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帝王の終わりとヴィオニエの決意

 

「【封樹】!!」


 淘太が怯んだ隙を突き這い出た木の根が拘束する。


「ミュスカー! ルケー! 下がってー!! 【舞矢】みっつ!!」


 光の輪が生み出され一定間隔で直線上に浮遊する。

 ルケとミュスカは瞬時に意図を察して、淘太と【舞矢】の直線上に陣取ると攻撃体制に入る。


「ぐぅ、放せ!! 何をする気だ!! こ、こんな物直ぐにぃ……」


 やばいな、【封樹】がもう解かれる寸前だ、なら【五秒の悪夢を体現せし者】!! ヴィオニエがぐーたらしてる夢を見るがいい!!


 カラン!


 大剣を落とし何やらぶつぶつ呟いている。


「ユメちゃん! この輪っかがそうなんだね! 【異空間収納】月弓―朧―! 【命弓】!【精霊の矢】―風―!」


 魔力を矢として放つ月弓―朧―につがえられたのは風を纏う【精霊の矢】だ。


「おぉ! ミュスカ嬢かっこいいの! ならば妾も……【焔獄咆哮】!!」


 ルケの目の前に膨大な量の魔力が集まりグングンと熱量を増していき更に圧縮されていく。


「ルーちゃん! 合わせて!! 行くよっ!!」


 ミュスカが矢を放つと同時にルケが【焔獄咆哮】を放つ、それらは空中でぶつかり合うと矢が纏う風に巻き込まれるようにルケの焔が矢を包み込み更に熱量が爆発的に跳ね上がる、更にユメの【舞矢】を潜る度に速度は倍々に上がり全てを焼き貫く紫焔の矢となる。


「っは!! ヴィオニエ様!? っ!!」


 ズガーーーーンっ!!


 紫焔の矢は淘太の右半身を焼失させるだけに止まらず、延長線上の壁を深く深く穿った。


 衝撃と爆風で全ての蝋燭が消え去り再びステンドグラスから溢れる光がスポットライトのように淘太の前に影を落とす。

 いや、最初より光が強くなっている気がする。


「【ライトスポット】、【影翳り】。」


 ユリが淘太の前に現れる。


 ユリの魔法か!!


 敢えてユリが姿を表したのには理由があるはずだ、なら俺がやることは…… 【隠密】!!


 ユリの口元が僅かに笑った気がした。


「まだだ…… 我は終わっておらん……!!」


「そうですか。 では幕を降ろして頂きましょう【シャドウエッジ】」


 淘太は残った左腕で防御力姿勢を取る、がしかし、ユリの漆黒の刃が切り裂くのは影である。


「ぐぁっ! なんだとっ……!」


【影翳り】の効果で両足の影を断ち切られ淘太はドシャりという音と共に地に伏す形となる。


「本当の帝王とは何方か知るといいでしょう。 そら様どうぞ……」


 帝王は名乗る気無いけど、ナイスアシストだユリ!!


【万物の創造神】―十字架―!! 【付与術神】で【聖撃】!【炎纏い】!!


 人の身の丈の倍ほどもある十字架が魔方陣より出現し、聖なる炎を纏い垂直に落下する。


「まだ…… だっ!! 我は負……」


 ズドーーーンっ!!


 十字架は容易く淘太を貫き地面に突き刺さる、それはさながら墓標のようだった。


「わーい! 勝ったー♪」


「……そうか、俺、まけたのかぁー…… 強いなあんたら……。」


 まだ僅かに息がある…… 呼吸してるかどうかは怪しいけど……


「仕事復帰お疲れ様、おかげでいい練習になったよ。 なにかヴィオニエに伝えることが有るなら聞くけど?」


「んー、ならいっこだけ頼むわ……」


「あぁ。」


 その後たっぷりと時間を使い、たった一言だけ淘太は伝言を託した。


「ありがとう……と。」


「わかった。」


 その言葉を残し淘太は光となりダンジョンへと還っていった。


 〈みんなお疲れ様! 全員での初連携としてはなかなか良かったと思うよ! すこし休んで次の階層に向かおうか。〉


 ■


「懐かしいわね、山梨淘太…… ありがとうって何よ…… そんなのこっちのセリフだって言うのよ。」


 ちょっと私の事が好きすぎて気持ち悪いけど悪い子では無かったわね…… アスティに言ってダンジョンから解放してあげようかしら…… あの姿じゃ苦労するかもしれないけどあそこにずっと居るよりはマシでしょ。


「ちょっと!! シャススプリーン様の所から一人受け入れるってどういう事ですか!?」


 びっくりした、また誰か厄介なのが来たのかと思ったわ…… あらあら血相かえて、折角の可愛い顔が台無しだわ。


「プーちゃん、どうしたの?」


「どうしたもこうしたも無いです!! 説明して下さい!! これは下手をしたらあの世界がそいつに乗っ取られるような事態なんですよ!!」


「んー、そうなんだけどね。 仕方ないのよ。」


「仕方ないで済む問題ですか!? なんで受け入れるなんて言ってしまったのですか!?」


「だってー、そら達に加担してたのバレてるんだもーん。」


「っ!! そんな事があのお方に知れでもしたら……」


「そ、だから仕方ないのよ。 渦の上の子、後は今後そこに足を踏み入れるそら達に託すしか無いわけ。 下手したらあの世界ごと持ってかれる事態だし、それしかないのよ。」


「……私が降ります。」


「へ?」


「だから私が降りるって言ってるんです!!」


「ち、ちょっと待ってよプティ!」


「待ちません!! もう決めました!!」


「決めましたじゃなくて、そんな事したら貴女の神格が……」


「そんな事は分かってます!! でも…… お姉さまの大切な世界が他の誰かに好きにされるのは到底受け入れられる物ではありませんっ!! うぅ……」


「ち、ちょっとプティ、なにも泣くこと無いじゃない…… 言ってしまえばこれは私の自業自得よ…… 降りるなら私が……」


「いけませんっ!! だって…… 既にお姉さまは一度降りているじゃないですかっ!! 二度目は存在があちらへ固定されてしまいます…… そうなったらもう…… 神界へは戻ってこれ無いじゃないですかっ!!」


 確かにそうなるわ…… でも……


「プティ…… 私、決めたわ。 私が降りてそら達と一緒に渦の頂点を目指す事にするわ!」


「でもっ!!」


「待って! プティ…… 大丈夫…… そらが頂点に立てばいいの! だってそらの二個目の願いは……」


 ……………

 ………

 …


「分かりました…… でもそんな事可能なんですか?」


「出来るわ! アスティに持たせたその権限は私ですら覆せない拘束力があるのだもの!」


 例え他の最上位神、いいえ、あの方がなんと言おうとこれは覆せない!


「信じますよ?」


「ええ、私がこういう時嘘をつかないのは知っているでしょ?」


「はい……」


 そう…… 可能性はゼロじゃない……。

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