る。


「マスター! 敵が近くに居るよ!!」


 っ!! ボスだな!


 ユメの警告に辺りを見渡すがそれらしい姿は見えない。


 ユリの姿が無いのはいち早く姿を消したからだろう。


 ん? 姿を消した…… もしかして……


 〈皆で気を付けて! 多分姿を消してる!〉


「うむ、確かに匂いは感じるのじゃ……」


 〈ルケは正確な位置は把握できる?〉


「……いや、これは厳しいの。」


 〈ユメはどう?〉


「見えないけどわかるよー!!」


 〈ミュスカは相手の心を読むスキル持ってたよね?〉


「うん! 一回居場所が分かれば【心繋ぎ】で考えが読み取れるよ!」


 なら……


 〈ユメは敵の居場所をミュスカに伝えて! 後、敵の動きの先読みが出来る魔法で動きの把握を! ミュスカの【心繋ぎ】がかかったらユメとミュスカが俺とルケに細かく指示を飛ばしてくれ! ユリは全体の補佐と攻撃をよろしく!〉


「分かったのじゃ!!」


「はーい♪【確率の確立者】!! ……ミュスカ!! あの辺!!」


「了解だよっ!! 【心繋ぎ】!! ……読めたよ!! 見つかって警戒してるみたい!!」


「ルケ、ここからはユメとミュスカの指示で動く事になるけど反転が有るから指示に惑わされないでね!」


「分かったのじゃ!!」


 〈ユメとミュスカも隙が有ればガンガン攻撃しちゃってね!!〉


「はーい♪」


「うん!!」


 〈ユメ、大体でいい、敵の姿と大きさを教えて!〉


「んとね、ルケと同じくらいの人型だよ! 武器も持ってる! えと、たぶん剣!! あっ! 動くよ!! ルケに真っ直ぐ来る!!」


「ルーちゃん! 正面の振り下ろし!!」


「うむ!!」


「あっ! ルケそれだめだよっ!! 避けて!!」


 ユメの声を聞きルケは咄嗟に横に飛ぶ。


 先程までルケがいた場所でガキンっという音が響く。


「ユメよ、何をみたのじゃ!!」


 ユメが垣間見た未来でルケは恐らく攻撃を受ける事になったのだろう。

 俺もその理由が知りたい。


「ユメちゃん! 今は様子見で一度隠れたから今ならはなせるよ!」


「うん! ルケ、今【認めざる者】で攻撃を無かったことにしようとしたでしょ?」


「うむ、更にそのまま拘束するつもりじゃったの。」


「その後スケスケの人の【非実体化】って奴で逃げられてその時に攻撃されちゃうの!」


【非実体化】…… そのままのスキルか魔法だろう、厄介な力だ、それを使っている間は物理も魔法も恐らく当たらない…… 隠れた所を見ると継続時間も短いし連続使用も出来ないはず、勝機はそこだ。


「なるほどの、ユメよ、助かったのじゃ!」


「うん!!」


 姿が見えない事がこうも厄介だとは思わなかった。

 何かしらの方法で位置だけでも分かれば……。


 ん? あれ?


 〈ルケ、【索凪(そなー)】は?〉


「その瞬間何処にいるかはわかるのじゃ、しかしそこから動かれたら意味が無いのじゃ!」


 〈断続的に使えばある程度分かるんじゃない?〉


「【索凪】は周りをぐるっと見渡すような魔法じゃからの、周りを調べている間は再発動できないのじゃ、大体一周三秒じゃの。」


 三秒…… 戦いの中の三秒はあまりに長い、気づいたら目の前なんて事も起こりうる。


 〈そうか、因みに今何処にいる?〉


「【索凪】! ……あの柱の後ろじゃの。」


 あそこか。


「皆、気を付けてー! 動くよー!【非実体化】は連続使用出来ないみたい! 約一分の使用不可時間が有るみたよー!!」


 ユメの警告に再び身構える。


「マスター! そっち行くよー!!」


 このままずっと受け身じゃ拉致があかない! 【非実体化】の後の一分が最大のチャンスだ!


「そら! 右に回り込んでそらの翼を切り落としに来るよ!!」


 右って事は左に攻撃するつもりで…… 【嵐纏い】!!


 俺の周りに風の刃が渦巻く、さらに右側に刃を片寄らせる。


 キキキーン!


 敵が【嵐纏い】に突っ込みそうになって風の刃に気付き剣で防いだ音だろう。


 ならまだそこにいるはずだ!! 【超念動力】!!


 よし! 捕らえたっ!! けど…… 【非実体化】で抜けたかっ…… でも計画通りだ!!


「ルケ!! 【索凪】で現在地を割り出してそこに攻撃を!! いつまでもやられっぱなしじゃいられない! こっちから攻める!!」


「うむっ!! 【索凪】!! ……そこじゃっ!! 【焔獄咆哮】!!」


 石筍の影に隠れている敵に向かって灼熱の焔が迫る。


「右に避けるつもりだよ!!」


 ドガーーーーンっ!!


「ミュスカ! そのままそっちいくー!!」


「うん! 待ってたよ!!」


 ミュスカは紫陽花を【抜刀術】にて抜き放つ。


 キンっ! キンキンっ!!


 次の手が分かるとはいえ、見えない敵と何合も打ち合っていく。


 凄いな、ミュスカ…… 負けてられないなっ!!


【氷柩】!!


 氷の結晶が浮遊し次々にミュスカの前を目掛けて飛んでいき氷の柩を造り出す。


 捕らえたか!?


「【非実体化】使ったよ!!」


 クソっ、一分を過ぎたかっ!!


「隠れても無駄ですよ? 【シャドーホール】黒白刀―白百合―!!」


 ユリの声だけが聞こえる。


【シャドーホール】か、影の中に異空間を作る魔法だったな。


 ガキーンっ!!


 ユリが振り抜いたであろう俺が創った直刀が敵を弾き飛ばしたようだ、だけど気配を読んだのか剣でガードしたみたいだな。


「【シャドーホール】影鎌―忍冬―! まだ終わりじゃありませんよ?」


 金属音が響き鍾乳洞に反響するとユリが姿を現した。


「捕らえました。」


 ユリの手元から俺が創った鎖鎌の鎖が伸び、確かに何かを捕らえているようだ。


 ユリ流石!! 時間が無い!


 〈皆総攻撃っ!!〉

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