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高速移動と大好物

 

 競争がてら移動しつつ更に目についた魔物を討伐し経験値を稼ぎながら俺達は超高速でカディフラティへ向かっていた、もちろん休憩や食事等をしっかりと取りながらとなるのでペース的にミュスカ達を少し待たせてしまう事になりそうだ。


 ユメを通してユリと連絡を取った所、既にカディフラティへ到着し下見を兼ねて地龍のダンジョンの三十階層まで攻略済みとの事で後一週間ほど待たせてしまうと伝えた所だ。


「ユメ、ユリにさミュスカと一緒にアースポエティカ王に挨拶でもしてみたらって伝えてくれる? ユメの姉って言えば歓迎してくれると思うし、なによりあそこには()がいるからね」


「わかったー! 美味しいもんね♪」


 そう、あの超絶旨いメシを作ってくれる帽子がながーい彼がいるのだ! せめてもう少し時間に余裕が有れば美味しそうな食材を狩っていくのにっ!!


 ………あっ、もしかしたら時間に余裕、出来るかも?

 やってみよう。


「二人とも、そろそろまた移動を開始しようか!」


「はーい♪」

「競争なのじゃっ!!」


「いや、ちょっと試したい事が有るから二人ともこっちへ来て! ユメはこっち、ルケはこっちだ!」


「何をするのかの?」


「出来るか分からないんだけど…… ユメ、俺の左前足握って、ルケは反対を…… そう。」


【飛空】とレベル上げを兼ねた【減重力】を発動して宙に浮いている俺の両の手を二人がそっと握る。


「妾…… 今手を繋いでおるのじゃ…… うれしい……」


「手を離さないでね」


「はーい♪」

「はい! 妾は絶対に離さぬのじゃ!!」


 ルケは気合い入ってるな…… さてと、魔力を多めにつぎ込んで…… 行くぞ…… 【瞬身】!!


 ぐにゃりと視界が捻れ、瞬きの間に目の前の光景は変わっていた。


 …………出来た!!


 大体二キロってところか…… これ以上魔力をつぎ込んでも恐らくこれが限界だろう、なんとなく感覚的にそんな気がする。


「すごーい!! これなら直ぐつくね♪」

「魔力の消耗は大丈夫かの?」


「進化してから魔力の回復が段違いだしある程度使っても直ぐに回復するよ」


「これで食材も調達出来るしおねーちゃんとミュスカとトカイ達ともすぐに会えるね♪」


「そうだね!! ユメは美味しそうなやつがいたら教えて! 俺は暫く全力で【瞬身】を連発するから!」


「はーい! まかせてー♪」


「妾はこの手を握るのが仕事じゃ!!」


「オッケー、じゃっ!! 行くよっ!!」


【瞬身】!【瞬身】!【瞬身】!【瞬身】!【瞬身】!!


 ****************************


【瞬身】を約一時間連発した結果なんと千八百キロもの距離を移動するに至った。

 MPが半分を切った所で一度休憩を取り、その間にユメには周りの探索、つまり食材探しをお願いしている。


「大分距離を稼いだね。」


「この調子なら今日中に着くのじゃ! いや、でもこの幸せな時間が終わってしまうのはちと名残惜しいのぉ……」


「そんなに【瞬身】が気に入ったならたまにこれで移動しようか。」


「ちと違うが魅力的な提案なのじゃ!」


「んおっ! マスター!! いたいた!!」


 ついにユメのお眼鏡にかなう食材が見つかったのか!!


「どんなのが見つかったのじゃ?」


「えっとねーでっかい丸いやつだよー!!」


 うん! わかんない。


 まぁ、行けば分かるさ。


「んじゃそこまでナビよろしく! 飛んで行こう!」


「はーい♪」


「…………。」


「ん? ルケどうしたの?」


「いや、幸せは長く続かないものじゃなと思っただけなのじゃ……」


 うん! わかんない。


「取り敢えず行こっか?」


「……!! 主よ!! 疲れておろ? 妾が運ぶのじゃ!!」


 んー、そこまでじゃないけどどうにも運びたそうだしお願いした方がいいかな。


「なら、お願いするよ。」


「うむっ!! お願いされるのじゃっ!!」


【付与術神】で【飛空】をユメとルケに付与して俺はルケの腕の中に収まる。


 以外と心地いいなこれ。


「じゃあれっつごー♪」


「ユメ! ゆっくりでよいからの!! 景色でも眺めながら行くのじゃ!!」


「んー? ほーい!!」


 ……………

 ………

 …


 空の旅は特に問題など起こらず非常に穏やかな雰囲気の中に終わった。

 いや、強いて言うならルケに謝られたくらいだろうか。

 それは進化前には脚に装着していたルケ専用のクロウが進化後失くなってしまっていたことに対する謝罪だった。

 ルケに落ち度は無いし気にする事はない、それに新しく薙刀を大事そうに持ち歩いているところを見てむしろ嬉しいくらいであるし似合っている。


 そう伝えたところなにやらモジモジしながら“妾、嬉しい“と喜んでいたので問題はないだろう。


「見えたよー!!」


 眼下には優大な森林が広がりユメの目線を追ってもそれらしい物は見えない。


「ユメ、どの辺?」


「あそこー! 地面の下に潜ってるー!!」


 そりゃ見えないわ。


「了解、降りて平気かな?」


「もう終わりかの……」


 ルケはよっぽど空の旅が気に入ったみたいだな。


「んとねー、地面の下から攻撃してくると思うよ! おもしろいね♪」


「そっか、なら皆に【自動回避】を付与しとくね!」


「そんなに強くないから平気だと思うよ!」


 んー、ユメがそう言うならいっか。


「オッケー、じゃあそのまま食材狩りと行こうか!」


「ほーい♪」

「とっとと取ってまた移動するのじゃ!!」


 ユメと俺を抱き抱えたルケが森の中に降り立つ。


 地に足がついた瞬間に森がざわめき至る所で小動物や鳥達が逃げて行くのを耳で感じる。


 更に心なしか地面が揺れているようにも感じた。


「くるよー!!」


 ユメの合図と共に足元から木々を避けるように複数の太くて真っ黒い刺のようなものが飛び出し俺達を刺し貫かんと隆起する。


 だがそれはユメとルケを貫く事はなく、ユメは刺の一本をいつの間にかホルダーから取り出した双銃のデュアルブレードで細切れにし、ルケは両の足で刺の先をがっちりと挟み貫かれるのを阻止した。

 俺はというと、直前でルケの腕の中から飛び出し、丁度いい機会だと初めて【幻化】を使い体を非実体化してその隙に安全圏まで移動した。


 その刺の長さは木々の高さを軽々と超え、それだけで二十メートルは有りそうだ。


 黒光りする巨大な刺を複数持つ生き物……


「雲丹だっ!!」


 それも推定全長六十メートル以上の巨大な雲丹……。


「ユメ…… よくやったっ!! 俺の大好物のひとつだよこいつは!! よし!! 生け捕りにしてカディフラティまで持ってくよ!!」


「うんっ♪」


「妾も手伝おう!」


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